JICAが支援した国家灌漑マスタープランにおいて、タンザニアには約210万haの高い灌漑開発ポテンシャル地域があるとされているものの、2009年では約33万haの灌漑開発に留まっているのが現状です。国家開発戦略であるMKUKUTAIIにおいても農業セクターの取り組みの中で灌漑開発が最優先事項と位置づけられているものの、必要な資金の不足、灌漑技術者の低い技術レベルと人員の不足等が灌漑開発を進める上での問題となっています。
タンザニアでは、小規模灌漑事業(500ha以下)は、県ごとに策定される「県農業開発計画(DADP)」に沿って実施されます。JICAは国家灌漑マスタープランの策定支援とともに、県レベルでの灌漑事業の実施に必要なガイドライン(案)を策定しました。その後、2007年2月から2010年1月まで技術協力プロジェクトを実施し、パイロット地域を対象とした活動を通じて、県の農業担当官が案件形成から施工監理、施設維持管理まで一連の灌漑事業を適切に運営・管理するための手法を示した「DADP包括的灌漑事業ガイドライン」を整備しました。本技術協力プロジェクトでは、このガイドラインを全国に普及し、県レベルで灌漑事業がガイドラインに沿って着実に実施できるように、関係者の能力強化を目指しています。
具体的には、研修やデモサイトにおける実践活動を通じて、農業食料安全保障協同組合省の地方出先機関である全国7ヶ所のゾーン灌漑技術サービスユニット(ZonalIrrigation Technical Service Unit:ZITSU)の県への技術支援体制の強化を図るとともに、小規模灌漑事業を実施する県レベルの灌漑技術者の案件形成、施工監理、灌漑組合の運営や施設維持管理にかかる能力向上を図るための支援を行っています。