UNV経験レポート

青年海外協力隊ではジャマイカで防災・災害対策隊員として活動した笹森さんは、帰国後も、国際協力の分野で活躍したいと考え、UNVに応募・合格。2019年より2年間、UNDPザンビアにて、 ザンビアにおける元難民に対する再定住支援事業のProject Coordination Officerとして活動されました。活動期間中、COVID-19の影響を少なからず受けつつも、同事業に奮闘された経験を紹介します。

協力隊時代とは異なる分野にUNVで挑戦

協力隊では、ジャマイカの防災・災害対策要員として、地方自治体の中での防災啓発活動にしました。企業の防災訓練に参加したり、コミュニティや大学に対して災害対応計画を事前に作っておくことの重要性を伝える中で、コーディネート業務の難しさと楽しさを感じるようになりました。

協力隊帰国後は国際協力の現場でさらに経験を深めるための機会を模索していたところ、UNDPザンビアによる元難民の再定住支援事業の調整業務を担うUNVの募集に出会いました。

防災・災害対策と元難民再定住支援事業は全く異なる分野であり、自分にできるか不安にも思いましたが、挑戦してみたい気持ちが勝り、応募してみることにしました。

UNVとしての業務

北西部州・メヘバ再定住支援地域の入り口

北西部州・メヘバ再定住支援地域の入り口

メヘバの住民と一緒に

メヘバの住民と一緒に

ザンビアの元難民再定住支援事業は日本の補正予算を活用して実施されている

ザンビアの元難民再定住支援事業は日本の補正予算を活用して実施されている

UNDPの同僚ならびに北西部州の政府側カウンターパートのみなさんと

UNDPの同僚ならびに北西部州の政府側カウンターパートのみなさんと

国連機関は、30年以上周辺国から流入が続いている難民がザンビア国内に再定住できるよう 、 法・ 生計 手段・社会の3つを軸に支援を続けています。

近年、難民支援の方向性が、ザンビア国内での再定住支援を志向するようになったことを受けて、UNDPザンビアが関係する国連機関や NGOの間の調整役を担うようになりました。

私は、2019年時点でザンビア国内にてUNDPが活動を行っている難民キャンプ隣接再定住支援地域のうち、北西部州のメヘバ再定住支援地域にて、Project Coordination Officerとして、再定住支援のためのプロジェクトの実施補助を担当しました。

活動し始めて最初に取り組んだのは、プロジェクトを実施するための体制の見直しでした。再定住支援に向けて様々な機関が協力しているという状況は、裏を返せば様々な機関の思惑を調整する必要があるということです。国際機関だけではなく、ザンビア国政府の省庁や現地で活動しているNGOなどとより上手に連携していくための工夫が必要な場面が多く見られました。また、再定住支援を促進するためのリソースも特定の組織や職員に偏って配分されており、業務実施に支障を来す状況でした。そうした状況を改善するために、北西部州における連絡体制の見直しを行い、情報が一元的に管理されるよう注意を払うとともに、予算や車両など、プロジェクトに関連するリソースの管理体制を確立しました。

赴任から半年経たないうちにザンビアでも COVID-19の流行の影響が出始めました。

感染防止措置として、首都への出張の機会は限られましたが、そのおかげでフィールドでできることを集中してやることができたと思います。

リモート会議を通して首都からプロジェクトを管理する上司に提案する形で、ザンビア政府側カウンターパートである副大統領府のDepartment of Resettlementと協議しながら、再定住支援を効率的に実施するための体制づくりの手立てを継続的に講じていきました。

活動し始めた当初、こうした地道な体制づくりがプロジェクトの進捗に寄与するかどうかは半信半疑だったのですが、任期開始から1年が経ったところで数字として見える形で成果が出ました。元難民の再定住具合を計る指標の中に、何世帯に対して再定住支援地域内の農業・居住用途の土地が割り当てられたか、というものがあります。2018年から2020年まで、ザンビア国籍ではない、元難民と見なされる世帯に新規に割り当てられた土地がなかったのですが、2020年9月から12月にかけて、100世帯に対して新しく割り当てを実施することができました。受益者となりうる元難民で、土地の割り当てを受けていない世帯はこれで残り約1700世帯となりました。土地の割り当てを継続的に実施することができるかどうかは未知数ではありますが、止まっていたプロジェクトを動かし、目標達成に向けて方向づけることができたのは大きな成果だと感じています。

UNVを終えたその後

JOCV枠UNVを終えた多くの人が志望する外務省のJPO派遣制度には年齢制限のため応募することができませんでした。

現在は、UNVで得られた貴重な経験を活かせるポストを求めて、国連やJICA、またNGOの専門職やコンサルタントの募集に応募しながら進路を模索しています。

これからUNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

国連での勤務を希望される方で、UNVの後に外務省のJPO派遣制度へ応募することを考えているのであれば、参加の検討をお奨めします。良く言われることですが、一度中に入って、人的ネットワークを広げられれば、次の国連のポストを得られやすくなります。協力隊の次のステップとして、そして、国連でのキャリアの最初に一歩として、JOCV枠UNV制度へ参加してみてはいかがでしょうか。

・帰国隊員進路情報ページ