開発効果を高めるパートナーシップ

大学との連携

JICA留学生事業、新たなステージへ

開発途上国の開発課題が高度化・複雑化するなか、国際協力においても、幅広く高度な知見を有する大学との連携は不可欠です。大学との連携について、JICAは国際協力に関する調査研究や開発途上国における技術協力プロジェクトへの大学の参画、また、開発途上国からの留学生受入といったさまざまなアプローチにより推進しています。

特に近年、JICAは留学生受入を拡充するため、大学との連携強化を進めています。日本で学んだ「JICA留学生」※が、母国でトップリーダーとして活躍し、ひいては日本と開発途上国の友好関係を中長期的に維持・強化することを目指し、2020年度は日本の89大学に修士や博士課程のJICA留学生を受け入れていただく体制を整えました。これらの大学との連携を強化・推進することを目的に、38の大学とは協定や覚書を締結しています。

2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、 JICA留学生の来日も遅延していました。しかし、政府との調整を経て、2020年秋以降は、JICA留学生1,211名の来日が認められ、うち計571名の来日が実現しました。JICAは、留学生の空港到着後より、法律および政府が定める健康観察を適切に行い、感染予防に努めています。

JICA開発大学院連携(JICA-DSP)

近代化の経験と開発協力の教訓を提供

JICA留学生に対し、欧米とは異なる日本の近代の開発経験と、戦後の途上国支援の実施国としての知見の両面を学ぶ機会を提供しているのが「JICA開発大学院連携プログラム(JICA-DSP)」です。具体的には、JICAが実施する「日本理解・地域理解プログラム」と受入大学が科目として実施する「各大学におけるプログラム」を通して、日本の知見・経験を学び、帰国後、自国の発展に生かすというサイクルを生み出しています。

日本は、自国の伝統とアイデンティティを損なうことなく、法に立脚し、自由で民主的、平和で繁栄した国家建設・近代化を実現した非西洋では最初の国です。同時に、近年目覚ましい経済社会発展を遂げているアジア諸国などへのODAを通じて、日本は多くの開発協力経験を有しています。JICA-DSPでは、日本の近代化の経験と開発協力の過程で蓄積した教訓を、開発途上国の未来と発展を支えるリーダーに提供しています。

JICA日本研究講座設立支援事業(JICAチェア)

JICA-DSPの海外展開

JICAは2020年度より、日本の開発経験を学ぶ機会を国外にも広げるため、開発途上国各国のトップクラスの大学などを対象に、開発経験の背景にある日本の歴史や文化を踏まえて学ぶ「日本研究」の講座設立を支援する、「JICA日本研究講座設立支援事業(JICAチェア)」を開始しました。

この事業は、①日本からの講師の派遣、JICAと放送大学学園が共同で制作したビデオ教材「日本の近代化を知る7章」の提供などを実施する「短期集中講義」事業と、②共同研究、研究者・教育者の日本への受入れなども実施する「日本研究講座設置」事業に分けられます。相手国の実施体制やニーズ、日本側のリソースなどを考慮して、適切なメニューを選択、あるいは組み合わせた事業を実施しています。

日本理解・地域理解プログラムの一環で、かすみがうら市歴史博物館(茨城県)を訪問する留学生たち。JICAは多くの研究領域で留学生を受け入れ、そのネットワークが両国の貴重な財産となっている。日本で学んだ開発途上国の人材が、母国で、知日派・親日派のトップリーダーとして活躍し、両国の友好関係の強化に貢献することが期待されている

ブラジル・サンパウロ大学の日本研究講座をモデルに

JICAチェアのモデルとなったのがブラジル・サンパウロ大学との協力です。JICAは2018年12月、ブラジルのサンパウロ大学と共同事業取極めを締結し、日本の開発および発展の経験を扱う「日本開発研究プログラム(フジタ・ニノミヤチェア)」を設置しました。このプログラムを通じて、同大学法学部と大学院に日本の近代化や開発経験について研究するための講座を新設。日本の法律の変遷、他国との比較など広範なテーマで講義やディスカッション、研究が行われています。また、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井物産株式会社など多くの賛同者からの協力を得ています。

2020年度には本講座において、日本の法律に関する集中講義(計10回)を、明治大学との共催で実施しました。今後、サンパウロ大学の若手研究者・学生の日本への招へいなども実施していきます。

ヨルダン大学と日本研究短期集中講義

2020年度は、ヨルダンのラーイヤ王女の後援を受け、ヨルダン大学でもJICAチェア(短期集中講義)を実施しました。講義では、北岡伸一JICA理事長、伊丹敬之国際大学学長などが講師として登壇し、「日本の近代化を知る7章」を基に多くの意見交換が行われました。ラーイヤ王女からは、日本が近代化の過程において、海外からの知見を組み込みつつ独自の価値観と文化を維持してきた点は、ヨルダンも参考にできるのでは、との発言がありました。

JICAは引き続きJICAチェアを推進し、開発途上国の将来を担うリーダーを育成し、知日派・親日派の拡大に貢献していきます。

※ここでいうJICA留学生とは、技術協力、無償資金協力「人材育成奨学計画(JDS)」、日系留学生奨学金事業などにより、日本の大学の学位課程に在籍する開発途上国の関係者を指します。

「JICA開発大学院連携・JICAチェア」に関する詳しい内容は、 JICAウェブサイトをご覧ください。

他のパートナーシップをみる

民間企業との連携

市民社会との連携

大学との連携

ソーシャルボンドとしてのJICA債