UNV経験レポート

ケニアでJICA海外協力隊として活動した経験が、国連ボランティアを志す原点となった田中さん。コミュニティ開発の隊員として、小規模農家の収入向上を目指し、稲作技術普及プロジェクトに取り組みました。限られた支援でも生活が大きく変わる瞬間を目の当たりにし、ご自身の“人を巻き込む力”を生かして、より多くの脆弱な立場の人々を支えたいと考え、JOCV枠UNVへの応募を決意されたそうです。

JOCV枠UNVへの応募のきっかけ

ケニアでJICA海外協力隊として活動した経験が、国連ボランティアを志すきっかけとなりました。JICA海外協力隊では2022年2月~2024年2月までコミュニティ開発担当として、小規模農家の収入向上を目的に、稲作技術普及プロジェクトに従事しました。任地は湿潤な土地柄が原因で主食であるメイズ(トウモロコシ)が低収量であるという課題を抱えていました。そこで、主食として需要のある米の栽培を提案し、県庁生産局の農業事務所の職員とともに普及活動、民間企業の協力を得て精米機などを導入したことで、2年間で約150世帯の生計に影響を与えました。参加農家の一人は、プロジェクトで得た技術による収入で子どもを大学まで進学させることができたと教えてくれました。この経験を通じて、限られた支援でも人々の生活に大きな変化をもたらせることを実感し、自身の“人を巻き込む力”を活かしてより多くの脆弱な人々の力になりたいと考え、国連ボランティアへの応募を決意しました。

UNVとしての業務

写真1 JICAの米プロジェクトが支援する農家グループと稲作地にて

写真1 JICAの米プロジェクトが支援する農家グループと稲作地にて

写真2 綿花事業が支援する綿花農家とのミーティングの様子

写真2 綿花事業が支援する綿花農家とのミーティングの様子

写真3 綿花農家の収穫をモニタリングした際の様子

写真3 綿花農家の収穫をモニタリングした際の様子

私は2024年12月、ウガンダの南スーダン国境に近い町にある国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)フィールドオフィス[泰和1.1]に派遣されています。配属された際、現地事務所には生計支援活動の予算がないことを最初に知らされました。私は難民と地域住民の生計の機会を最大化する任務を担っていたため、資金がない中でどのように支援できるかを考えました。そこで、JICAや民間企業に働きかけ、難民居住地で生計支援活動を実施してもらえる機会を模索しました。その結果、JICAや民間企業との戦略的なパートナーシップを築き、JICAによる稲作プロジェクトと民間企業による綿花プロジェクトの導入を調整することができました。これらのプロジェクトは、難民や地域住民の生活に具体的な変化をもたらしています。ウガンダでは、2025年に世界食糧計画(WFP)が支援対象を見直し、難民支援を受ける世帯数を大幅に減らした結果、最も脆弱な人々にも十分な食糧が届かない状況が生じています。背景には、昨今の国際的な支援額の減少が人道支援全体の予算不足を加速させています。そのため、難民は食糧を自給し、自ら収入を得て自立することがますます求められています。しかし、必要な支援は十分ではありません。稲作と綿花のプロジェクトは、収入源の多様化と食料安全保障の向上を目的としています。参加者は新たに習得した農業技術を活かして稲や綿花を栽培し、収入を確保することができました。さらに、彼らはこの機会を自分たちだけの利益にとどめず、近隣や地域の人々にも参加を促すことで、より大きな影響を生み出そうと情熱を持って取り組んでいました。こうした姿から、多くの学びと感銘を受けました。活動の持続可能性は非常に重要であり、今後も参加者と協力しながら、支援が長期的に効果を持つよう取り組んでいきたいと考えています。

これからについて

帰国後は、女性や若者、難民などの、支援が必要な人々が安定した生活を送れるよう、収入を得られる仕組みづくりに取り組みたいと考えています。UNVでの経験から、難民は住んでいる地域が経済的に孤立しているため、技能を教えるだけでは生活に直結せず、十分な収入にはつながらないことを実感しました。例えば縫製技術を教えても、買う人が限られているため、収入は増えません。私は民間企業と協力し、難民を正式な農業の仕組みに組み込むことで、収入向上や地域経済の活性化に取り組んできました。今後は、こうした取り組みをさらに広げ、難民に限らず多くの人が自ら経済活動に参加できる機会をつくり、貧困の解消と地域の成長に貢献したいと考えています。

UNVを目指す皆さんへ

写真4 事務所の同僚と

写真4 事務所の同僚と

昨今、国際協力の現場でキャリアを積むことは以前にも増して難しくなっていると感じます。2025年以降、国連は人員や予算の削減に直面しており、多くの職員が職務に影響を受けています。私の任期中も、多くの同僚が職を辞することを余儀なくされ、難民の数が増える中で支援を提供することが困難になる場面がありました。しかし、JOCV枠UNVは日本からの全面的な支援を受けることができ、2年間の任務を全うすることができています。本制度は、国際協力の分野でキャリアを積みたいと考えている人に、現場に飛び込み挑戦するきっかけを与えてくれる制度だと思います。もし今迷っていらっしゃるのなら、ぜひ一歩を踏み出してみてほしいなと思います。

・帰国隊員進路情報ページ