地域別概況

東南アジア・大洋州


「自由で開かれたインド太平洋」を推進

東南アジア

ASEANの中心性と一体性を重視

東南アジア諸国連合(ASEAN)は、インド洋と太平洋の2つの海に面するこの地域の安定と繁栄を主導する存在であり、日本政府が提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の中核を成すものです。ASEAN諸国は高い経済成長を遂げている一方で、域内および各国内の格差の問題が存在し、社会経済インフラと人材育成の両面で膨大な開発ニーズがあります。

これらの課題を解決し、ASEANの中心性と一体性を高めることは、日本にとっても重要です。日本政府は、2019年にASEANが発表した「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」を支持し、その重点分野(海洋協力、連結性、SDGs、経済)での協力を推進することとしています。

コロナ禍に対しADBと協調融資も

JICAはこうした背景を踏まえ、以下を重点領域として協力を展開しています。

  1. ASEANの連結性強化
      (陸海空の回廊連結性プロジェクトを中心としたハード・ソフト両面での協力)
  2. 成長の歪みを克服する「質の高い成長」の推進
  3. 人間の安全保障の実現
     (保健医療、環境、防災分野などの協力)
  4. 脱炭素化などの気候変動対策
  5. 将来の国を支えるリーダー層や行政官の人材育成
  6. 地域が抱える脆弱性への対応
    (フィリピンのミンダナオやミャンマーのラカイン州などへの協力)

地理的にも近い日本と東南アジア各国のつながりは緊密であり、協力にあたっては民間企業、大学・研究機関、地方自治体などが有する優れた知見やノウハウを最大限活用しています。なお、東ティモールについてはASEAN加盟に向けた協力とともに、復興期から発展段階への移行を後押しする協力を行っています。

2020年度は、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行するなか、東南アジアの多くの国でも感染が徐々に拡大し、経済も深刻な打撃を受けました。JICAは保健医療分野の協力を強化するとともに、フィリピン、インドネシア、カンボジアにおいて、アジア開発銀行(ADB)との協調融資による財政支援を通じ、各国政府の新型コロナウイルス感染症への対応に協力しました。

インドネシア:円借款事業で建設が進むパティンバン港の一部施設が2020年12月に完成、自動車ターミナルの暫定運営を開始した。完成式典では、自動車運搬船に輸出用の完成車が積み込まれた

拡幅、バイパス整備などの道路改良を行う、
カンボジア国道5号線改修事業(円借款)の事業区間の総延長(2013‒2023年度予定)

東南アジア地域において育成した産業人材(2020年度)

大洋州

島嶼国ならではの課題や脆弱性

日本と大洋州島嶼国は、貴重な地球公共財である太平洋を共有し、歴史的にも深い関わりを持っています。大洋州地域の持続可能な発展を確保することは、日本と大洋州島嶼国の関係強化に資するだけでなく、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を支える地域環境の維持・促進にもつながります。

他方、大洋州島嶼国は狭小性、隔絶性、遠隔性、海洋性といった、島嶼国特有の課題・脆弱性を抱えています。さらに昨今では気候変動の負の影響を最も受けやすい地域の一つとして、世界的な注目が集まっています。また、コロナ禍の影響により、各国で保健システムの脆弱性が改めて認識され、協力ニーズが高まっています。

保健医療システム強化、
持続可能な海洋や気候変動対策などに重点

JICAはこうした状況に対応し、以下を重点領域として協力を進めています。

  1. 新型コロナウイルスの影響を踏まえた保健医療システム
    強化および経済回復支援
  2. 法の支配に基づく持続可能な海洋
    (海上法執行能力や漁業資源管理能力の強化、海洋プラスチックを含む廃棄物処理対策への協力など)
  3. 気候変動対策・防災
    ( 再生エネルギー導入促進、防災機関の能力強化など)
  4. 強靱かつ持続可能な成長基盤の強化
    (海洋インフラ、空港整備などの連結性強化、貿易・投資の促進、財政の強靱化など)
  5. 人的交流・人材育成
    (民間の人材を含めたリーダー候補人材の日本への留学、研修など)

フィジー:南太平洋大学で行われた「太平洋地域ハイブリッド発電システム導入プロジェクト」の研修の様子。太陽光パネルの角度や影による発電への影響を指導

第8回太平洋・島サミットの公約の下、JICAが3年間に実施した人材育成(2018-2020年度)

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