JICAの挑戦

気候変動は今や世界のあらゆる国の将来の安定と繁栄、 人間の安全保障にとって脅威となっています。
JICA は開発途上国のパートナーとして、 「人間の安全保障」の確保と「質の高い成長」を目指すとともに、 各国の気候変動に関する課題解決に協力しています。

気候変動は高温、干ばつ、豪雨、高潮、海面上昇といった自然災害の増加など、さまざまな現象をもたらし、自然生態系や社会・経済を含む人類の生活基盤全体に負の影響を及ぼします。「質の高い成長」や「人間の安全保障」への脅威であり、世界全体で取り組むべき重要な課題です。

2015年12月、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、京都議定書に代わる2020年以降の先進国と開発途上国双方が参加する新たな気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」が採択され、世界は新たな目標に向けて動き出しました。

脱炭素社会への移行と気候変動に強靭な社会づくりを後押し

JICAは、開発途上国のパートナーとして、脱炭素社会への移行と気候変動に強靭な社会の構築を後押しする協力を推進し、持続的な開発をリードするとともに、これらの取り組みを通じて、パリ協定、仙台防災枠組※1、SDGsが掲げる目標の達成に向けて貢献しています。具体的には「パリ協定の実施促進」と、開発途上国が直面する開発課題の解決と気候変動対策を両立する「コベネフィット型気候変動対策」への取り組みを進めています。

パリ協定の実施促進を支援

パリ協定に規定された各国の温室効果ガス(GHG)削減計画である「自国が決定する貢献(NDC)」や長期低排出発展戦略の策定状況や各国の実情を踏まえ、開発途上国(中央・地方政府)に対し、気候変動対策の各種計画の策定や更新、実施、モニタリングなどに必要な個々の技術的な能力を強化し、気候変動を司る組織の気候変動の対応能力の向上を図ります。

モンゴルで2番目の自然エネルギープロジェクトとして民間事業者により実施されるツェツィー風力発電所に、欧州復興開発銀行と協調して海外投融資による支援を実施

コベネフィット型気候変動対策の拡充

開発途上国の現状に則して、各開発課題の解決(開発便益)を図ると同時に、気候変動対策(気候便益)にも資するコベネフィット(共便益)・アプローチを積極的に推し進めます。特に、電力・エネルギー、都市開発、運輸交通、森林保全をはじめとする自然環境保全、農業の各分野において、気候変動対策の質・量の両面の拡充を図ります。

ガバナンス、ファイナンス、透明性に留意

これらの取り組みを進めるにあたり、次の3点に留意して協力します。

1. 組織運営・体制における気候変動対策の強化

中期目標・中期計画、年度計画に気候変動対策の位置づけ・目標を明記し、実施状況のモニタリングを強化します。また、エネルギー、運輸・交通、都市開発、農業、防災、森林保全など、あらゆる事業の計画段階において、気候変動対策支援ツール(JICA Climate-FIT)などを活用しながら、気候変動の緩和策・適応策の視点を取り入れる気候変動対策を促進し、同対策の強化に努めます。

2. 多様なファイナンスの動員

開発途上国の持続可能な開発を推進するという責務の下、従来のODAだけでなく、気候変動に関連するさまざまな資金を動員することで、よりインパクトのある開発を追求していきます。例えば、緑の気候基金(GCF)※2などの外部資金活用の推進や、民間企業との連携を通じた民間資金動員型の案件形成を推進していきます。

3. 気候変動関連情報公開の推進

国内外のステークホルダーに対し、サステナビリティを推進する組織としての責務、またJICAの気候変動対策分野における貢献について、情報発信と公開を進めていきます。例えば、気候変動対策事業の協力金額、事業におけるGHG排出量などの情報の公開を推進します。

緑の気候基金(GCF)との初の連携事業承認

2021年3月にJICAが緑の気候基金(GCF)に申請した東ティモール「重点流域における森林減少抑制及び気候変動に対する地域レジリエンス強化のための住民主導型ランドスケープ管理プロジェクト」が、JICA提案事業として初めて承認されました。

同国では、森林劣化、気候変動による河川の増水や干ばつが顕在化し、地域住民の生活が脅かされています。この事業では、過去の協力で構築した信頼関係やネットワーク、ノウハウを活用し、4流域74村落(約4万8,000人)に対し、森林の減少抑制・再生によるGHG排出削減とともに、持続可能で気候変動の影響に対応した農業などを導入し、住民の生計向上を図ります。

苗木生産研修を受ける住民

※1 2015年3月に仙台市で開催された第3回国連防災世界会議で採択された2030年までの国際的な防災指針。
※2 2010年に設立された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の資金メカニズム運営機関。開発途上国においてGHG削減(緩和策)と気候変動の影響への対処(適応策)を支援しています。

気候変動対策に関する詳しい内容は、
JICAウェブサイト「気候変動対策」 をご覧ください。

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