日本式金型で製造業の高度化に貢献~JICA×中部企業の海外展開vol.3

【写真】多田憲生さん株式会社岐阜多田精機 代表取締役社長
多田憲生さん

インドでJICAの民間連携事業を活用し日本式金型のエンジニア育成に取り組む株式会社岐阜多田精機。代表取締役社長の多田憲生さんにJICA事業活用のメリットをお伺いしました。

ローカルパートナーを探す

当社は金型専業メーカーです。設計から製作まで内製化し、耐久性や加工性の向上に努め、現在では大手自動車部品メーカーとの直取引が売り上げの多くを占めています。近年、製造拠点のグローバル化にともない、当社も金型の輸出が増えています。取引先から現地での金型供給の依頼もありましたが、文化の違いやリスクも考慮し拠点開設ではなく、一緒に金型を製作してくれるローカルパートナーを探していました。
得意としているのはコアユニット(性能差別化部)とベースユニット(一般部)で構成される「モジュール金型」。技術的に難しい部分を当社で、容易な部分を現地のパートナーに製造してもらうことで品質とコストの両立が可能になります。

教育現場には機械設備もない

【画像】インドは自動車製造の一大拠点になると予想され、取引先も進出しています。JICAの民間連携事業の「案件化調査」に応募し、2016年に採択されました。これまでにも何度かインドに足を運び、国がエンジニアの育成に力を注いでいることは知っていましたが、金型を製作する人材の水準は予想以上に低いことが調査で分かりました。教育現場には機械設備もなく、ドイツの金型の教科書を読み上げるだけといった状況でした。課題であったローカルパートナーの確保にもつながるため現地で金型の技術提供を決めました。
翌17年に「普及・実証・ビジネス化事業」に採択され、インドの大学でモジュール金型教員の育成プロジェクトを開始しました。JICAの支援で工作機械が導入され、実践的な教育ができるようになりました。当社が大学に教育カリキュラムを提供するなど、予想もしませんでした。資金援助や専門家のバックアップ、公的機関との関係づくりなどJICA事業活用のメリットは語りつくせません。

広がる人的ネットワーク

【画像】当社には今、現地で対応できない金型の相談や発注も増えています。教育カリキュラムを修了した人材は、インド各地で金型の指導者になります。人的ネットワークも広がり、ビジネスとしても手ごたえを感じています。インドの製造業が高度化すれば、日系企業支援にもつながるため日本式金型の普及にやりがいを感じています。
JICAをはじめ企業の海外進出への支援策は手厚くなってきています。国内需要の先行きを悩んでいるよりも、まずは海外に足を運ぶべきです。海外の現状を知ることで社業の見直しや今後競争力をどう高めていくかを考える大きな機会になると思います。 (文・写真/中部経済新聞社)

※本記事は、2020年3月19日付中部経済新聞に掲載された内容を再編集したものです。