UNV経験レポート

吉田 蒔絵さんは、青年海外協力隊員(平成26年度2次隊、コミュニティ開発)として南米ボリビアで活動されました。帰国後、海外留学を経て、協力隊で得たスペイン語力やフィールド経験、大学院で学んだ専門性を深めたいと考え、在外公館やJICA、開発コンサルタントなど、幅広い国際協力業界の選択肢の中からUNV応募を選択され、見事合格。2018年よりUNDPエルサルバドルにてSustainable Development Specialistとして活動されました。以下、そのご経験を紹介いたします。

JOCV、留学そしてUNVへ

学生時代より、大学卒業後は世界の舞台で社会の役に立つ仕事がしたい、と漠然と考えていました。新卒で飛び込んだ南米ボリビアでの協力隊経験は、参加前には漠然としていた国際協力業界でのキャリアを積みたいという意思を強くさせました。そしてさらに専門性を深めるためJOCV帰国後は、英国サセックス大学開発学研究所で「開発・気候変動・政策」を専攻しました。

UNVは大学院修了後のキャリアのひとつとして考えていましたが、在外公館やJICA、開発コンサルタントなど、幅広い国際協力業界の中からUNV応募を決めたのは、UNVが自分の専門分野での現場経験が積めること、また「国連」で働く機会を得られる唯一の選択肢だと思ったからです。まさに協力隊で習得したスペイン語力やフィールド経験、さらには大学院で学んだ気候変動の知識が生かせる案件で、専門性を深め今後のステップアップになると思い、エルサルバドルでのUNV応募を決めました。

UNVとしての業務

植林キャンペーン「Plantatón」※写真1

植林キャンペーン「Plantatón」※写真1

新環境・天然資源省大臣らとプロジェクトサイト訪問「エル・ホコタル湖」※写真2

新環境・天然資源省大臣らとプロジェクトサイト訪問「エル・ホコタル湖」※写真2

湿地保全プロジェクト「エル・ホコタル湖」※写真3

湿地保全プロジェクト「エル・ホコタル湖」※写真3

2018年12月から約1年間、UNDPエルサルバドル事務所の持続可能な開発とレジリエンスチーム(Desarrollo Sostenible y Resiliencia)にて、主に環境、気候変動分野におけるプロジェクト運営・監理サポート、その他出版物のドラフト作成、他援助機関、国連機関との調整サポート業務を行いました。

環境・天然資源省や農牧省をはじめとするエルサルバドル国の中央政府が主なカウンターパート機関であったため、専門性に加え、任国の政治事情などを理解することに始めは苦労しました。外国人として分からないことがあって当然と考え、日頃からナショナルスタッフとのコミュニケーションを大切にすることで理解に努めました。またスーパーバイザーとのこまめなやりとりは元より、些細なことでも気兼ねなく聞ける同僚や、外国人として暮らすからこそ共有できる悩みを相談できる友人も支えになりました。

また業務を通じ、国際機関、カントリーオフィスならではの仕事のダイナミックさを感じることができました。例えば、エルサルバドルにおけるプラスチックの責任ある生産と消費に関する国家戦略案のドラフト作成や、水に関するポリシーペーパーのドラフト作成を通して国の法律改正の過程に携わったり、大臣レベルと会議やイベントを共にすることも多く、国レベルでの政策決定の過程に触れることができ、UNDP現地事務所のネットワーク、政策決定への影響力を強く感じることができた貴重な機会となりました。

UNVを終えたその後

UNV参加前より、帰国後は外務省JPO派遣制度を利用し国際機関でのキャリアアップを目指そうと考えていました。そのため、UNV派遣中より外務省JPO派遣制度へ応募しており、無事に国連食糧農業機関(FAO)気候変動生物多様性土地水資源局への派遣が決まりました。UNV時代とは派遣先機関は違うものの、業務内容は共に気候変動政策に関わるものであり、協力隊、そしてUNVの経験が十分に生かせるポストであると思っています。

これからUNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

UNV応募以前は、「ボランティア」という名称から本当にキャリアステップとなるのだろうかと躊躇していた部分もありました。しかし実際に派遣を終えみて、任される業務や身に付けられる専門性は、今後のキャリア形成の礎になるとても貴重な機会になったと感じています。実際に、UNVを国連でのキャリアスタートとし国連職員として活躍している方も多くいるので、将来国連で働くことに興味を持っている方にはぜひ挑戦してもらいたいと思います。

  • ※写真1: 植林キャンペーン「Plantatón」
    エコシステムの再生・修復を目的とした植林キャンペーン「Plantatón」に参加。
    エルサルバドル環境月間の一環で、2019年はエルサルバドル国全土で5百万本を植林。

    「Plantatón」を主催している環境持続可能性および脆弱性に関する全国評議会 (CONASAV)は、UNDPエルサルバドル事務所が技術事務局としてサポートしている。

    参考記事:
    UNDPエルサルバドル事務所HP (2019/06/19)
    Plantatón 2019: reforestar para lograr ecosistemas sostenibles (2019/06/19)
    https://www.sv.undp.org/content/el_salvador/es/home/presscenter/articles/2019/06/plantaton-2019--reforestar-para-lograr-ecosistemas-sostenibles.html
  • ※写真2: 新環境・天然資源省大臣らとプロジェクトサイト訪問「エル・ホコタル湖」

    2019年6月に就任したエルサルバドル国 新しい環境・天然資源省大臣、局長らと共に、湿地保全プロジェクトの視察を行った。
    エルサルバドルには、現在ラムサール条約に登録された湿地が7ヶ所あり、UNDPエルサルバドルはそれらの湿地保全、持続可能な管理を目的としたプロジェクトを実施中である。
    JICAも「エル・ホコタル湖」にて湿地管理プロジェクト実施中のため、UNDPエルサルバドル事務所常駐代表、JICAエルサルバドル事務所長代理も揃っての視察となった。

    参考記事:
    エルサルバドル国 新環境・天然資源省大臣によるプロジェクトサイト訪問 JICA HP (2019/9/24)
    https://www.jica.go.jp/project/elsalvador/006/news/20190924.html
    UNDPエルサルバドル事務所HP
    https://www.sv.undp.org/content/el_salvador/es/home/presscenter/articles/2019/08/planes-para-potenciar-negocios-sostenibles-en-las-areas-naturale.html
  • 写真3: 湿地保全プロジェクト「エル・ホコタル湖」
    上記参照

・帰国隊員進路情報ページ