森 麻里子(もり まりこ)さん 青年海外協力隊

スリランカの小さな村での出会いが
パティシエとしての私を成長させてくれました。

2015.07

パティシエとしてのキャリアを積む上で
自分にしかできないことをやりたかった。

青年海外協力隊への参加を決めたのは、パティシエとして働き5年が経った頃。海外で勉強をし直し、自分のお店を持ちたいと、漠然と未来を思い描いていました。また、海外で修行するなら、なかなか行く機会のない場所で、自分にしかできないキャリアの積み方をしたいと思っていました。
 協力隊に参加する2年間は、パティシエの世界では「ブランク」と捉えられる恐れもありましたが、いずれお店を出すなら周りとは違った経験を持っていた方がいいと、将来を見据えた上での決断でした。まだ見たことのない食材、まだ体験したことのない味に出会えるかもしれないという期待の方が、キャリアを中断する不安よりも大きかったです。言語や文化を越えて、私が作ったお菓子で喜びが現地の人の間に広がっていったらすてきだなという思いもありました。

あるもので良いものを作ろうという提案。
停電や断水にも臨機応変に対応。

任地はスリランカ南部の内陸部。赴任国が決まったとき、中国茶の専門店で働いていた私は、「スリランカといえばお茶だ!これは運命かもしれない」と思いました。
 赴任先はスーパーもコンビニエンスストアもなく、軽食やお菓子を売るだけの小さな売店が点在する村です。そこの食品加工研修所で、主に村の売店の店主を対象に商品開発を行い、気に入ってもらえたら作り方を教えるという仕事でした。また、食品衛生の授業や、研修所スタッフの育成も担当しました。
 赴任先ではマンゴー、バナナ、ココナッツなどがよく採れますが、小麦粉は100%輸入で品質があまり良くありません。しかし「粉が劣化しているから作れない」ではなく、「劣化した粉でもできるおいしいものを作ろう」と発想を転換させ、スリランカの主食カレーを包んで揚げたカレーパンや、アンパンのようにバナナジャムを包んだバナナパンなどを提案しました。また、お米が採れ過ぎて余るのが悩みだと聞いて、米粉を使ったシフォンケーキやクッキーなどのレシピを開発。米を使った商品開発が研修所のウリになり、レシピはトータルで100種類近くにものぼりました。
 一方で、作業中の断水と停電にはしばしば悩まされました。パン生地を作り終えた段階で停電になると、生地の発酵がどんどん進んでしまいます。そんなときは土釜を用意し、焚き木で火を炊いてパンを焼くなど、臨機応変に対応しました。村の設備はもともと限られているので、「できない」ではなく「この中でなんとかしよう」という応用力を持って取り組むことが大切だと学びました。こうした経験から、かなりの忍耐力や発想転換力が付いたと感じています。
 また、ホームステイ先の家族もとても優しく、慣れない異国で仕事をする私を笑顔で支えてくれました。小学生と中学生の息子さんが言葉を教えてくれたり、お母さんが毎日お弁当を作ってくれたりと、温かい気遣いが本当にうれしかったです。仕事が遅くなった日、職場まで迎えに来てくれた家族と一緒に見た一面の蛍は、一生忘れられない幻想的な光景でした。

JICAボランティアで得たもの

最大の出会いだった有機セイロンシナモン。
それを使った自分のお店をついにオープン。

スリランカでの最大の出会いが、有機セイロンシナモンです。オフの日に積極的に本場の味に触れ、この味を多くの人に知ってもらいたいという気持ちが、いつかスパイス関係の仕事ができたらと思い始めるきっかけになりました。
 帰国後、外資系企業のチョコレートショップを経て自分のお店をオープンすることになったとき、やはり頭に浮かんだのは、セイロンシナモンを使ったお菓子でした。日本でももっとスリランカのスパイスが広まれば、日本への輸出も増えて現地で新しい仕事が生まれるでしょう。スリランカの人たちが自国のものの良さを知り、流通や販売に積極的になったら、生産設備も整い、雇用も増えると思うのです。私もゆくゆくはスパイスの卸売を行い、スリランカのアンテナショップとして機能させたいと思っています。
 私にとってスリランカは、「ありがとう」がいっぱいの国です。そう考えるようになったのも、スリランカの優しい人々やおおらかな環境への感謝の気持ちが大きいからです。少しでも多くの日本人にスリランカのことを知ってもらいたいという思いが、私を動かす原動力になっているのです。
 今でも年に一度スリランカの農園を訪ね、現地の人と意見を交換しながらフェアトレードで買い付けをしています。スリランカに行かなければ、今の私はなかったですね。

これからJICAボランティアを目指すみなさんへのメッセージ

サポートの充実している協力隊。
自分らしさを出せる道がきっとあるはず。

協力隊は語学をしっかり学んでから赴任でき、現地での万一のときのサポートもあり、
新しい人間関係もつくれる恵まれた環境のボランティアだと思います。
それを友達に話したところ、5人が協力隊に応募し、現地に派遣されています。
帰国して8年。派遣先では良いことも、そうでないこともありました。
でも今頭に思い浮かぶのは、笑顔でいられた時間がとても多かったこと。
やってみたいことを思う存分、全力でできる貴重な時間があなたを待っているはずです。

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青年 スタートアップキャリア # 起業 # パティシエ # 経験を生かす