UNV経験レポート

開発途上国を自分の目で見てみたい、いつか国際的な仕事をやってみたいと考えていた備瀬さんは、青年海外協力隊ではスーダンで手工芸隊員として活動しました。帰国後、2016年よりUNVとしてUNDPスーダン事務所にて若者の自立を促すプロジェクトを担当された経験を紹介いたします。

協力隊に参加し、自分の想いがより明確に

将来「国際的な仕事に就く」というイメージはもっていましたが、具体的にどのような形でというのは決めていませんでした。ただ、国連で働くという選択肢はなかったように思います。開発途上国を自分の目で見て体験したいという思いから飛び込んだ協力隊の生活の中で、開発分野の重要性や先進国である日本に住む若者の1人としての責任を気づかされました。協力隊では手工芸隊員として、スーダンにある職業訓練校で2年間活動を行いましたが、洋裁科の女生徒と交流する中で目の当たりにしたのは、彼女らの卒業後の限られた進路でした。著しく低い就職率の原因は様々かつ複雑ですが、就職を希望しても職にありつけないという現状に改善の必要性を強く感じました。その際、同じスーダン国内で国連開発計画(UNDP)が若者を対象として、JICAの協力隊事業に類似したプロジェクトを実施していることを知りました。私1人だと微力ですが、プロジェクトに加わることで何か変化を起こすことができるかもしれないと期待し、このプロジェクトにUNVとして挑戦することにしました。

UNVとしての業務

プロジェクトが大学卒業者を対象に行ったビジネスと環境に関するトレーニングのオープニングセレモニー

プロジェクトが大学卒業者を対象に行ったビジネスと環境に関するトレーニングのオープニングセレモニー

修了式

修了式

私は、UNDPスーダン事務所にて、ダルフール生計支援・復興プログラムの中の「青年ボランティア・ダルフール復興プロジェクト」にYouth Volunteer Coordinatorとして携わりました。2012年から開始した本プロジェクトは、2017年の第3フェーズより「青年ボランティア・ダルフール平和復興支援プロジェクト」と改名され、日本政府から支援を得ながら平和構築活動を組み込んだ取り組みを繰り広げています。その内容は、大学卒業者を対象に、主にビジネスと環境に関するトレーニングを行い、トレーニング終了後、彼らを出身コミュニティに9か月間派遣し受益者に技術移転を行う、JICAの協力隊事業に類似しています。

私はProgramme Officerを補佐しながら、南・東ダルフール州のマネジメントをもう1名のナショナルスタッフと担当しました。UNV1年目は、各取り組みの実施が主な活動内容でしたが、2年目はこれに加え契約書やパートナーの業務指示書等の書類作成にも関わることができました。また、事務所では所長代理として様々な会議やイベントに参加させてもらい、他の国連機関との繋がりも広がりました。

直面した困難はたくさんあります。事務所ではインターナショナルスタッフは最初から最後まで私1名だったこと、仕事に対する姿勢が異なるスーダン人と一緒にプロジェクトの目標を達成するということは、困難続きでした。最大の課題は主要なカウンターパートである省庁の能力不足。経験不足だけでなく、資金不足、意欲の欠如等、様々な要因を考慮しながら遅延なくマネジメントすることでした。幸い、私の上司は日本人の国連職員であり、同じ地域での業務経験もありましたので、相談する適切な相手がいたことは大きな救いでした。基本的なことですが、カウンターパートに各取り組みの指示が確実に伝わるよう視覚材料を頻繁に用いながら具体的な説明を心がけ、経過を密にフォローアップすることで、彼らにプロジェクトの重要さが伝わり始めました。また、彼らが得られる利点についても理解してもらえたことで、彼らの向上心、責任感に改善がみられるようになりました。このフィールド経験は今後国際機関で働く際、説得力のある判断をするために非常に役立つ材料になると実感しています。

UNVを終えたその後

2018年1月にUNVを終え、2018年3月から日本外務省のJPO派遣制度によりUNDPバンコク地域事務所で災害予防のプロジェクトに携わっています。これまでとは異なる分野ではありますが、私の専門である心理学と、ダルフールで得たフィールド経験が十分に活かせる場であると感じています。なぜなら、周りと異なる知識や経験を持っているからこそできる提案・アプローチが重宝されるからです。国際機関では今後更にinnovativeな感覚が求められると思います。私自身、伝統的な思考・活動にとらわれるのではなく、新しいものを生み出す感覚を養っていきたいと思います。

これからUNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

多くの先輩方からよく語学についてアドバイスをいただきますが、やはり「使える」英語力を磨くことは必要不可欠であると感じます。特に全体会議などでは、簡潔かつ要領を得た意見を述べることが前提ですし、建設的な見解でないと聞いてもらえません。それは経験と日々の学習で鍛えることが出来ると思うので、積極的に挑戦することが重要かもしれません。また、様々な分野の知識や経験を積むことは、国際機関で活躍するのに非常に役立ってくると思います。例えば、Programme OfficerやProgramme Analystというようなポジションで、広報の経験があれば重宝されますし、database managementの知識があればプロジェクトに大きく貢献できます。特定の専門性を高めるのも重要ですが、専門以外の分野も手掛けることができれば、国際機関における自分の可能性が更に広がっていくと思います。

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