UNV経験レポート

大学学部生の頃から、国益を超え、貧困解決に取り組む最も大きな機関である国連で働くことを希望していた阿部さんは、民間企業勤務・大学院留学を経て、青年海外協力隊(ベナン、村落開発普及員)として活動されました。帰国後、国際協力関係の財団法人の勤務を経て、2017年よりUNVとしてWFPセネガル事務所にてFFA(Food for Assets)プロジェクトで活動された経験を紹介いたします。

留学、JOCV、そしてUNVへ

元々、大学学部の頃から、国連職員を目指してきました。国益を超えた存在で、貧困解決に取組む最も大きな機関だというのが主な理由です。学部卒業後、民間企業勤務、イギリス大学院留学を経て、JOCVとなりました。英語に加えてフランス語も磨きたいという考えもあり、仏語圏を志望し、希望通り、ベナンに派遣となりました。村落開発普及員(学校保健)として、担当地域の小学校において「飲み水の用意、手洗いの実施、トイレの管理」がしっかりと行われるよう、校長先生及び他先生に対し、啓発活動を行いました。初代隊員ということもあってか(またフランス語の壁もあり)、なかなかスムーズには成果が出ず、苦労したことが印象に残っています。

帰国後、国際協力関係の財団法人に勤務。フランス語の勉強を継続するなどし、国連への夢を持ち続けていましたが、年齢が三十代半ばに近づいた頃、日本でのキャリアを考え始めました。ですがちょうどその頃、JOCV枠UNVのポスト、「WFPセネガル事務所勤務」の募集情報がメーリングリストで回ってきました。当時、私はセネガルの食糧援助案件を担当していたこともあり、このポストの内容は自分にぴったりでした。年齢的に国連を目指していくべきか悩みましたが、結局、自分の夢を目指すことにしました。

UNVとしての業務

プロジェクトサイト候補の視察(裨益者の女性グループメンバーと)

プロジェクトサイト候補の視察(裨益者の女性グループメンバーと)

野菜栽培用の苗育成

野菜栽培用の苗育成

農業用水路の補修作業

農業用水路の補修作業

活動内容はプログラムポリシーオフィサーとして、FFA(Food for Assets)プロジェクトをマネージしていくことでした。FFAプロジェクトとは、脆弱な状況下にある人々を対象に、(1)彼ら、彼女らが自らの手で、自らの生計活動を改善する資産(assets)を創出し(例:魚の養殖設備、植樹、野菜栽培、共同農地の整備・改善)、(2)この労働に対する対価としてWFPが食糧支援を行なうプロジェクトです。対象者が天候不順等の問題に対し、より強くなること(resilience)を目指しています。

具体的業務内容としては、パートナーNGOとの契約書の作成、プロジェクトサイトを視察した上で詳細な活動内容の決定、同NGOスタッフへの研修の実施、定期レポートのフォロー、同NGOへの支払い手続きフォロー、食料券(food voucher)の準備等が挙げられます。

苦労した点としてはフランス語の壁が挙げられます。現地ではフランス語が公用語として用いられており、業務上、色々細かい点や問題解決に取組む際は特に、フランス語上の壁を痛感しました。語学力はすぐに向上するものではないですし、慣れない業務と相まって、常にもどかしさを感じていたように思います。これらには特効薬は無く、常に学ぶ姿勢を持って、一日一日、業務に一所懸命取組むことが大事だったかと思います。他には職場のスタッフと仲良くなったり(時々フットサルをする等)、日本人の友人と出かけて息抜きしたりしていました。

UNVを終えたその後

UNV時代にJPO※ 採用試験に挑戦しました。上記の業務に加えて応募書類の作成やTOEFL対策をしていた時は、帰宅後に勉強したり、土日も作業したりと大変だったことが思い出されます。JPOの募集ポストとしてWFPカメルーン事務所(プログラムポリシーオフィサー:早期生活再建、生計活動担当)というUNV時代の経歴にマッチするものがあり、このポストを獲得することができました。JPOの派遣時期に合わせ、UNVとしての活動は約1年間で終え、続いてJPOとしてWFPカメルーン事務所で勤務を開始しました。UNVからJPOへと制度上の立場は変わりましたが、WFPという同じ組織内、同じ職種への転身ということで、業務的にはそれほど大きな変化は無く、比較的スムーズな転職となりました。今後、WFPで正規職員のポストを獲得できるよう、努力していきたいと考えています。

  • JPO派遣制度は自国の若手職員を国際機関に送り込むために多くの国が実施する制度で、日本では外務省が費用を負担して行っている。

これからUNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

国連で働くことと、日本の組織で働くことにはかなりの違いがあると思います。雇用形態、待遇、途上国勤務、現地職員、国際職員、言語、ワーキングカルチャー、価値観等々。また通常、国連職員の方から話を聞く機会もなかなか無いと思います。これらを踏まえると、国連で働くことを志望しているのであれば、できれば若いうちに「国連で働いてみる」経験を持つことが良いのではないかと思います(UNVやインターン等)。第一に、上述のことから、入ってみないことには分らない、ことが挙げられます。自分に合っているのかどうかも、入ってみて初めて分かることが結構あると思います。第二に、これに関連しますが、だからこそJPOやその他の採用機会において、「国連での経験」が評価される可能性があると思います。以上のことからも本UNVの制度を活用することを検討されてみてはいかがでしょうか?

UNVになってからも情報収集は大事です。特に国連関係者からは有益な情報が得られると思います。国際機関毎の違いなどもあるようです。色々迷うこと、悩むこともあるかもしれませんが、良い方向にキャリアが開けるよう、お祈りしています!

・帰国隊員進路情報ページ