UNV経験レポート

藤原 周平さんは、青年海外協力隊員(平成26年度1次隊、PCインストラクター)としてナミビアで活動されました。活動期間中、ある書籍と出会い、国連で働く著者がリーダーシップを発揮し、開発援助・人道支援のプロジェクトを成功に導く姿に感銘を受け、国連で働いてみたいと思うようになりました。帰国後、海外留学を経て、JOCV枠UNV制度の案件に合格され、2018年よりUNHCRヨルダン、アンマン事務所にて対外連携担当官として活動されました。以下、そのご経験を紹介いたします。

JOCV、そしてUNVへ

青年海外協力隊としてナミビアで活動していた時から、いつかは国連で働きたいと思っていて、帰国後の進路を模索していた時にJOCV枠UNV制度について知りました。そのため、ある時点でこの制度へ応募することは自然な流れでした。

国連で働いてみたいと思うようになったのは、青年海外協力隊として活動していた時に読んだ和気 邦夫(著)「ユニセフではたらこう」及び「ユニセフの現場から」によるところが大きいです。開発途上国という政治的にも経済的にも様々な制約があり住環境も過酷な中で、国連で働く著者がリーダーシップを発揮して開発援助・人道支援のプロジェクトを成功に導く姿に感銘を受け、私も目指してみたいと思うようになりました。

JOCV枠UNVは、毎年の募集案件が5件程度で、全ての分野を網羅するほど多いわけではなく、自分の経歴に適した案件が見当たらない場合もありますが、受かるまで毎年応募可能ですので、登録だけして気長に待つのはありだと思います。

UNVとしての業務

難民キャンプにて 邦人訪問にかかる対応および調整

アズラク難民キャンプにて 邦人訪問にかかる対応および調整

アンマン事務所前にて

アンマン事務所前にて

アズラクキャンプ内の様子

アズラク難民キャンプ内の様子

首都アンマン事務所の対外連携部に所属し、ヨルダン政府主導のヨルダン対応計画と呼ばれるシリア難民向け人道支援枠組みの運営サポートに従事しました。60を超える各国連機関やNGOを含む援助組織が参画し、年間予算規模2,600億円程度の国内最大のシリア難民及び受け入れコミュニティ向け支援計画です。具体的な活動内容としては、主にこのヨルダン対応計画下での各セクター(教育・シェルター・食糧・生計手段・必需品・プロテクション・保健・水衛生)間の調整及び連携強化を目的とした月例会議の準備・議事録作成・フォローアップ、各セクターの援助活動概要及び成果の取りまとめやセクター間の分野横断的な事案の対応などを行いました。

活動で直面した問題として、シリア以外の国出身の難民が必要な援助を受けることができていないということがありました。国内には当時、国連難民高等弁務官によって登録されているだけでも約65万人のシリア難民が確認されていましたが、イラク、スーダン、イエメンやソマリア出身の難民も万単位で存在していました。しかし、各国ドナーは、シリア難民への関心が高く、これらの国籍の難民は忘れ去られたような状況でした。私は、アドボカシーのため、シリア以外の国出身の難民の援助ニーズの全体像把握に努めることで、ドナーによる現状把握に貢献しました。

今回のUNVでの職務を通して、様々な他援助機関との関係構築や維持に携わりましたが、援助が非常に政治的であることを学びました。国連難民高等弁務官は、難民の保護を最優先事項として取り組んでいますが、ヨルダン政府は、シリア難民向け支援を通して脆弱なヨルダン人へも支援を届けたい、また各国連機関は、それぞれが持つ任務を遂行する上で、他機関と主張がぶつかる場合がしばしばありますので、様々な援助方針を巡って揉めます。このような政府や援助機関の政治に触れる機会があり、大変貴重な経験だったと感じます。

UNVを終えたその後

国際協力機構のガボン支所で企画調査員として働くことになりました。仕事内容は、ガボンの開発ニーズを特定し、それに適したプロジェクトの形成・モニタリング・評価をすることが主となります。特に、資金が限られる中、国連機関や他ドナーとのパートナーシップの可能性を模索することが求められていて、JOCV枠UNVとして対外連携部に所属し、他援助機関と共に働いた経験を生かせるのではないかと考えています。また、これまで地道に独学で学んできたフランス語を使っての仕事になりますので、とても楽しみにしています。これからも開発援助や人道支援に従事し、日本や世界の安定と発展に微力ながら貢献していけたらと思います。

これからUNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

国連で働く機会が限られている中で、JOCV枠UNV制度は非常に魅力的な制度だと思います。一度内部に入ってしまえば、厳しい競争が待っているものの、次のポジションを獲得することは、部外者よりも格段に確率が上がります。上司から次も一緒に働かないかと誘われる場合もあります。一方で、仮に国連で働けたとしても、自分が望む専門分野でのポジションでない場合もあると思います。UNVでの経験を通して、専門性は非常に重要であると感じましたし、専門性がなければ、持っている実力の全てを発揮する機会も限られるかもしれません。国連を目指しつつも、どのような分野で専門性を磨いていくのかを、出来るだけ具体的に思い描いて進んでいくと、さらに良いのではないかと感じました。私もまだまだ修行の身、これからもみなさんと共に頑張っていけたらと思います。

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