石田 裕一(いしだ ゆういち)さん

石田 いしだ  裕一ゆういちさん

現在のシゴト
ビデオグラファー
職  種
バスケットボール
派遣国
ガーナ
派遣期間
2005年11月~2007年11月
  • グローバルキャリア
  • # 経験を生かす # スポーツ # 国際機関 # UNDP

協力隊活動を通して得られた、「道を切り拓く力」。
自分の心がときめく方向に向かって、
常に新しいチャレンジをしたい。

2021.6

応募のきっかけ

石田 裕一さん

もっと深く世界を知りたい。
JICA海外協力隊はそんな思いを叶える場所。

中学・高校時代はバスケットボールに熱中し、大学に進学してからはガラッと自分の人生を変えたいと思い、海外へ一人旅に出ました。最初に訪れたカンボジアは開発途上国が抱えるさまざまな問題を凝縮したような場所。多くのストリートチルドレンを目の当たりにして強い衝撃を受けるとともに、自分と違う環境に暮らす人たちの世界をもっと深く知りたくなり、大学時代にはアジアを中心に20か国ほど旅行しました。

周りが就職活動を始める時期になっても会社員として働く自分を想像できずにいた頃、偶然電車の中でJICA海外協力隊の広告を目にしました。調べてみると、興味のあった開発途上国に2年間住んで、自分の持っている知識を生かして活動ができる。自分のやりたいことをするのに最適な道だと思い、大学卒業後、すぐに応募しました。

ただ、応募当初、気になっていたのは語学力です。学生時代はまったく英語ができず、大学生のときに受けたTOEICも満足なスコアではありませんでした。それでも派遣前訓練(※1)ではネイティブ講師のもとで毎日5時間以上、英会話と文法をみっちり勉強したおかげで、ある程度の自信を持って現地に向かうことができました。同じ訓練所で「国際機関で働くことを目指している」という同期隊員に出会ったことも、「そんな道があるのか」という衝撃と共に、英語学習の大きな刺激になりました。その後、現地でも改めて語学力の大切さを実感し、任期中も空いた時間は常に英語を勉強する日々でした。
(※1) 2021年度現在は新型コロナウイルス感染防止対策として合宿期間の短縮や一部講座の休止を予定しています。

現地での活動

現地で身につけた人との向き合い方
「夢中になれるもの」の大切さを伝えたい。

派遣先のガーナではサッカーが人気で強い一方、バスケットボールはあまり盛んではありません。そこで現地高校での技術指導の他にも審判の育成、大会の企画運営など幅広い活動を行いました。2年間の活動期間を通じて一番大切にしていたのは、ガーナの若者たちに「夢中になれるもの」を見つけてもらうこと。とくに注力したのは女子生徒の勧誘です。幼い頃から家事に時間をとられ、運動できる環境になかった彼女たちの家をまわって親を説得しました。彼女たちが楽しそうにボールに触れる姿を見たり、それを親に認められる状況になったりしたことは、自分の働きかけが社会を変えるきっかけに繋がる大切な活動なんだと強く感じました。

もちろん、トラブルや想定外の出来事は日常茶飯事。その都度、解決策を模索し、全力で乗り越えました。異文化で働くには語学力も重要ですが、非言語のコミュニケーションも大切です。例えば現地の癖のある食べ物をおいしそうにいただくことや、とびきりの笑顔で現地語のジョークをとばして相手の懐に飛び込むこと。現地の人が踊るダンスを、下手でも一緒に踊って楽しむこと。こうした人との向き合い方で心の距離が一気に縮まり、仕事もスムーズに進むようになりました。今も当時の教え子たちとは連絡を取っていて、なかにはNGOを立ち上げ、バスケットボールの大会を開催している人もいます。私の指導がきっかけになって、彼らが今「夢中になれるもの」に出会えているとしたら、それはとても嬉しいことですね。

帰国後のキャリア

異文化のなかで考え続けた自分の“存在感”。
ガーナで鍛えられた経験で国連の正職員に。

帰国後は英語力を生かしたくて、国内の外資系企業に3年間勤めました。その後、ガーナでの協力隊経験もあって、スポーツが人に与える影響について理論的に学ぶためにイギリスの大学院に留学。教育開発学の修士を取得しました。

その後JICA海外協力隊経験者限定「JOCV枠UNV制度」(※2)に応募。東ティモールの警察支援事業に配属されました。広報などを担当しましたが、JICA海外協力隊での経験から、異文化のなかで働くには自分の“存在感”を打ち出すことが重要だと感じていました。そこで、趣味として続けてきた写真や映像を使って仕事をしてみると、非常に高く評価されたのです。その後、同事務所での空席公募より採用になり、国連開発計画(UNDP)(※3)の正職員としてより幅広い経験を積むことができました。ここでの突発的な事態に対しても「怒らず、悩まず、あせらず」乗り越えられたのは、JICA海外協力隊で鍛えられた経験が自分の根底を支えているからだと確信しています。

現在は映像や写真の表現を極めたくなり、約6年間勤めたUNDP(※3)を退職。今年からフリーのビデオグラファーとして活動を始めました。まさにゼロからのスタートですが、JICA海外協力隊やUNV(※2)、UNDP(※3)での経験を生かして、将来は社会問題・国際問題に焦点を当てたドキュメンタリーを作ってみたいですね。
(※2) JOCV枠 UNV制度
青年層のJICA海外協力隊経験者を国連ボランティアとして主に国連機関に派遣する制度。
(※3) 国連開発計画(UNDP: United Nations Development Programme)
国連の開発ネットワークを先導する機関

JICA海外協力隊で得たもの

他では得られない経験やキャリア、強靭なチャレンジ精神です。任期中にはまさに想定外の出来事が起き続けます。予期せぬトラブルをどう乗り越えて、道を切り拓いていくか。常にそうしたマインドになることで、コミュニケーション力やトラブル対応力などが、徹底的に鍛えられました。これらは国際機関や異文化のなかで働くときに欠かすことのできない重要なスキルです。JICA海外協力隊での経験が、その後のキャリアを大きく広げてくれました。

道を切り拓く力

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

人生は1度きりです。少しでも気になることがあったら、直感で飛び込んでみてもいいのではないでしょうか。学生時代にはほとんど英語を話せなかった私でも、JICA海外協力隊に参加をして、イギリスの大学院で修士を取得し、国際機関の正職員として働くことができました。壁にぶつかりながら自分を見つめてスキルを高め、チャンスを掴む。そんな未来を切り拓く力が、JICA海外協力隊の経験で培われたと思います。

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