UNV経験レポート

JICA海外協力隊ではルワンダでコミュニティ開発隊員として活動された太田さん。帰国後も、より広い視野を持って国際協力に携わりたいという強い思いから、JOCV枠UNV制度を利用しました。2021年から国際農業開発基金(IFAD)マダガスカル事務所でAgro-economic analystとして活躍された経験、またその経験から太田さんが学んだことを紹介いたします。

応募のきっかけ

私はJOCV時代コミュニティ開発隊員としてルワンダ共和国の小さな農村に派遣されていました。当時の活動は、農家グループへの作物多様化の提案、地元企業と協力したコーヒーの国内需要の喚起、日常の食事を通じた栄養状態の改善啓発活動などを行っていました。村に住む一人の住人として、そこに住む地域の人々と同じ目線で一緒に活動できた事は私の人生のなかでも何物にも代えがたい素晴らしい期間でした。他方、様々な活動を行う中で個人での活動の影響力の限界というのも実感し、より広い視野を持って開発途上国の現状とその発展に貢献したいと思い、その意図に合う国際機関での経験を求め応募しました。

UNVとしての業務

IFADマダガスカル事務所職員と

IFADマダガスカル事務所職員と

受益者との対話

受益者との対話

プロジェクトサイト視察のため時には泥道も進む

プロジェクトサイト視察のため時には泥道も進む

配属先のIFADは低金利の貸付及び無償資金供与を通じて、開発途上国の農村開発に貢献する事をミッションとする国際機関です。私を含めたマダガスカル国事務所の業務は提供した資金に基づいて事業を計画し、現場の実施チームの運営状況を監督し、状況を本部及び東・南アフリカ地域統括事務所に共有しフィードバックを得る事で事業運営の遂行及び改善を提案していくことです。その業務内容は、関係各所との会議に始まり、必要書類や情報の精査、事業現場へ訪問しての進捗状況の確認、それらを統合した報告書及び資料の作成等多岐に及びました。それらの業務を通じ、対象国が持つ現実的な課題や、様々な要因による事業運営の困難さ、受益者の方々が直面している社会的な問題などに触れました。それらの問題は、当事者で解決するにはとても大きすぎる課題で、だからこそ国際機関が果たす役割や影響は重要であり、その重要性を実際に事業運営に関わる形で身をもって感じる事ができました。

特に実際に現場を訪れた際に聞くことのできる受益者の声やその成果は、通常業務で扱う大量の文書やデータ以上に、自分たちの事業の意義を物語っており、運営に携わる当事者としてそれらの人々に関わる事が出来た事は貴重な経験でした。

また、私たちの業務は国事務所単独で行うのではなく、本部のローマ、統括地域事務所のナイロビ、他国の事務所、また各々働く専門コンサルタントなど世界各国で活躍する様々な人達と共同で行います。その多様な人々との交流もまた得難い経験となりました。

COVID-19パンデミックの影響による難しい時期もありましたが、2年間を通して国際機関の役割とそこで働く人々の様々な様子、そして対象国の政府機関や受益者への影響など、普段簡単には目にすることができない多くの事柄に関わることができたことは今後の人生の糧となる貴重な期間となりました。

UNVを終えたその後

IFADでの活動を通して様々な経験を得た一方で、自身の専門的知見をより高める必要があると感じました。実際に業務で関わった人々は知識・経験豊富なスペシャリストばかりで、彼らの能力にはいつも舌を巻きました。将来的に私も彼らのようなスペシャリストとして国際社会に貢献するため、専門的知見を深めるべく大学院に進学することにしました。JOCVとUNVの両方の現場で得た貴重な経験を研究の場にも適用しさらに自分の世界を広げていきたいと考えています。

これからUNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

国際機関に身を置くことで見ることのできる風景、沢山の人々に影響を与える大きな政策が目の前で作られていく様、そしてその一員となれる事は得難い経験となります。また多様なバックグラウンドを持つ人々が集う現場は、確実に自身の世界を広げてくれるでしょう。JICA海外協力隊終了後に国際協力や国際機関でのキャリアを考えていない方でも、長い人生において貴重な体験となると思いますので興味のある案件がありましたら挑戦してみてはいかがでしょうか。

・帰国隊員進路情報ページ