中東・欧州地域の人々は、継続する地域の混迷とコロナ禍という二重の危機にさらされています。
中東地域では、「アラブの春」から10年がたった今でも多くの国で政情不安が続いています。成功例といわれるチュニジアにおいても経済が低迷。紛争が発生したイエメン、シリア、リビアでは、政情・治安が不安定で、基礎的なインフラの破壊、教育機会の喪失など多くの問題に直面しています。その影響は周辺国にも及び、シリア難民の流入・固定化はヨルダン、レバノン、トルコにとって大きな社会・経済負担となっています。
一方、90年代に度重なる紛争を経験したバルカン諸国を筆頭とする欧州地域は、落ち着きを取り戻してきているものの、ウクライナやモルドバをはじめ、地政学的な不安定要因と脆弱性を抱えています。最近のトルコの米国や欧州、周辺国との対立も懸念材料です。このようななか、西バルカン諸国にEU加盟を目指した改革の機運が見られるのは歓迎すべき動きといえます。
以上に加えて、コロナ禍は、両地域がこれまで抱えていた課題を深刻化させました。高い水準にあった失業率がさらに悪化し貧困率が高まるなど、人々の生活環境に負の影響を与えています。デモなどにより、政府へ生活の改善を求める声も広がっています。
中東・欧州地域の平和と安定は、日本と国際社会の平和と繁栄に不可欠との理解の下、2020年度は従前からの地域的課題とコロナ禍による課題に対して、以下の4点を柱に、中長期的な視点も持って協力を進めました。
エジプト:エジプト・日本学校の様子。現地の小学校に対し、学級会、日直、掃除などの特別活動に代表される日本の全人的教育モデルの導入を支援している
日本式教育を行う「エジプト・日本学校」の数(2020年度末時点の累計)