【ボランティア通信】今に繋がる私の隊員活動-任地の伝統・自然の豊かさに魅了されて

2022年12月9日

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奥井 鮎沙
任期:2017年10月~2020年2月
職種:コミュニティ開発
配属先:イリンガ県庁イフンダ郡事務所
任地:イリンガ州イリンガ県イフンダ郡
出身:静岡県

旅の始まり

私はビジネスで海外出張に頻繁にいくエンジニアの父の影響を受け、大学卒業後は海外と関わりのある地元の自動車関連会社に勤めました。入社4年後には新規海外ビジネスの英文契約や新規海外拠点設立の業務を担当させて貰えるようになりました。その頃の私は、人生は短いので早く仕事で海外駐在の経験を積みたい、挑戦しもっと自分の可能性を広げたいと思っておりました。

入社9年目にJICA海外協力隊の存在を知り、この選択肢なら海外に住みながらこれまでの社会経験を活かしつつ成長できると考えました。初めは、海外で経験を積んだ後に復社したいと思い、OBや上司の協力を得て会社に現職参加制度を取り入れてもらう働きかけをしました。トップにまで話はいきましたが、残念ながらそれはかなわず、愛着のある会社を退社してJICA海外協力隊に参加しました。タンザニアでの経験は、想像以上にしっくりきまして、私の「人生の背骨」を見つける旅が始まりました。

活動と思い出

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任地のイフンダ

標高約1700mに位置する私の任地は、乾季の朝方の気温は約10度で、ヒヤッとする空気がとても気持ち良い場所です。湧水があり川が流れ、夜空はミルキーウェイと星が一面に広がります。

郡事務所配属の私は、村の人々が故郷に誇りや愛着を持ち当事者意識を持つことが住み良い村に発展させる力になると考え、活動を通じ彼らの自信と誇りにつながるような成功体験のお手伝いがしたいと考えました。

まずは任地を歩き回り、畑仕事や子供の体重測定を一緒に行い、時にはスワヒリ語の手作り紙芝居・桃太郎で子供と触れ合う等、「私」に慣れて貰う努力をしました。現状把握のため村人にアンケート調査等を行った結果、「農家の収入向上」と「食卓を豊かにする」を2本柱に複数の活動をすることにしました。

1)農家の収入向上の活動一例

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任地の伝統工芸を使った「手作りバスケットの製作・販売」の活動は、材料探しから色・製法含め、商品開発の試行錯誤を繰り返し最終的には都会のお店で販売して貰えるようになりました。私の帰国後も製作者のお婆ちゃん達自身で商品の輸送もできたとの報告を受け、大変嬉しく思いました。さらに、商品開発の過程で知り合った皮職人が、一緒に作った商品をベースに子供達に作り方教室を始めました。この横にも広がった活動に喜びを感じたのを今でも覚えています。

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任地の女性たちが製作した製品(1)

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任地の女性たちが製作した製品(2)

2)食卓を豊かにする活動一例

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ケーキに使った木の実を眺める近所の子どもたち。虫が入っていないか確認中。

任地には美味しい木の実等があるのに、人々にあまり食されておりませんでした。「自生植物の調査・普及」活動は、現地の素晴らしい資源に気づいて欲しく、外国人の私が紹介することで注目して貰えるのではないかと考え始めました。牛飼いの友人や子供達に食用の木の実を教えてもらい採集、標本を作り、タンザニア人の植物博士に同定して貰い、教えてもらった学名を元に書物やネットで情報収集をしました。調査した植物は80本程度です。その後、調べた植物で村人と一緒にケーキ等を作り、新しい食べ方を紹介しました。特に木の実のケーキはおいしかったようで、噂は勝手に広まり、伝えていない人からも味見したいと言われました。

現在に繋がるタンザニアでの出会い

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仲良しのご近所さん。今回の出張時も自生植物の調査に協力してくれました。

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2022年に任地を再訪問した際に動画を上映

海外協力隊の活動中、仕事でタンザニアを訪れる多くの日本人の方々にもお会いし影響を受けました。例えば、困難があっても諦めずに現地でビジネスを行う経営者、出張ベースで自生植物調査を行なう大学教授等との出会いは印象深いです。現在私はJICAで契約関連業務を担当していますが、契約相手はタンザニアで出会ったような熱い志を持った人々であることを忘れずに取り組んでいます。また本業とは別に、自生食用植物の調査で知り合った大学教授とのご縁から、研究協力者としてタンザニアでの研究に参加しています。

私はこのため今年タンザニアの任地を2年ぶりに訪問しました。現地の人々はみんな、私のことを覚えておりスムーズに協力を得ることができました。まだまだ時間は掛かりますが、この調査結果を任地の人々にフィードバックし、役に立てることができればと思います。

また、現地で紙芝居が喜ばれたことをヒントに、現在私はスワヒリ語の手作り絵本の読み聞かせ動画を作成、YouTubeにて発信しています。隊員活動が終わっても現地の方々の為に個人的にも活動を行いたいという思いを胸に、これからもタンザニアの人々と日々積極的に関わり合いを持ち続けたいと思っています。