百瀬 友美(ももせ ともみ)さん

百瀬 ももせ  友美ともみさん

職  種
理学療法士
派遣国
スーダン
派遣期間
2013年3月~2015年3月
  • グローバルキャリア
  • # 理学療法士 # 経験を生かす

スーダンで見つけた「私にとって理想的な、理学療法士の姿」。
患者さん一人ひとりの幸せについて、
これからも考え続けたい。

2016.06

応募のきっかけ

百瀬 友美さん

震災をきっかけに見つめ直した
「自分の役割」と「理学療法の意味」。

大学卒業後、理学療法士の国家資格を取得し、福島県の障害者施設で働いていたときに、東日本大震災と原発事故が発生しました。避難生活を強いられ、「衣食住をどうするか」の選択を繰り返すという状況下では、理学療法士の仕事が求められることはありません。この出来事がきっかけとなり、あらためて自分の役割や理学療法の意味について自分自身に問い直しました。
 東京の実家へ戻り、新たな職場で再び理学療法士として勤務しましたが、2年の契約が切れるタイミングで思い立ったのが、青年海外協力隊です。震災後、自分の仕事を見つめ直すなかで「理学療法が広まっていない国を見てみたい」という思いが膨らんできたため、良い機会だと思い応募を決めました。
 開発途上国への旅行の経験はあったものの、長期滞在は初めてです。未知の世界で活動することに漠然とした不安はありましたが、派遣前訓練などで得た情報をもとに持ち物を準備。私の決断を尊重し、心配しながらも快く送り出してくれた職場の方々や家族には感謝しています。

現地での活動

活動先にリハビリできている男の子と 義足作成前の患者さんに包帯の巻き方を指導している様子

義足の患者のリハビリや生活改善のアドバイス、
施設スタッフの技術支援も実施。

活動先は、スーダンの首都ハルツームにある「国立義肢装具支援機構」。義足や装具を必要とする患者さんたちが、街中の病院から処方箋をもらってやってくる場所です。私はそこで理学療法士として患者さんのリハビリを行いながら、同僚や学生たちへの技術支援をしていました。
 スーダンの理学療法の歴史は浅く、首都でさえ全ての病院に理学療法士が配置されていないため、リハビリテーションの考えが普及していませんでした。そこで、現場のスタッフたちにリハビリの知識を少しでも伝えたいと思い、筋肉の拘縮が起こらないポジショニングや注意事項をポスターにまとめて掲示。スーダン特有のアラビア語には苦戦しましたが、同僚にチェックしてもらいながら少しずつ実践していきました。
 また機構での活動以外に、自主的に患者さんの生活環境を調査したり、障害者の施設を回ったりもしました。患者さんの生活を見て分かったのは、スーダンの住宅は段差が多く、日本のようにバリアフリー化が進んでいないということ。足の不自由な方の多くは、家の中では車椅子を使わずに這い歩きで生活していました。そうした患者さんが少しでも生活しやすくなるよう、ベッドや椅子の配置を変えるなど、生活の質を改善するアドバイスも行いました。

帰国後のキャリア

患者一人ひとりと向き合う理学療法士を目指し、
さらに経験を積むため再び海外へ。

スーダンの理学療法の現場には、日本と異なる部分や課題がたくさんあります。それでも、義足を付け、リハビリを経て歩けるようになった患者さんから感謝の言葉をもらったときは、日本で理学療法士をしていたときと同じように、この仕事のやりがいを感じることができました。患者さんと接することには、世界中どこへ行っても同じ喜びがあるのです。
 帰国後は、医療が行き届いていない地方や僻地で、患者さん一人ひとりと向き合っていきたいと考えながら、まずは以前所属していた病院に勤務。その後、障害を持つ子どもの支援を行う愛媛のNPO「コミュニティ・ライフ」でフィリピン派遣員として採用していただき、地域に根差したリハビリを進めるプロジェクトの一員として、今年の夏からフィリピンへ行ってきます。

JICA海外協力隊で得たもの

「理学療法というものを再確認したい」「自分が何の役に立てるのか試したい」というモチベーションで参加した協力隊。その目標は大いに達成できました。さらに、今後自分がどのような理学療法士として生きていくのかというビジョンまで見つけられたことは、協力隊に参加した大きな収穫でした。
 理学療法士は、患者さんの生活をガラッと変える力を持つ仕事。痛みが取れて生活が良くなる人もいるし、ちょっとしたアドバイスで新しいアイテムを取り入れて一気に楽になる人もいます。これからも、「その人にとっての幸せってなんだろう?」と考えながら、患者さん一人ひとりに寄り添っていきたいです。

患者さんの幸せを考え、寄り添っていく。

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

スーダンでは、私がそれまで生きてきた世界では想像もできなかった出会いがありました。そのおかげで自分自身について振り返り、同時に広い視野を持つこともできたと感じています。JICA海外協力隊への参加を考えている人は、応募時にこれまでの経験をアピールし、参加したいと思った経緯や思いをしっかり伝えてください。自分ではそうでもないと思っていることでも、意外と大きな経験として評価していただけることがあります。

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