金融という軸を持ちながら、
幅広く社会課題の解決を担える
人材を目指して
JICAの社会人採用募集告知を目にして先ず考えたことも、やはり「ここであれば、“社会的意義のある金融”に取り組むことができるのではないか」ということでした。当時、円借款や海外投融資に関して十分な知識を持っていたわけではありませんが、開発途上国における課題解決を自明のミッションとしているJICAが有する金融機能とは即ち、“社会的意義のある金融”に他ならないのではないかと考えたのです。そしてそれは、間違ってはいませんでした。
先にも触れた通り、JICA入構以降は先ず、インドネシア、マレーシアにおける交通・港湾インフラ開発等に関する円借款事業に携わりましたが、そのスケール、社会的インパクトの大きさには、少なからずカルチャーショックを覚えたというのが正直なところです。前職で担当した融資案件は1件当たり数千万〜最大1億円規模でしたが、いきなり100億、1000億といった金額を扱うようになり、しかも、日経新聞等に採りあげられるような国家的なプロジェクトも多い。また、国家政策の上流部分を踏まえたパッケージ型の事業展開によって都市インフラ開発を実現できるため、目に見える形で、途上国経済に開発効果をもたらすことができる。まさに、“社会的意義のある金融”の一つの形がここにあることを実感できるものだったと言えます。
現在はベトナム、ハノイに駐在し、経済政策、海外投融資の分野総括としてさまざまな事業を推進しています。ベトナムは共産主義体制の国ではありますが、1986年にドイモイ(刷新)政策を表明して以降、大胆に市場経済を導入する路線に舵を切り、今や世界中から有力企業の投資が集まるアジア有数の新興市場となっています。そして、今、私が担当している技術協力事業は、経済・金融分野においてさらなるグローバルスタンダードな環境を整えていくためのガバナンス構築がテーマ。株式市場の公平性・透明性の向上、国際財務報告基準(IFRS)に準拠した会計制度の導入、中央銀行の能力強化といったテーマについて、日本の知見・経験に基づいたさまざまな協力を行っていますが、これらはまさに、ベトナムの“国創り”の根幹に関わる長期的な視点を持った事業であると言えます。こうした、途上国の未来に貢献する本当に意義深い仕事に携わることができる喜びを、日々感じながら仕事に取り組んでいます。
金融機関の出身ということもあり、JICAにおけるこれからの自分のキャリアとしてもやはり、“金融”という軸を一つ持っていたいということは考えています。金融×都市開発、金融×運輸交通といった形で、ファイナンスという軸を根幹に持ちながら、幅広く社会課題の解決にアプローチしていける人材を目指していきたい。そしてそれが、JICAが手掛ける“社会的意義のある金融”の進化・発展に貢献できるのであれば、こんなに嬉しいことはありません。