開発効果を高めるパートナーシップ

民間企業との連携

民間ビジネスを通じた経済社会開発と企業の海外展開支援

開発効果を高めるパートナーシップ

民間企業との連携

民間ビジネスを通じた経済社会開発と
企業の海外展開支援

JICAは、長年のODAの実施で得た開発途上国政府とのネットワークや信頼関係、開発途上国における事業のノウハウを最大限に生かしつつ、民間企業と積極的に連携し、開発効果の効率的かつ効果的な発現を推進するため、さまざまな支援メニューを提供しています。

海外投融資

民間企業による途上国の経済社会開発を支援

JICAの有償資金協力のうち、海外投融資はインフラ整備、貧困削減、気候変動対策などの分野で開発効果の高い事業を行う日本企業を含む全世界の民間企業などに対して、「融資」や「出資」の形態で支援を行うスキームです。

民間金融機関や国際金融機関などとの連携や、JICAの他の事業やスキームとの一体的な実施により、開発効果の一層の発現や事業リスクの軽減などを目指しています。特に、他国の開発金融機関や国際機関との連携については、米国国際開発金融公社、フランス開発庁、国際金融公社、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行、欧州復興開発銀行、欧州投資銀行と業務協力覚書を締結するなど、協調融資の促進に向けた連携を進めています。

2022年度は、ベトナム「ニントゥアン省陸上風力発電事業」やウズベキスタン「ザラフシャン風力発電事業」をはじめとする再生可能エネルギー事業や、パレスチナ「中小零細事業者支援事業」、エクアドル「環境配慮型産業支援事業」などの女性が経営する中小零細企業などを支援する金融包摂事業を含め、計21案件を承諾。脱炭素や金融アクセス改善といった重要なアジェンダへの対応を進めました。さらにバングラデシュ「経済特区開発事業」では、円借款と技術協力との連携を通じ、バングラデシュの産業の多角化に向けて包括的な協力を展開しています。

2022年度はウズベキスタン、パレスチナ、ラオス、コスタリカ、モルディブなど、多くの国・地域で初めての海外投融資案件を実現しており、引き続き海外投融資を通じた支援を推進していきます。

エクアドル:国際金融公社(IFC)と協調して、海外投融資により資金協力を行っている「環境配慮型産業支援事業」。写真は、本事業の借入人であるBanco de la Producción S.A. Produbanco(エクアドル大手商業銀行)の融資先である女性が経営する牧場。牛糞から無農薬肥料を製造しており、製造過程で生じるバイオガスで牧場の電力を補う持続可能な経営モデルの確立を目指している

協力準備調査(海外投融資)

海外投融資候補案件の形成を支援

本制度は、日本の民間活力を活用した開発途上国での事業の発掘・形成のためのスキームです。民間企業からの提案に基づき調査を委託することで、海外投融資の活用を前提とした事業計画の策定を支援します。2022年度は5件の提案を採択しました。

開発途上国での事業では、ソフト・ハード両面での投資環境の不備、採算性確保の難しさ、適切な官民の役割・リスク分担の認識不足(開発途上国政府の支援不足)など、多くの課題があります。JICAは民間企業の個別事業を支援するだけでなく、開発途上国で政策・制度の構築や実施能力の強化に協力するなど、事業化に向けた包括的な取り組みをさらに推進していきます。

中小企業・SDGsビジネス支援事業

途上国のSDGs達成に貢献するビジネスの
形成・展開の検討を支援

日本が持つ技術・製品・ノウハウなどを自国の課題解決に活用したい開発途上国と、開発途上国市場への進出を望む日本の民間企業の双方がWin-Winの関係となることを目指す「中小企業・SDGsビジネス支援事業」は、民間企業による提案型事業です。

近年、開発途上国の開発における民間資金の流入は加速化しており、ビジネスの強みを生かした課題解決への期待はさらに大きくなっています。SDGsを積極的に経営に取り込む企業や、ESG投資・インパクト投資を重視する金融機関は増加傾向にあり、ビジネスと開発途上国の課題解決に向けた取り組みの親和性はますます高まっています。

本事業では、ビジネスの段階に応じて、目的別に3つの支援メニュー(ニーズ確認調査、ビジネス化実証事業、普及・実証・ビジネス化事業)を提供しています。

開発ニーズに革新的なサービスで応える

JICAは、民間連携事業を開始した2010年度から2022年度公示分まで、延べ1,448件の提案を採択し、支援を行ってきました。近年は、高い技術や革新的なビジネスアイデアで、複雑化する開発途上国の課題解決への貢献が期待されているスタートアップ企業からの提案も採択されています。

例えば、ワンダーファイ株式会社(東京都)は、 世界中の子どもから「知的なわくわく」を引き出すための教材やコンテンツを開発・運営するスタートアップ企業で、JICA事業を通じて、カンボジアで思考力教育アプリ教材 「Think!Think! (シンクシンク)」を導入し、初等教育における学力の向上や卒業率の向上に貢献しています。

カンボジア:ワンダーファイ株式会社はJICAの支援メニューを活用し、提案製品の認知度と初等教育の水準の向上を目指している。写真は子どもたちがアプリ教材で学習している様子

新たな枠組みで59件を採択

本事業は2022年度より、「利便性の向上」「ビジネス化の一層の促進」「開発インパクトへのさらなる貢献」を目的に試行的な制度改編を行い、開発途上国の課題解決への意思を持つ企業から提案を広く募集し、59件を採択しました。

内訳として、制度改編前から継続している「普及・実証・ビジネス化実証事業」12件に加えて、基礎情報を収集し、開発途上国のニーズと製品・サービスとの適合性を検証し、初期的な事業計画の策定を支援する「ニーズ確認調査」で23件を採択。また、適合性を検証済みのサービス・製品を対象とし、収益性の検証、提供体制や運営方法の確立を通じて、事業計画の精度向上を支援する「ビジネス化実証事業」で24件を採択しています。