UNV経験レポート

大学院で農村開発を学んだ後、村落開発普及員としてタイの女性職業グループの副収入向上活動に取り組んだ加藤さん。帰国後、UNVとしてネパールのUNHCRサブ事務所に赴任し、ブータン難民の支援に携わりました。現在はJPOの難関に突破し、UNDPフィジーマルチカントリー事務所で自然災害における復興活動に努めています。協力隊からUNV、そしてJPOと歩んできた加藤さんの経験レポートを紹介します。

受益者主体の開発の重要性を実感して

大学院で農村開発を学んだ後、現場経験を得るため青年海外協力隊、村落開発普及員としてタイに赴任しました。タイの赴任地では、大学院時代から関心を抱いていた持続的な生計づくりを実践するため、女性の職業グループの副収入向上活動の改善に取り組みました。青少年の育成や保健ボランティアの活動にも関わる中で、現場のニーズに即した支援の大切さを実感し、受益者を主体にした支援に携わるため、タイのビルマ難民キャンプで草の根的な活動を行っているNGOに就職しました。タイでは、難民の第三国定住が大々的に始まっており、ジェンダー暴力の問題や仕事に就くことができない難民、教育を受けても行き場のない若い世代の難民の 現状に直面しました。この経験から、難民のニーズ把握に努めながら難民の保護や支援を行っているUNHCRで、難民が抱えている問題について総合的に取り組んでいきたいと思うようになりました。

UNVを通して、ニーズアセスメントや調整能力を鍛える

難民キャンプにおいて、ユニクロによって届けられた衣服を配布

難民キャンプにおいて、ユニクロによって届けられた衣服を配布

ブータン難民とネパール人共同の現金収入向上活動の立ち上げに向けての研修の視察

ブータン難民とネパール人共同の現金収入向上活動の立ち上げに向けての研修の視察

立ち上げたばかりのブータン難民とネパール人共同のヤギ飼育グループを訪問

立ち上げたばかりのブータン難民とネパール人共同のヤギ飼育グループを訪問

UNVのAssociate Community Development Officer として、ブータン難民キャンプの支援を行っているネパールのUNHCRサブ事務所ダマクに赴任しました。当時はブータン難民キャンプでも第三国定住が開始されており、UNHCRサブ事務所では、残存するであろう難民が将来ネパールのホストコミュニティへ定着できる環境を作るためアウトリーチ戦略が立てられたばかりでした。応募時の要請とは異なるアウトリーチ戦略を実施するため、NGOや他のUNパートナー機関の間で設立されたホストコミュニティ支援プロジェクトタスクフォースを率いていく役目を任されました。具体的には、難民キャンプ周辺のホストコミュニティにおける小規模な医療や教育、インフラ整備、生計などの活動の計画や実施に携わりました。 赴任して最初に直面した困難は、パートナー機関によるアウトリーチ戦略に対する抵抗でした。当時、UNHCR同様、当時のほとんどの援助機関では経験や能力を持った難民の第三国定住が続き、キャンプ内の支援活動を維持していくのが精一杯でした。そんな中、話し合いを重ねながら、ホストコミュニティ支援を行うためのガイドラインを作成したり、タスクフォースメンバーの地元の知識を引き出しながらプロジェクトを進めていく中で、調整能力を磨いていきました。

また、難民キャンプでは過去に何度も職業トレーニングが行われていましたが、持続的な生計活動を築いていくことは難しかったため、NGOパートナーと共に、難民やホストコミュニティの女性を主軸にした現金収入向上活動を立ち上げたり、タスクフォースのメンバーと共に、現金収入活動のガイドラインを作成しました。ジェンダー暴力の被害者や、より保護を必要とする難民が現金収入活動に参加できるようなしくみをUNHCR内の様々なユニットと共に構築していきました。さらに、第三国定住の影響で、存続さえ難しくなっていた難民の女性自治組織の強化にも取り組みました。事業管理能力の向上や、キャンプ内の問題をテーマにした研修を実施し、組織やコミュニティのニーズを踏まえた活動を築く中で、現場のニーズを見出しつつ、それぞれの強みを生かしていく力を養っていきました。UNVの活動を終える頃には、危機コミュニティの再建に関心が高まりました。

ポジティブ思考が次につながる

ヒンズー教のホーリー祭(UNHCRの仲間たちと)

ヒンズー教のホーリー祭(UNHCRの仲間たちと)

東日本大震災直後、UNDPフィジーマルチカントリー事務所にJPO(Crisis Prevention and Recovery Programme Analyst) として赴任し、自然災害リスク軽減や自然災害後の復興活動を担当することになりました。現在、今年初めにフィジーで起きた洪水の被害者を対象に、他のUN機関と共にフィジー初のCash For Workを実施しています。UNV時に培ったいろんなアクターとの共同作業やニーズアセスメント経験を生かして、受益者のニーズを反映させた活動に努めています。

国際機関ではいろんな背景や価値観を持った仲間と活動する中で、時には意見の違いに戸惑ったり、意見の一致に時間がかかったりしますが、新たな発想や知見を得ることができる面白みもあります。開発や国際協力に対する自分なりの信念を持ちながら、あらゆる機会をポジティブに受け入れ、何事にも挑戦していくことで道が開けていくのではないでしょうか。

・帰国隊員進路情報ページ