開発効果を高めるパートナーシップ

大学・研究機関との連携

共に「知」を創造し、未来のリーダーをつくる

開発効果を高めるパートナーシップ

大学・研究機関との連携

共に「知」を創造し、
未来のリーダーをつくる

世界が複合的な危機に直面するなか、開発途上国の課題解決やSDGsの達成に向け、高度な知見を幅広く有する大学・研究機関との連携は不可欠です。JICAは国際協力に関する調査研究や開発途上国における技術協力プロジェクトへの大学・研究機関の参画、また、開発途上国からの留学生受入といったさまざまなアプローチにより連携を強化しています。

JICA開発大学院連携(JICA-DSP)

近代化の経験と開発協力の教訓を提供

JICA開発大学院連携では、日本で学び、帰国した「JICA留学生」※が、当該国の開発課題の解決に当たるとともに知日派・親日派のトップリーダーとして活躍し、日本と開発途上国の友好関係が中長期的に維持・強化されることを目的として事業を展開しています。2022年度末時点で、日本の修士・博士課程で学ぶJICA留学生は世界106カ国から2,000名を超えています。

「JICA開発大学院連携プログラム」では、JICA留学生に、欧米とは異なる日本の近代化の経験と、戦後の開発協力の実施国としての知見の両面を学ぶ機会を提供しています。すべてのJICA留学生が参加可能な「日本理解・地域理解プログラム」と、受入大学が日本の開発経験などを授業科目として提供する「各大学におけるプログラム」があります。JICA留学生は、これらを通して、日本の知見・経験を学び、帰国後、自国の発展に生かしています。

2022年度は、日本理解プログラムと地域理解プログラムを積極的に提供し、それぞれ242名、504名の留学生が参加しました。

JICA日本研究講座設立支援事業(JICAチェア)

JICA開発大学院連携の海外展開

日本の開発経験を学ぶJICA開発大学院連携を国外にも広げるため、「JICA日本研究講座設立支援事業(JICAチェア)」を実施しています。これは、開発途上国各国のトップクラスの大学などを対象に、日本の開発経験をその背景にある歴史や文化も踏まえて学ぶ「日本研究」の講座設立を支援するものです。

JICAチェアでは、①日本からの講師の短期派遣、関連のビデオ教材の提供などを行う「短期集中講義」と、②長期連続講座の設置、共同研究、研究者・教育者の日本への受入れなども実施する「日本研究講座設置」を展開しています。2022年度のJICAチェア実施国は、前年度までの累計46カ国から71カ国へと拡大しました。

2022年度は、日本の大学などから開発途上国への講師派遣による対面でのJICAチェア開催が大幅に増加したことにより、より円滑で、双方向の活発なディスカッションが実現しました。各国でのJICAチェアを促進するための重要なツールとなっているのが、2019年度に放送大学と共同制作した「日本の近代化を知る7章」、2021年度制作の続編「続・日本の近代化を知る」とJICAが掲げる「JICAグローバル・アジェンダ(課題別事業戦略)」に沿った日本の開発経験に関するビデオ教材です。

JICA開発大学院連携では、開発途上国の課題解決に向けてJICA留学生に期待される役割について考えること、そして JICA 留学生間および留学生と JICA 関係者とのネットワーク構築を横断的に行うことを目的としてネットワーキングイベントを実施し、知日派・親日派リーダーとのつながりを強化している

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

大学・研究機関の研究力を生かす

地球規模での環境・エネルギー問題、食料危機、感染症の流行など深刻化する課題について、最新の科学技術によって解決を図る事業がSATREPSです。科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)と共同で実施するこの事業では、日本と開発途上国の大学・研究機関が国際共同研究とともに研究成果の社会実装に向けた取り組みを行い、開発途上国の人々が直面する開発課題の解決に貢献することを目指します。

環境汚染や気候変動、カーボンニュートラル、自然災害、感染症など、SATREPSが対象とする研究課題は多岐にわたり、幅広い分野で日本の研究力が発揮されています。実施中の案件には、海洋温度差を利用した低炭素社会を実現する研究(「マレーシアにおける革新的な海洋温度差発電(OTEC)の開発による低炭素社会のための持続可能なエネルギーシステムの構築」)、豪雨などによる被害の軽減を企図した観測システムに関する研究(「フィリピンにおける極端気象の監視・情報提供システムの開発」、薬剤耐性真菌の実態を明らかにし、治療戦略を構築する研究(「ブラジルと日本の薬剤耐性を含む真菌感染症診断に関する研究とリファレンス協力体制強化」)などがあります(2022年度末現在)。

2022年度は、9カ国12案件を新規に採択し、相手国の大学・研究機関と実施に向けた協議を進めました。

フィリピン:「フィリピンにおける極端気象の監視・情報提供システムの開発」プロジェクトで供与された、衛星データ地上受信局のアンテナ。プロジェクトでは受信される衛星データを活用し、極端気象を予測するシステムの開発を行った