UNV経験レポート

大学院在学中に協力隊に参加し村落開発普及員として活動された松村さんは、大学院卒業後も国際協力に携わりたいという強い思いから、JOCV枠UNV制度を利用しました。サモアでのUNVとしての経験、またその経験から松村さんが学んだことを紹介いたします。

大学院在学中に参加した協力隊と国際協力への思い

私は大学院在学中に青年海外協力隊に参加し、パプアニューギニアにおいて村落開発普及員として、生計向上と食糧安全保障の強化のため小規模稲作普及活動に取り組みました。私は配属先である州政府の農業畜産局の一員として、コミュニティにおける稲作普及プロジェクトの計画・実施・モニタリング評価に携わりました。協力隊での経験を通じて、私は開発途上国における公共政策やプロジェクト・マネジメント、農村の人々の生活について学ぶことができました。

協力隊での活動終了後、大学院へ復学し、国際開発、特に開発途上国における貧困削減と社会開発について研究を行いました。大学院卒業後も国際協力に携わりたいと思い、JOCV枠UNVへ応募しました。応募時にちょうどUNDPサモアのUNVの募集があり、大洋州で協力隊としての経験があったこと、貧困削減と社会開発を専門としていたことから、UNDPサモアでUNVとして勤務する機会をいただきました。

サモアでのUNVとしての業務

フィールド視察の様子

フィールド視察の様子

大洋州の国連常駐調整官事務所の同僚との会議

大洋州の国連常駐調整官事務所の同僚との会議

私はUNVのCoordination Analystとして、UNDPサモアの国連常駐調整官事務所において2年間勤務しました。国連常駐調整官とは、UNDPの常駐代表を務めるだけでなく、数ある国連機関の常駐代表から構成されるUN Country Team (UNCT)のリーダーとして、「一つの国連」の促進のため、現地における国連システムの統括・調整を行っています。また国連事務総長の代理として、各国政府及び援助機関、市民社会などとの連携強化に取り組んでいます。

私が配属された国連常駐調整官サモア事務所は、サモア、クック諸島、ニウエ、トケラウの4つの国と地域において、18の国連機関による国連支援の調整を担っています。そのため、国連常駐調整官事務所での私の業務は広範囲に渡り、国連事務総長への年間報告書、UNCTや作業部会による月例会議の準備・資料や議事録の作成・決定事項の実施と報告、複数の国連機関により実施される共同プログラムの計画・実施・資金調達、国連広報、国連職員の安全確保、国連事務局などの現地活動の支援などに取り組みました。また国連常駐調整官の必要とする情報の収集や分析、文書の精査、報告書やスピーチの作成も重要な仕事でした。

2年目には、サモア政府の開発戦略や社会経済状況の分析、過去5年間の国連開発援助戦略(UNDAF)の最終評価を実施し、次の5年間の新たな国連開発援助戦略の策定に向けた課題と改善点の提案を行いました。国連開発援助戦略とは、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた国連の開発援助の枠組みであり、国連の開発プロジェクトはこの枠組みに従い、計画・実施されることになります。これは国連機関の間における支援分野の重複や競合の回避、関連性や効果、効率、インパクト、持続性の向上を目的としているためです。そのため、私は国連機関、政府省庁、援助機関、市民組織、研究機関、民間企業の代表者が参加した全国会議を企画・実施し、2018年から2022年の5年間のサモアにおける国連開発援助の重点分野の議論・特定に携わりました。

サモアでの経験を活かし、活躍の舞台をミャンマーに移して

このように幅広い業務を担当していたため、覚えなければならないことも多く、常に勉強の日々でした。さらに、政府高官や国連機関の常駐代表などと働く機会も多いため、仕事のプレッシャーや責任を感じる場面もたくさんありました。しかし、より多くの困難に挑戦させていただき、その分自分の経験や技術、知識を磨くことができたと思います。

そのため、UNDPサモアでのUNVの活動後も、国連機関における国際協力を通じて自身をさらに成長させたいと考え、外務省の平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に応募しました。そしてUNDPミャンマーの国連常駐調整官事務所で再びUNVとして勤務する機会をいただきました。協力隊として、JOCV枠UNVとして培った経験を生かして、今後も国際協力に貢献していければと思います。

これからUNVを目指す皆さんへ

国連機関で働くことを考えている方には、UNVは国連機関への第一歩として良い機会になると思います。UNVは「ボランティア」とは言え、プロフェッショナルとしての能力や成果を出すことが求められています。そのため、UNVは国連機関で求められるコンピテンシーの向上や国連のシステムを理解するにはとても良い経験になると思います。

個人的な考えですが、UNVとして働くにあたって、特定の専門性を磨くことも大切ですが、求められる業務を柔軟に幅広くこなすことも重要ではないかと思います。国際会議など国連には華やかなイメージがありますが、実際の業務の大部分は地味な作業です。そのため、私はどんなに地味な業務であっても、積極的に引き受け、地道な努力を一歩一歩続けることが大切だと思います。

・帰国隊員進路情報ページ