専門嘱託・国内拠点

日本と世界をつなぐ、現場感のある仕事に就きたい…… その思いを具現化してくれた、JICA東京での仕事。

森田 麻衣子MORITA Maiko

JICA東京 人間開発・計画調整課
2010年 米国大学言語学科卒/2024年 有期雇用(専門嘱託)としてJICA入構

試行錯誤の末に出会った、
JICA東京という“現場”

高校〜大学をアメリカで過ごしましたが、特に高校時代は、言葉や文化の違いに戸惑い、また、日本について聞かれてもうまく答えることができず、海外に来て初めて自身のアイデンティティについて考えるようになりました。そこからですね、日本文化について深く学びたいと考えるようになったのは。大学では茶道部に所属して部長を務め、裏千家から派遣されていた茶道講師による実技授業のティーチング・アシスタントをさせていただきましたが、以来、茶道は日本人としてのアイデンティティを感じることのできる私の心の拠り所となっていきました。またその頃から、日本と海外をつなぐ役割を担いたい、茶道でそれができるのではないかと考えるようになったのです。大学卒業後は、講師の薦めもあって京都にある家元直属の裏千家の専門学校に進み、3年間、まさに“お茶漬け”の日々を過ごし、教授者資格の“茶名/宗衣”もいただくことができました。

専門学校を出てからは、茶道をツールとして日本と世界をつなぐ、国際文化交流に関わる仕事がしたいと模索しながら、ホテルの茶室管理を兼ねるレストランサービス部門等、いくつかの仕事を経験しましたが、なかなか“国際的”な仕事にはつながっていかない……。そうしたジレンマを抱えながらしばらく悩んでいたのですが、選択肢の一つとして登録していた人材派遣会社の求人募集でJICA東京を見つけ、海外の方々を受け入れている場所で自分のこれまでの経験を生かすことができるのではと思い、応募を決めました。ですから私の場合、派遣スタッフとして働くことになったのが国際協力に関わるきっかけだったのです。現在私は、人間開発・計画調整課で、研修員受入事業の運営に携わっていますが、2015年に派遣スタッフとしてお世話になったのも、今と同じ人間開発・計画調整課。当時担当していたのは、研修運営担当者の事務サポートで、それ以外にも、来日中の研修員に茶道を通じた国際交流イベントを担当させていただいたこともありました。JICA東京で働く皆さんは、国際経験豊富で多様なバックグラウンド、専門性を持った方ばかりでお話しするたびに刺激を受け、働いているうちに、次第に国際文化交流だけでなく国際協力への関心が高まり、自分も途上国の現場に行ってみたいという思いが募っていったのです。長期休暇を利用して、モンゴル、ベトナム、カンボジアでの短期ボランティアプログラムにも参加しましたが、そうした体験を経ることで、途上国への思いはますます強まっていったように思います。

JICA東京での任期終了後は、外務省国際協力局内の日本の国際協力NGOへの資金協力部署で、期間業務職員として現地での事業終了後の審査や精算業務に携わりました。その後JICA海外協力隊にコミュニティ開発隊員として参加し、ウガンダでの農業支援活動(稲作技術向上)に従事しましたが、私が活動で注力したのは、カウンターパートである農業普及員(現地農協所属の農家への技術指導者)のキャパシティビルディングで、農家の手本となる手法や技術を用いた大規模なテスト圃場の運営や、JICA技術協力プロジェクトにおいて実施される稲作研修への参加、農家へ向けた技術研修の企画・実施等、カウンターパートと共に走り回りました。元々彼は、精米機のオペレーターだったのですが、この2年間で着実に農業普及員として農家に頼られる存在になっていきました。小規模な草の根レベルの活動ではありますが、人づくりに直接携わり、そのやりがい、楽しさを肌で感じる、私にとってはとても大きな経験だったと思います。

途上国の人づくりに
貢献するという、
日本と世界をつなぐ
やりがいに満ちた仕事

帰任後は継続して国際協力の仕事につきたいと考えていたところ、JICA採用ホームページにJICA東京の求人が掲載されているのを見つけ、迷わず応募しました。今回は専門嘱託での採用ですから任される仕事や責任も大きくなります。しかし、JICA東京人間開発・計画調整課は私にとって国際協力との関わりの“はじまりの場所”であり、人生の転換点となった職場ですから、思いはとても強いものがありました。

現在の担当業務は、研修員受入事業の案件監理です。研修員受入事業は、開発途上国の行政官や組織のリーダー職人材を日本に招き、日本の技術や知識を学んでいただいて、自国の課題解決に役立てていただくというものですが、人間開発・計画調整課はJICA東京に3課ある研修課の中で、保健医療、社会保障、教育等の分野に関する研修を運営しています。各研修の担当者は、調達や予算管理、研修委託先やJICA課題部との研修づくりのための協議、在外事務所との連絡調整、選考や受入のための各種手配、終了後の報告、精算等、担当する研修コースの運営業務を全て一貫して行います。

例えば先日担当した「UHC(※注)達成に向けた看護管理能力向上研修」は、途上国において看護政策に関わる行政官や中核病院の看護管理者を対象にしたプログラムで、看護サービスの質の向上のため包括的な看護管理能力の向上を目指す研修です。研修委託先である都内の国立病院の担当者と何ヶ月もかけて協議・事前準備を行い、講義、省庁・病院・地域保健センターへの視察、災害看護を学ぶための神戸への研修旅行といった構成で15日間ほどの日程で実施しました。準備や調整等には時間も労力も必要となりますが、研修中日々の学びや意見交換を通じて研修員のモチベーションが日に日に高まっていく姿を目のあたりにすると、ああ、やって良かったと、本当に報われた思いになりました。来年度も同じ研修を担当しますが、今年度の反省点も反映させつつ、より質の高い研修となるよう研修委託先の方々と協働しながら取り組んでいきたいと思っています。JICAではよく“国づくりは人づくり”と言いますが、研修の仕事は途上国の人づくりを直接的に支援するという、日本にいながらとても現場感を持った、やりがいのある仕事であると私は思います。保健医療や社会保障、教育分野の知識はまだまだ足りない部分が多いですが、日々学びながら、人間開発・計画調整課の確かな戦力として貢献できるよう努力していきたいと思っています。

JICAで働いてみて感じるのは、本当に多様な人材がそろったサラダボウルのような組織だなということ。皆さんバックグラウンドも専門性も職制も本当にさまざまで、お話を聞くとどなたからも、面白いエピソードが飛び出してくる。多様性を受け入れ、個々の能力を発揮しやすい土壌があることも、JICAの大きな魅力ではないでしょうか。私自身の今後については、JICAの有期雇用職制の異なるポジションにチャレンジすることも選択肢として考えられると思いますし、さらに興味関心がある分野にチャレンジできる可能性も広がっていると感じています。やはり、常に“現場感”のある場所で働いていたいという思いは強いですし、学生の頃からのテーマである“日本と世界をつなぐ”ことに、国際協力を通じてこれからもトライし続けていきたいですね。

※注……UHC(=Universal Health Coverage/ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)とは、「全ての人が、支払い可能な経済的負担によって、質の伴った適切な医療サービスを享受できる状態」を意味する用語・概念。JICAにおける保健医療分野の協力において、最も重視されているテーマの一つである。

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