UNV経験レポート

2016年からUNVとして国際連合児童基金(UNICEF)カンボジア事務所で活躍された山口さん。協力隊では「ボランティア=自発性=無限の可能性」を信念に、ケニアの県保健事務所で村落開発普及員(現:コミュニティ開発)として地域開発に貢献してきました。

JOCV枠UNV制度への応募のきっかけ

JICAの協力隊と国連枠組内の国連ボランティア制度には、ボランティア精神とコミュニティー奉仕を基調とする共通項があります。協力隊赴任中から活動を通してこの精神を身に付けUNVとしての任務にも貢献したいと考えていました。しかし、赴任中にJOCV枠UNV制度の一時停止が告知され、無念ながら帰国後の進路の選択肢として一旦あきらめたのを覚えています。※1 

任期終了後のある日、帰国後オリエンテーションにて紹介された協力隊OB/OG専門サイトを閲覧していたところ、本制度が復活していることが判明。さらに、その時募集されていた案件のひとつがカンボジアにおけるコミュニティー開発のポストでした。協力隊の時と同職種、またカンボジアには学生のときにボランティア活動で訪れた経験もあり馴染みがありました。即応募の準備をはじめ、無事に本制度を活用してUNVとなる機会を頂きました。これは後から知ったことですが、私が本制度復活後の第一派遣者だったとのことです。

  • ※1 2013年から2015年まで、事情により派遣を中断していた。

カンボジアでの活動

保育所運営に関する村長へのインタビュー

保育所運営に関する村長へのインタビュー

地方政府事務所における会議

地方政府事務所における会議

保育所教師へのインタビュー

保育所教師へのインタビュー

UNICEFカンボジア事務所では、母子保健、障害者支援などの社会サービス提供に関する地方政府への技術支援、モニタリング、報告書作成が主な業務でした。データ収集、分析、報告書作成を管理し、約7回の現地モニタリングを実施し、受益者へのインタビューと6件のケーススタディーを執筆。記事はドナー報告書、地元紙(Khmer Times)、事務所公式ブログサイトに掲載されました。

その他に、地方政府向け社会サービス実施マニュアルの作成にも携わり、当マニュアル、コミュニティー啓発活動の効果調査を担当しました。調査票考案、データ分析を統括し、データ収集ソフトウェアの運営・管理・知識共有を行いました。国連機関代表から構成される若者支援特別委員会におけるプロジェクト連携調整、気候変動分野の関連団体調査も実施、結果をマネジメントチームに共有、連携・資金調達可能性について政策提言を行いました。現金支給プロジェクトでは政府機関との連絡、モニタリング、予算分析に貢献しました。

課題は、外部者の立場であるUNVとして存在価値を生み出す必要があるという現実です。現地語による会議でも、議事録作成を積極的に行う事で貢献度を高めるよう努め、忙しい上司へは、業務状況につき定期的に報告を行い、適宜、助言・指示を仰げるよう工夫しました。事務所の運営状況、UNVの能力と求められる技術とのギャップなどによりUNVの立ち位置が左右される状況もありますが、募集段階におけるTOR※2 の再確認、赴任後の業務調整により、状況が改善されていく事を期待しています。

本制度が長期派遣(最長2年)に対応されている点は、派遣先事務所、UNV双方にとって有益であると感じました。UNVは、事務所の政策的枠組みの理解に基づき効果的な提言を行うことができるようになり、プロジェクト管理を任される事で運営能力、知識・経験の向上を図ることができます。事務所側も、一定期間経過後は、チームの一員としてUNVに業務を一任する事が可能となります。

  • ※2 TOR: terms of reference (委託事項)

UNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

UNVはその名のとおりボランティアです。「ボランティア=自発性=無限の可能性」が協力隊時代からの私の信念です。派遣先機関にとってUNVはあくまで外部者で、良い意味でも悪い意味でも縛りは緩くなります。成果は評価されますが、概して正規職員に比べその評価は厳しくなく、この状況下でどう働くかは個々ボランティアの意志次第なのです。私の場合、プロジェクト評価や若者支援特別委員会業務などはTOR外の活動で、提案書を作成し上司の承認を得て始めました。

途上国の問題に真摯に取り組むことを目指すのであればUNV制度は好機だと思います。国際機関の現場・枠組内で、自由な発想で活動を企画、提案し、実行に移すことが可能です。現場では、組織・プロジェクト規定、関係者利害などから、信念だけに基づいた業務進行が難しい事もあるからこそ、独創的発想を試すことのできるこの期間は、国際開発・平和分野のキャリアを進めるなかで貴重な布石になると思います。

・帰国隊員進路情報ページ