人材育成や開発教育で大きな成果、埼玉県との連携で——上田知事と協力の強化を確認、JICA北岡理事長

2016年6月13日

連携の強化で一致した上田知事(右)と北岡理事長(左)

4月12日、北岡伸一理事長は、埼玉県の上田清司知事と会談した。JICAと埼玉県は、2013年11月26日に包括連携協定を締結し、国際協力や国際教育など広い分野で協力している。

「埼玉・アジアプロジェクト」で独自の協力

フィリピン人学生のセブでの日本企業の工場視察。「ものづくり意識」の高揚を目的にしている

草の根技術協力事業の一環として来日したフィリピン人研修員と知事が面談

埼玉県では、「埼玉・アジアプロジェクト」に2012年から取り組んでいる。同プロジェクトは、成長するアジアの中にあって新しい市場の創造を目的に、「埼玉県だからこそできること」を見つけ出し、産・官・学・NGOがネットワークを構築、アジア諸国が抱える問題解決に貢献することを目指している。

JICAと埼玉県の協力で特徴的なのは、JICAの「草の根技術協力(地域経済活性化特別枠・地域活性化特別枠)」の枠組みを活用していること。この枠組みのもと、埼玉県内の企業や技術者、専門家の力が開発途上国で生かされている。

中でも、2013年4月から2016年3月にかけてフィリピンで実施した「埼玉・セブものづくり人材育成事業」は、埼玉県の協力により現地の大学で育成した20人近くがセブ島に進出している日系企業に就職するなど、着実に成果を上げている。この成果を受け、今年4月からは3年間の予定で第2期がスタートしており、さらなる「ものづくり人材」の育成が期待されている。

国際理解・開発教育で強力タッグ

埼玉県教育長とJICA東京佐々木所長による自治体連携ボランティア覚書締結

もう一つの特徴的な取り組みは、「国際理解教育」「開発教育」の分野での協力。JICAと県の連携協定に続き、2014年1月に埼玉県教育委員会との間で連携覚書を締結、さらに今年3月には向こう3年間の自治体連携ボランティアについての協力でも合意した。これにより毎年3人の理科教諭を青年海外協力隊員として、約1ヵ月間ずつ南アフリカ科学技術省へ派遣することが決まっている。

学校への協力隊経験者による出前講座

教師海外研修参加者による所属校でのアクティブラーニング講義

教育分野での協力では、県立学校の教諭が、自治体教育関係者との連絡調整や開発教育(注1)について助言を行う「学校教育アドバイザー」としてJICAに派遣されている。すでに7人がJICAでのアドバイザー業務を終えており、現在は、8人目となる教諭の研修が始まっている。

開発教育のための教材に関しては、「国際理解教育実践資料集−世界を知ろう!考えよう!−」の制作にあたり埼玉県教育局が指導・監修としてJICAを支援。作成された教材は、全国の教育機関などに1万3,000部が配布されている。このほか、県立総合教育センターとの連携では、JICA地球ひろば(注2)の展示物のセンターでの展示、また、現職教諭に対するJICAによる講義など、教育人材への開発教育を進めている。

JICA、埼玉県、開発途上国の3者にとって貴重な成果が上がっている連携。今後もさらに強化し、埼玉県の活性化と開発途上国の発展につなげていきたい。

(注1)世界が直面するさまざまな開発課題の様相およびわが国との関係を知り、それを自らの問題としてとらえ、主体的に考える力、また、その根本的解決に向けた取組に参加する力を養うことを目的とする。
(注2)2006年4月に「市民参加による国際協力の拠点」として設立。2016年5月には全国から訪れる修学旅行生やNGO・市民団体の施設利用者が累計140万人に達している。