UNV経験レポート

中学生の頃から開発途上国の女性の支援に携わりたいと考えていた新津さんは、青年海外協力隊ではニジェールで村落開発普及員として活動しました。帰国後、JICA本部でのジェンダーと開発分野の専門嘱託職員を経て、2016年よりUNVとしてUNICEFインドネシア事務所にてジェンダーと教育の分野で活躍された経験を紹介いたします。

協力隊参加から始まった国際協力の道

青年海外協力隊では村落開発普及員として、ニジェールの地方都市で活動する中で産科フィスチュラという症状で苦しんでいる女性達の存在を知り、首都ニアメの複数の病院で初代の産科フィスチュラ対策隊員として活動を展開しました。患者さんたちと寝食を共にし、共に泣き、共に喜んだ日々でした。協力隊という草の根の活動では、女性達のニーズをより直接的に知ることでき、彼女達に直接届く=彼女達が喜ぶ、深みのある活動を行うことができました。(当時の活動の様子は、こちらをご覧ください。)

協力隊終了後は、より多くの女性達に裨益する活動を行う必要性を感じ、JICA本部でジェンダーと開発分野の専門嘱託職員として勤務しました。担当した人身取引対策プロジェクトでは多くの人身取引被害者の女性達に出会い、彼女達の壮絶な話を聞きました。このプロジェクトマネジメントの経験を通し、最も脆弱な女性を生涯にわたって支援していくという自身の使命を再認識しました。
そして、次のステージとして、これまで二国間援助で培った知見を生かし、国際機関で働くべく、UNVに応募することにしました。

UNVとしての業務

村でのフィールド調査の様子 (2016年12月)

村でのフィールド調査の様子 (2016年12月)

活動概要:UNICEFインドネシア事務所ではInclusive Education Officerとして教育分野についてジェンダーの観点から活動を行う他、ジェンダーフォーカルポイントの補佐業務や他部署に対しジェンダーの観点からのアドバイスを行いました

主な活動の一つとして、ジェンダーと開発の観点から不就学児童の要因に関するフィールド調査の企画立案・実施・分析、報告書の作成があります。同調査では質的調査法を採用し、自身はリーダーとして調査団員と共に村に泊まり込み、関係者との信頼関係構築・維持に努めました。結果的に児童婚、男子児童の児童労働の状況と文化背景等、統計では収集し得ない不就学児童にかかる多くの情報を収集することができました。この時、協力隊時代の経験が非常に役に立ちました。例えば、村で関係者とコミュニケーションを自然にとることができたのは協力隊時代に毎日村に行って村の方々と話をしていたからです。また、調査地はガタガタ道を数時間車で行った場所にあり、電気、上下水道の設備が十分になく、大量の蚊や、野犬がいたり、大雨に降られたりする山奥の村でした。しかしこれらの環境はまさしく協力隊で経験してきたような環境でしたので、外部環境に全く動じることなく、調査団をまとめ、調査自体に集中することができました。
その他の主な活動としては、事務所全スタッフのキャパシティ・ビルディングを目的として実施されたジェンダートレーニングの運営サポートを行いました。専門知識に基づき研修資料を作成する他、ロジ面での運営も支援しました。

困難:直前に勤務していたJICA本部での業務と比較すると、責任や裁量の範囲が非常に限られていたことが最初はもどかしかったです。

克服:しかし、責任や裁量の範囲が小さいことをポジティブにとらえるようにしました。担当業務をきちんとこなした上で、この事務所に対して何か貢献できることはないかと考えるようにシフトしていきました。協力隊の経験で学んだ「多様性を尊重する」という基本姿勢を常にもって、他部署の方とも積極的にコミュニケーションをとるように心がけました。そのようにして構築した良好な人間関係を基に、徐々に事務所内で自身の専門性(ジェンダーと開発)をアピールするようにしました。次第に自部署のみならず、他部署からもジェンダーの視点からのアドバイスを求められたり、仕事を頼まれたりするようになりました。自らの働きかけによって自身の業務の範囲を大きくすることに成功し、同事務所に対し付加価値を提供できたと思います。

UNVを終えたその後

外務省のJPO派遣制度によりコートジボワールのUNICEFにGender Program Officerとして派遣予定です。UNICEFコートジボワール事務所の中長期的計画や各プログラムに対し、ジェンダーの視点から助言を行います。同事務所の重点分野である女児のリプロダクティブヘルスや、女児の就学率の向上についてはこれまで取り組んできたことであり、経験を生かし貢献していきたいです。JPO任期中には災害等の緊急時のジェンダー主流化についても経験を積みたいと考えています。協力隊の経験と、UNVの経験があったからこそ、JPOのチャンスを獲得することができたのだと思っています。UNVの機会を与えて下さったJICAには今一度心からの感謝を申し上げます。

これからUNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

皆さんはあまり意識されていないかもしれませんが、実は協力隊の経験を通し、国際機関が必要とする多くの素質を身につけることができたと思います。例えば、相手のことを思いやる姿勢(“Respect for Diversity”)、フィールド感覚、厳しい環境を生き抜く根性とスキル、高いコミュニケーション能力、語学力、使命感等です。これらは国際機関のエントリーレベルにおいては大きな強みになると思います。UNVは、就職するのが難しいと言われている国際機関にアクセスするための貴重なエントリーポイントです。ぜひ協力隊経験者ということに自信をもってUNVに挑戦して下さい。

・帰国隊員進路情報ページ