開発効果を高めるパートナーシップ

民間企業との連携

民間企業のビジネスを通じた途上国の経済社会開発と中小企業の海外展開支援

JICAは、長年のODAの実施で得た開発途上国政府とのネットワークや信頼関係、開発途上国における事業のノウハウを最大限に生かしつつ、民間企業と積極的に連携し効率的かつ効果的に開発効果の発現を推進するため、下図のようなさまざまな支援メニューを提供しています。

海外投融資

民間企業による途上国の経済社会開発を支援

JICAの有償資金協力のうち、海外投融資はインフラ整備、貧困削減、気候変動対策などの分野で開発効果の高い事業を行う日本企業を含む全世界の民間企業などに対して、「融資」や「出資」の形態で支援を行うスキームです。民間金融機関や国際金融機関などとの連携や、JICAの他のODA事業との統合的運用により、開発効果の一層の発現や事業リスクの軽減などを目指しています。特に、国際機関との連携については米国国際開発金融公社に続いて、フランス開発庁、アフリカ開発銀行、欧州投資銀行と業務協力覚書を締結するなど、協調融資の促進に向けた連携を進めています。

2020年度はモロッコ「地方自治体インフラ支援事業」、インド「気候変動対策事業」、「COVID-19新興国中小零細企業支援ファンド」など、地場金融機関を通じた女性や低所得者、中小零細企業などの脆弱層支援を含め、計10案件を承諾しました。また、JICAが出資してアジア開発銀行に設置された「アジアインフラパートナーシップ信託基金」を通じて8案件を承諾しました。

協力準備調査(海外投融資)

海外投融資候補案件の形成を支援

本制度は、日本の民間活力を活用した開発途上国での事業の発掘・形成のためのスキームです。民間企業からの提案に基づく調査の実施を委託することで、海外投融資の活用を前提とした事業計画の策定を支援します。

本制度は、旧協力準備調査(PPPインフラ事業)を2020年4月に改称したものです。開発途上国政府の関与がない純粋な民間事業や非インフラ分野の案件を含めた幅広い事業を対象とすることを明確化し、また、提案企業にとって一層使いやすくなるよう制度を改善しました。2020年度は4件の提案を採択しています。

開発途上国での事業では、ソフト・ハード両面での投資環境の不備、採算性確保の難しさ、適切な官民の役割・リスク分担の認識不足(開発途上国政府の支援不足)など課題が多く見受けられます。JICAは民間企業の個別事業を支援するだけでなく、開発途上国で政策・制度の構築や実施能力の強化に協力するなど、事業化に向けた包括的な取り組みをさらに推進していきます。

中小企業・SDGsビジネス支援事業

途上国のSDGsに貢献するビジネスの形成・展開の検討を支援

日本が持つ技術・製品・ノウハウなどを自国の課題解決に活用したい開発途上国と、開発途上国市場への進出を望む民間企業の双方がWin-Winの関係となることを目指す「中小企業・SDGsビジネス支援事業」は、民間企業による提案型事業です。原則中小・中堅企業を対象とした「中小企業支援型」と、原則大企業を対象とした「SDGsビジネス支援型」の2つの区分を設けています。また、ビジネスの段階に応じて、目的別に3つの支援メニュー(基礎調査、案件化調査、普及・実証・ビジネス化事業)を提供しています。

JICAが民間連携事業を開始した2010年度から2020年度公示分まで、延べ1,333件(2020年度は116件)の提案を採択しました。2020年度第二回公示では新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた新たな取り組みとして、対象国へ渡航せずに現地人材などを活用して遠隔で調査を行う「遠隔実施型」を導入。26件の提案を採択しました。加えて、地域金融機関の人材が調査に参画する提案を優遇する「地域金融機関連携案件」を新設し、7件を採択しました。

なお、JICA事業を活用した企業の438案件を対象とした事後モニタリング調査では、約70%の事業についてJICA事業終了後も「ビジネス展開を継続している」と回答があり、このうち「新たな取引先・顧客の確保」「現地法人・現地支店や駐在員事務所の開設「」現地生産・現地でのサービス提供の開始」のいずれかで「実現済み」とされた事業は74%に上ります。例えば、下写真の株式会社オオスミ(本社:神奈川県横浜市)は、横浜市と技術協力の覚書を締結したベトナムのダナン市に2020年10月、現地法人を設立しています。

これら従来の提案型事業に加えて、日本の民間企業の製品・技術の活用可能性に関し、「COVID-19を受けた途上国における民間技術の活用可能性に係る情報収集・確認調査」を実施しています。地球環境や保健医療など4分野で民間企業の製品・技術を募集し、計40件を採択しました。

ベトナム:株式会社オオスミはJICA事業を活用して、企業や工場などの簡易省エネ診断などを実施。現在はダナン市を拠点に事業展 の拡大を目指している

他機関とも連携した支援で地方創生にも貢献

中小企業・SDGsビジネス支援事業による中小企業の海外ビジネス展開への支援は、地域の伝統技術や地元大学との共同開発技術が海外で活用されることなどを通じて、日本国内の地方創生や地域経済の活性化にも貢献しています。例えば、スリランカで紅茶成分分析計を用いた事業に取り組むカワサキ機工株式会社(本社:静岡県島田市)は、静岡県立大学や茶業関連企業とも連携して両国の茶産業活性化を目指しています。

外部関係機関との連携も強化しており、JICA事業を活用した民間企業27社に対し、中小企業基盤整備機構がハンズオン支援(専門家派遣)を提供するなど、連携覚書締結先機関との間で相互の強みを生かした連携が進んでいます。また、2020年度はオンラインセミナーの開催も増やし、「途上国課題発信セミナー」のほか、企業向けの海外展開支援セミナーを60回以上(参加者延べ3,000名以上)行いました。

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