NGO活動レポート

環境教育プログラムのマネージメント取得(東南アジア、日本)

岩谷 良恵  青年海外協力隊 21年度3次隊/ボリビア多民族国/村落開発普及員

活動期間
平成26年5月22日~平成26年9月18日
活動テーマ
ボリビア多民族国の村落における貧困削減を目的とした、全面的職業教育センターの立ち上げおよび運営のための、NGOの立ち上げ・運営に関する研修
受入団体名
DIFAR (Desarrollo Integral de la Familia、「農村生活の総合的な発展」を意味する)
Q1.NGOでインターンをしようとしたきっかけは何でしたか?
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村落開発普及員として私が活動してきたことは、主にラパス県・高地の、アイマラ語を話す地域の村における問題を解決するために、村の人々から話を聞き、どのようなプロジェクトを行ったらよいか話し合い、その計画を作ることでした。中心的なテーマは、多くの村に共通しますが、過疎、収入向上、教育などでした。協力隊の2年目(2011年)から今までずっと関わってきたコルケンチャ市・ミカヤ村(ラパス市から車で約2時間)での活動では、この地域にある自然資源を使った地域活性化を目指して、上記のテーマを解決していこうとやってきました。隊員時にはやりきれなかったことがあり、また、大好きなボリビアの人々のために役に立ちたいと思い、ボランティア期間が終わって4ヵ月後、具体的な仕事は決まっていませんでしたが、単身ボリビアに戻りました。ですが、ラパス市の国立大学(マジョール・デ・サン・アンドレス大学)の主催する貧困削減プロジェクトのメンバーとして、この活動を続けることができ、2013年の2月下旬には、隊員時から準備してきたコルケンチャ市申請の私たちのプロジェクトが、日本大使館の草の根無償資金(APC)に採択され、全面的職業教育センターの建設に着手し、11月末には工事が終わる予定です。「全面的」というのは、単に職業訓練や生産を行うだけではなく、子どもの世代から、学校教育との連携で様々な活動、例えばビニール・ハウスによる有機農業、陶芸(この地域では良い粘土がでる)、編み物や織物、自然エネルギー・システムなどを学び、その過程で地域で仕事が生み出せるよう(コミュニティ・ビジネスを立ち上げていけるよう)な能力形成を行うという、教育的な目的がこめられています。

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このセンターには、一緒にプロジェクトを作ってきた村の人々や仲間の、たくさんの夢がこめられていています。人々の生きる基盤となる土地や自然環境を汚さないで自然エネルギーを使いながら運営し、人々が生まれ育った地域を離れることなく、子ども・若者から大人まで、 誇りを持って生きる上でのエンパワーメントできる場となるようにと思っています。 このセンターを住民が自主運営するためや、さまざまな技術支援を行うためには、期限のあるプロジェクトの形ではなく、もう少し長い目で見た支援が必要となり、そのためのNGO団体を立ち上げる必要があると考え、本研修制度にてインターンをさせてもらおうと思いました。

Q2.インターンとしての経験(勤務状況、大変だったこと、嬉しかったこと等)と、経験を通して学んだことは何ですか?
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私がインターンをさせてもらったDIFARのプロジェクトは、JICA中部の草の根技術協力を用いて、バジェグランデ市役所をカウンターパートとして行われています。市役所とDIFARの両方の仕事があり、勤務時間は基本的には市役所と同じでした。しかし、DIFAR自体の活動は多岐にわたり、かつ同時進行的に行っているため、勤務時間内では終わらないことが多く、現場スタッフや私は、時間外や休日も仕事をすることが多々ありました。基本的には、①毎日必ず行わなければならない活動(毎朝のゴミ回収、生ごみ回収とそれを用いた堆肥作りのための作業等)と、②ごみの分別や環境に関する啓発活動(幼稚園から大学の依頼による出前講習会、市役所及び市民団体からの依頼による講習会等の開催)、③JICA草の根技術協力によるリサイクルセンター建設に関わる活動、④日本とボリビアをつなぐ文化交流活動(私がインターンをしていた時には、初めて京都とバジェグランデの高校生を対象とした写真コンクール企画を行っておりました。通常は日本の支援者に発信するレポートの作成・ネット配信等)です。このような活動を計画的に進める上で、人員と時間が不足していたので、そのことをスタッフとずいぶん相談しあいましたが、JICA草の根技術協力や市役所予算との関係で当面は解決できず、そのことが第一に大変だったことでした。また、責任者が1ヶ月に1度、数日間だけ現場に来られる状況だったので、その間に起こる様々な問題を解決するには、ほぼ電話かメールでのコミュニケーションだったため、十分に状況が伝わらないこともあり、現場で混乱することもありました。

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ですが、このような大変な状況のなかで、現場のスタッフ(入ったばかりのスタッフも含む)が、とてもやる気をもって仕事をし、良い成果を出そうとする姿勢があり、お互いに励ましあって仕事ができたことは、とてもよかったと思います。個々に担当の仕事を達成しななければならないほか、お互いに協力する体制を随時作ってきたと思います。 大学の研究の一環で研修生の立場でありつつ、DIFARではなくてはならない人材として活仕事をしていた女性スタッフは、シングルマザーでありながら研究論文を終わらせなければなりませんでしたが、晴れて農業技師としての専門家となることができ、それはとてもうれしいことでした。 また、インターン前には予想もしていなかった多くの方々の訪問があり、NGOの運営にとってとても大きな励みになると感じました。 長い実績と経験があるDIFARでも、常にNGOとしての経済的自立と持続可能な活動が大きな課題になっていくことを学びました。また、元ボリビア隊員であった責任者が、活動をこのように続けて行く上でいろいろな種類の問題を解決するために、スタッフには見せない影ながら抱えている苦労も知り、今後、私自身が団体の責任者として活動する際の、現実的かつ重要な視点、様々な問題とその解決のあり方や可能性を大いに学びました。

Q3.この経験を今後どのように生かそうと考えていますか?
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2015年2~3月には、日本大使館の草の根無償資金により、ミカヤ村という村落で全面的職業教育センターの一部(陶芸製作と機械編みの教室及び作業場、受付窓口)が開設される予定です。そのため、このセンターの一部開設に向け、運営を主にミカヤ村の住民(運営委員会)と共に確立していくわけですが、センターの経済的自立を見込んだ運営ができるよう、授業料の設定、当センターで生産した手工芸製品や野菜等の販路の模索と適正価格の設定、また売上の何パーセントかをセンターへ還元する等の仕組みを、最初の段階で検討し、実践していきたいと考えています。センター運営上、ごみの分別事業は通常の活動として取り入れていきたいです。また、2015年以降は、同時進行的に当センター及びミカヤ村の小学校でのビニール・ハウスの建設(実験的にボリビアで大きな換金作物になっているキヌアの栽培、通常必要とされる野菜の栽培、天竺ネズミの飼育等のため)を協働するマジョール・デ・サン・アンドレス大学の支援で行う予定です。このビニール・ハウスの運営にあたって、DIFARで学んだ堆肥づくりを実験的に行い、ごみを出さないで循環して有機栽培に役立てるように進めていきたいと思います。さらに当センター運営のため、自然エネルギーの利用を考えており、太陽光パネルによる発電と充電池の設置を、上記大学のプロジェクトの一環で行う予定です。

そもそもNGOを立ち上げようと思った当プロジェクトを確実に進めることが第一の課題ですが、同時に、ボリビア国内の団体として設立・登録を行うにあたって、まず、団体の経済的自立(当センターの運営を支援するにあたって、活動予算、講師やスタッフの給与がまかなえる収益事業の模索を含む)の課題を具体的に検証し、向こう5年間の具体的な経済的な見通しと活動内容を計画したいと思います。その計画によっては、NGO団体が適しているのか、教育・研究機関が適しているのか、社会的起業をした方がよいかを再検討し、持続可能で柔軟性のある団体設立を2016年に目指し、活動できるようにしたいです。インターン終了後すぐに、ラパス県庁のほうから、この全面的職業教育センターを他の地域にも設置して行きたい!という、うれしいオファーがありましたので、成功事例をつくることが当面の課題になります。長期的には、この全面的職業教育センターを成功させ、その経験を通してボリビア全国に事例を示し、必要とされる地域での調査・活動も始めていき、ボリビア国内の過疎が進む村落地域のさまざまな問題解決を図って行きたいと思います。

・帰国隊員進路情報ページ