UNV経験レポート

樺島 純子さんは、青年海外協力隊員(平成24年度1次隊、理数科教師(現:数学教育))としてザンビアで活動されました。帰国後は、大学院へ復学し教育開発の専門知識を深め、在外公館で実務経験を積んだ後、より現場の人々に近いレベルで、政府機関や多様なアクターと連携した活動に携わりたいという思いを強くし、UNV応募を選択され、見事合格。2017年より2年間、UNHCRセルビアにてAssociation Field Officer(Protection)として活動されました。以下、そのご経験を紹介いたします。

JOCV、大学院、在外公館での実務を経てUNVへ

幼少期にタイで生活する中で、貧富の差や過酷な児童労働の現状を目の当たりにした事をきっかけに、将来は、国際協力の分野で働いてみたいと思うようになりました。

青年海外協力隊では、理数科教師(現:数学教育)として中学1・2年生の数学の授業を担当、学級運営及び生徒指導にも携わる他、協力隊員と協働し現地教員を対象とする勉強会やワークショップの企画・運営・実施等の活動を行いました。

帰国後は、大学院へ復学し教育開発に関する専門知識を深め修士号を取得し、その後、在外公館で教育・広報等2年間の実務経験を積みました。これまでの経験を通し、より現場の人々に近いレベルで、政府機関や多様なアクターと連携した活動に携わりたい気持ちが強まり、UNVに応募しました。

UNVとしての業務

難民支援センターにおけるフィールド調査時に出会ったシリア家族

難民支援センターにおけるフィールド調査時に出会ったシリア家族

難民・移民を対象に行ったPSEAに関する啓発活動

難民・移民を対象に行ったPSEAに関する啓発活動

イラン難民女性とPSEA教材作りに携わった時の写真

イラン難民女性とPSEA教材作りに携わった時の写真

UNHCRセルビア事務所では、Associate Field Officer (Protection)として政府機関・パートナーNGO団体と連携及び協働して難民・移民の保護及び支援に携わりました。担当業務は、人道支援者による性的被害及び暴力の防止(Protection from Sexual Exploitation and Abuse: PSEA)フォーカルポイントを務め、PSEAの冊子・ポスターの作成及びPSEA に関するFocus Group Discussion(FGD)の実施等、啓発活動に従事しました。その他、難民・移民へインタビュー・アンケート調査を実施しました。また、パートナーNGOの能力強化業務補佐として、Age Gender and Diversity Mainstreaming(AGDM)等、様々なワークショップの立案、実施、報告書作成へ従事する等、多岐に渡る業務に携わるなど貴重な経験をさせて頂きました。

直面した困難は、多くの難民・移民がセルビアでの長期滞在・また過酷の生活によるストレスや希望を見出せない状況の中での活動、また予算削減による現地職員のポストがなくなることで仕事への意欲をなくした同僚との協働です。しかし、常に改善策を考え、難民のニーズを汲み取り、寄り添った活動、また同僚の資質を活かし巻き込んだ業務等を心掛けることを大事にしました。その結果、同僚や難民との信頼関係が築け、一人では難しかった活動も多くの協力や支援が得られることで達成することができました。

本UNVを通して、私の中でこの3つは大切な教訓になりました。1つ目は、どんな状況も自分自身を成長させるチャンスと前向きに捉えること。2つ目は、柔軟な姿勢で自分にできる最善を尽くすこと。3つ目は、大きな貢献をしなければと焦らず、小さい行動を積み重ねることです。

UNVを終えたその後

人々の能力開発・成長促進に携わるための知識や能力を深めていく年として過ごしています。1人のイラン難民女性とPSEAの教材作りを協同で行ったことがきっかけです。彼女が得意とする絵を活かし、2人で協議を何度も重ねPSEAの教材を完成させました。

その時、彼女が「セルビアに来て将来が見えない生活に希望を失っていた。しかし、PSEA教材作りで自分が大好きな絵を生かせたことは、自分の自信を取り戻すきっかけとなった。ありがとう」、更に「自ら支援団体に申請し、良い返事をもらった」と嬉しそうに伝えてくれました。 難民だからと制限をかけるのではなく、一人ひとりと向き合い、無限の可能性があることを信じて活動を続けたからこそ、彼女からの言葉で涙が溢れ出そうになりました。

自分たちの活動によって、彼女の生きる力を取り戻す機会を作れたことにやりがいを感じると共に、人々のエンパワメント支援をしたいと強く感じました。

これからUNVを目指す協力隊OVの皆さんへ

自分に足りないものではなく「出来ること」に目を向け、今の自分が持っている能力に感謝し、活用してみることをお勧めします。

私自身、難民支援の経験がないと難しい、正職員の仕事を探した方が良い等、周りからの言葉に影響を受け、挑戦を恐れた時期がありました。しかし、自分にないものより、今あるスキルをどのようにアレンジして生かせるか視点を変え、自分の心がワクワク惹かれる気持ちに素直に従いました。周りからの助言で参考にできる点は取り入れ、最後は自分が大切にしたい想いを選択する重要性を学びました。

専門性や帰国後の進路等で不安があると思いますが、自分を信じ、「挑戦したい」と沸いてきた感情を大切にし、とりあえずとりゃぁあ~!と勇気を振り絞り一歩踏み出してみてください。自分の心の声に耳を傾け、行動することで新しい扉が開き、世界が広がります。

私自身の経験談ですが、もし何か参考になるものがありましたら幸いです。

・帰国隊員進路情報ページ