【帰国研修員からのメッセージ】エジプト 火力発電所 運営維持管理能力向上研修(2019年9月4日)

研修コース名: エジプト 火力発電所運転維持管理能力向上研修(エンジニア向け)                研修期間:2018年10月8日から11月10日まで

【画像】ミドル・デルタ発電公社 ニュータルカ発電所 ガスタービン機械エンジニア
Mr. EMARA Ahmed Elsayed Azzazi(アザージさん)

【画像】エジプト発電公社 アッパー・エジプト発電所 維持管理/機械エンジニア
Mr. FAYED Mohamed Korany(モハメッドさん)









日本の電力は、発電・送電・配電が効率よく安定的になされ、世界一停電の起こりにくい国と言えます。それは正確で高度な発電所の運転維持管理技術により実現され、日本の発電効率は世界トップレベルを誇ります。一方で途上国の発電所では機械の故障などで停電が頻繁に起き、非効率な発電が課題となっています。安定した電力の供給は、家庭や学校、病院、工場など社会や経済の発展に欠かせません。JICAは、途上国の国づくりの中核となる人材を育成する目的で、行政官や技術者などを研修員として受入れており、エジプトの発電所が抱える課題を解決すべく、発電所の運転維持管理能力向上プロジェクトを実施してきました。そして、このプロジェクトの一環として、2018年に9名の発電所エンジニアが来日し、関西電力株式会社のご協力の下、JICA関西が実施した研修で日本の技術を学びました。この度、その帰国した研修員から、現地での活動状況について報告がありました。お二人の活躍ぶりをご紹介します。

日々、日本で教わったことを広めています。

関西電力茨木研修センターにて、非破壊検査法を学ぶアザージさん。(左より2人目)

ミドル・デルタ発電公社 ニュータルカ発電所にて、部下に非破壊検査法を指導するアザージさん。
(左から1人目)

エジプトの発電所では、機械が不具合を起こしてから修理することが多いです。しかし、そのようにしていると、不具合が明らかになるまで放置しておくことになり、故障の度合いが大きくなります。また、修理のために機械を止めておく時間が長ければ、発電ができない時間も長引くことになります。一方、日本では、機械が順調に動いていても、定期的に検査を実施し、不具合が起きるのを予防しています。この方法では検査に手間がかかりますが、長期的に見れば機械を止める時間は短くて済みます。研修でアザージさん達はこの「予防的維持管理」といった考え方を学びました。機械に入った目に見えない傷やひび割れを見つける「非破壊検査法」は、機械の維持管理には欠かせない技術。アザージさんは積極的にこの技術を学び、エジプトに帰ってからは部下に、日本で自分が習った通りに、この技術を指導しているそうです。「日々の作業が忙しく、研修を実施する時間を見つけるのが大変ですが、皆がこの技術を身につける必要があるので、時間を見つけて実施しています。」とアザージさん。また、コメントには「研修で日本に行って、日本人がきちんと時間を守ることに驚きました。これは私の国ではなかなか見られないことです。今は私も日本人に倣ってエジプトにいても時間を守るように心がけています。また、日本の人々がお互いを尊重し思いやる姿がとても心に残りました。私はエジプトに帰ってから、より相手の意見を尊重するようになりました」。直接研修で学んだことだけでなく、日本の日常で感じたこともしっかり実践されているとのことでした。

研修で習った技術を使い、問題が解決しました。

関西電力茨木研修センターにて回転機械の調整方法を学ぶ研修員。

回転機械の接合部分のずれを直すためには少し複雑な計算が必要。計算と実技を終えて、講師の先生方と。後方右から二人目がモハメッドさん。関西電力茨木研修センターにて。

アッパー・エジプト発電所にて回転機械の調整を指導するモハメッドさん。
(左より一人目)

モハメッドさんが働くアッパー・エジプト発電所での作業風景。
向こうにはナイル河が見えます。

発電所にはタービンや発電機を始め、様々な回転する機械があります。2つの回転する機械をまっすぐに設置・結合することはとても重要で、これができていないと振動が起こり、振動を放置していると機械が壊れてしまうだけでなく、大きな事故にもつながります。研修員は日本で、回転機械の振動を予防するため、適切な道具を使用してまっすぐに設置する調整手順を学びました。モハメッドさんはこの技術がとても役に立っていると報告してくださいました。「私の発電所では回転機械が振動を起こしていましたが、それを直す的確な方法を誰も知らず、試行錯誤していました。今回、日本で習った通りにやってみたら、振動が治りました。本当にこの技術は役に立っています。」とモハメッドさん。今は発電所で、部下にその調整方法を指導しているそうです。また、アザージさん同様、モハメッドさんも日本人との触れ合いや日本の習慣を経験したことでご自分が変わったとのこと。「日本でお世話になった技術者の方々はとても誠実でした。私も真心を持って人や物事に向かうことを意識するようにしています。」

編集後記

エジプト発電所運営維持管理能力向上研修は2018年度で終了しましたが、この研修中に策定したアクション・プラン(研修実施計画)に基づいて、帰国した研修員は現場で部下や同僚を指導していました。少しずつですが日本で学んだ技術が浸透していることが報告から伝わってきます。アザージさんやモハメッドさん以外に研修に参加した方からも、今回の研修中に経験した日本の発電所見学や日本人技術者との協働作業などから、職場の整理整頓や仕事に丁寧に取り組む姿勢、「自ら学ぶ姿勢」を身につけ、エジプトで実践されているという報告もありました。お二人を含む9人の帰国研修員の今後の益々のご活躍を心から応援しています。
最後に、本研修の実施でお世話になった関西電力株式会社火力事業本部の皆様は、この度フォローアップのためエジプトに現地調査に行っていただき、お二人からの報告を届けてくださいました。ご協力に大変感謝致します。

(JICA関西 業務第二課 大井)