UNV経験レポート

協力隊ではバスケットボール隊員として活躍された石田さん。国連機関で働くことになるとは夢にも思わなかったと振り返る石田さんが、どのようにしてUNVとして活動することになったのか。現在は、国連正職員として勤務される石田さんのUNV経験を紹介いたします。

協力隊終了後、民間企業、大学院を経て国連ボランティアに

まさか国際機関で働く事になるとは夢にも思わなかったのに、それを可能にしてくれたのがJOCV枠UNV制度でした。協力隊ではガーナでバスケットボール隊員として現地の若者たちと共に汗と涙と埃に揉まれる毎日でした。協力隊終了後、3年間民間企業で働き、やっぱり国際協力の仕事がしたい、世界のチャレンジングな場所に自分を置いてみたいという思いから、英国の大学院へ行きました。大学院修了時にはJOCV枠UNV制度にのみ進路を絞り、応募書類を書きました。大学院で教育開発学を専攻していたので、教育系国連機関に応募書類を送ったのですが、まさかの全滅。そこで、たまたま国連開発計画(以下、「UNDP」)の平和構築の仕事が出ていたので応募したら運よく受かりました。UNDPで働く中で知ったのですが、通常のUNVの選考プロセスでは、競争相手が世界中にいるため、特に語学力や経験年数の面で日本人は不利とされていますが、JOCV枠は協力隊経験者に限定した募集のため、協力隊経験者が国際機関に入る足がかりとしてはとても素晴らしい制度だと私は思います。

協力隊経験が発揮された国連ボランティアとしての活動

JOCV時代、活動中の練習風景

JOCV時代、活動中の練習風景

UNV時代の警察プロジェクトのメンバーと(石田さんは一番左)

UNV時代の警察プロジェクトのメンバーと(石田さんは一番左)

UNVとしてUNDP東ティモール事務所の警察事業に配属になり、何でも屋として働きました。肩書きはプロジェクトオフィサーで、事業スタッフの採用、調達、モニタリング評価、広報、警察官へ写真撮影や映像制作の技術指導をしました。協力隊の時と同様、カウンターパートと共同でする仕事はほとんど進捗がなかったり、開催予定のワークショップが延期に次ぐ延期になったりで、協力隊で学んだ我慢強さが役に立ちました。山の天気のように変わりやすいカウンターパートの要求も、いつも決まって土壇場締め切り直前での変更や追加事項も、ゲームだと思って対応できるようになりました。

国際協力の仕事ではほとんどが思い通りに行くことが少ないので、いかに我慢をし、解決策を考えて行くかが大切だと思います。また仕事ができるというだけでは、カウンターパートや同僚と上手く働くことができず、結果的に物事が進まなくなってしまうので、とびっきりのスマイルや愛想で挨拶をして、いかに現地語を駆使してジョークを言えるかが相手の心を掴む秘訣だと思っています。「怒らず」「悩まず」「焦らず」のような点において協力隊経験が生かされたのではないかと思います。

国連正職員として

UNVの活動でカウンターパートに写真・映像を教えている様子

UNVの活動でカウンターパートに写真・映像を教えている様子

UNVとしての任期終了後、空席応募を通じて、現在はUNDP東ティモール事務所の正職員として、ガバナンス部の選挙事業に関わり働いています。私の業務は広報です。ポスターやニュースレターを作ったり、テレビ広告を作ったりして、選挙情報を市民に伝えています。また選挙報道が公正に正しい情報の下実施されるように、ジャーナリストにトレーニングを行ったり、報道規則などを作成したりしています。
ガバナンスや選挙などは、私にとっては未知な分野ですが、協力隊時代に培った冒険心で、新しいことに進んでチャレンジし、勉強も欠かせません。現在、職歴や学歴では関わったことのない写真や映像が僕の仕事の中心になっています。好きなこと、趣味として続けてきたことが今は仕事になっていると考えると私はとても幸せものです。

これからUNVを目指す皆さんへ

国連機関で働いて強く思いますが、内部の事情を知っているのはとても強みです。国連機関で働いている様々な専門家と繋がりができるのも強みの一つです。JOCV枠UNV制度はそういった機会を与えてくれます。UNV後の将来について不安もあるかと思いますが、国連機関の正職員になってもだいたい1年毎の短期雇用なので、そういった不安定さに早く慣れておくといいかもしれません。また、キャリア駆け出しの頃は専門性が少なく応募書類を通過させるのに苦労しますが、組織に入ってからも自分次第でいくらでも学び吸収することができます。私は将来のことを計画的に考え実行する、というよりは感覚的にポーンっと進路を決めてきて今のところうまくいっています。協力隊に参加した時のように、考えすぎずに、機会があったらエイヤーで飛び込んでみてもいいかもしれません。

・帰国隊員進路情報ページ