北岡理事長がセネガル、ナイジェリアを訪問:2016年8月のTICAD VIに向けて、更なるパートナーシップ強化に合意

2016年6月24日

北岡伸一JICA理事長は、6月12日から6月17日にかけて西アフリカのセネガル、ナイジェリアの2か国を訪問しました。

セネガルは、アフリカ大陸最西端にある安定した民主主義国家で、JICAの西アフリカやサヘル広域支援の拠点となっています。また、ナイジェリアはアフリカ最大の人口、経済規模を誇るアフリカの大国です。

両国滞在中、北岡理事長は、セネガル共和国マッキー・サル大統領やナイジェリア連邦共和国イェミ・オシンバジョ副大統領、同ウドマ・ウド・ウドマ予算・国家計画大臣など要人との面談を行うとともに、両国でJICAの協力事業を視察しました。

今回の訪問は、本年8月アフリカ大陸での初の開催となる第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)に向け、アフリカの指導者たちからの日本への期待と信頼を改めて確認する機会となりました。また、JICAからは、アフリカへの協力にあたっては、オーナーシップとパートナーシップに基づいた双方間の対話を通じて、平和と安定を基盤とした経済成長を促すととともに、成長の恩恵から取り残されないよう最も弱い人に配慮した支援が必要との一貫したメッセージを発信しました。

1.セネガル訪問

会談を行う北岡理事長(中央)とセネガル共和国サル大統領(右)

北岡理事長は、6月14日(火)に、セネガル共和国マッキー・サル大統領と会談しました。日本が、同国の国家開発政策「セネガル新興計画(PSE)」に基づき、ニーズに沿った協力事業を展開していることや、これまでの同国への青年海外協力隊派遣数が世界最大規模であることに対し、大統領から感謝の意が表明されました。理事長からは、TICAD VIに向け長きにわたる両国のパートナーシップの継続への期待とともに、「開発」と「平和と安定」双方の重要性について改めて強調しました。

セネガル滞在中、首都ダカール市内ではセネガルでの長年の協力の成果である「セネガル日本職業訓練センター(CFPT)」、「ダカール中央卸売魚市場」を訪問するとともに、ティエス州タイバ・ンジャイ村を訪問し、無償資金協力で建設された給水施設、技術協力で能力強化した水管理組合の活動を視察しました。

SDGsの目標でもあるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注1)達成への取り組みとして、ヨンバル・ファジ保健共済組合にて健康保険制度の普及に向けた地道な活動現場を視察し、UHC達成に向けた現場の生の声を聞きました。また、技術協力「母子保健サービス向上プロジェクト(フェーズ2)」の現場であるガスパール・カマラ保健センターを視察しました。5S活動(注2)にも取り組む現場のスタッフや日本人専門家から、「人間的お産」をコンセプトに妊産婦を中心としたケアの実践を目指す活動について説明を受け、セネガルの多様なUHC支援の現状を把握すると共に、UHC達成のために保健サービスの質・量の拡充も不可欠である点について理解を深めました。

ティエス州タイバ・ンジャイ給水施設を訪問する北岡理事長(中央)と水管理組合に関わる地域住民

給水、保健分野の協力現場では、コミュニティの運営委員会が重要な役割を果たしており、セネガルのコミュニティの結束力の強さや課題に対して主体的に対応していく行動力が、同国が直面する貧困等の課題を解決する上で非常に重要であるとの印象を受けました。

この他、日本語教師として派遣されている青年海外協力隊員とその生徒、また産業人材育成プログラム「ABEイニシアティブ」(注3)を通じ今年日本へ留学予定の学生とも交流し、激励の言葉をかけました。

今回の訪問を通じ、セネガルが他者の尊重、チームワークといった日本と共通したアプローチで開発を進めていること、また、保健・教育・農業/水産・インフラといった日本の得意分野とセネガルのニーズが合致していることで、両国の協働による開発効果が上がっていることを確認しました。

(注1)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること。

(注2)5S
「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の各ステップの頭文字をとって名付けた標語。

(注3)ABEイニシアティブ
「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(African Business Education Initiative for the Youth、以下、ABEイニシアティブ)は、5年間で1000人のアフリカの若者に対し、日本の大学や大学院での教育に加え、日本企業でのインターンシップの機会を提供するもの。

2.ナイジェリア訪問

オシンバジョ副大統領(中央)と面談を行った北岡理事長(左)

首都アブジャにあるIDPキャンプを視察する北岡理事長

北岡理事長は、6月16日に、オシンバジョ副大統領との会談を行いました。北岡理事長はボコ・ハラムによって発生した国内避難民(IDP)のキャンプの一つを視察したことに触れ、子ども達が笑顔で、キャンプ内の雰囲気も明るい印象を持ったと述べました。オシンバジョ副大統領は、人々の生計が向上せず、貧困の状態が続くと、過激主義に傾倒する恐れがあり、ボコ・ハラムとの戦闘の影響を受けた孤児を安定した環境で育てていくことが重要と述べました。

オシンバジョ副大統領やウドマ予算・国家計画大臣、イサ・ドゥツェ財務次官との面談では、TICAD VIに向け、両国間の協力関係を更に強化していくことで合意しました。

北岡理事長は、ナイジェリア滞在中にJICAの協力事業を視察しました。技術協力「連邦首都区無収水削減プロジェクト」の現場では、日本の有する効率的な無収水対策の技術を活かし、ナイジェリアの水道公社職員に漏水探査などの技術指導が行われている様子を視察しました。

無償資金協力の現場で太陽光パネルの据付状況を視察中、現地メディアからインタビューを受ける北岡理事長

最終日の6月17日には、無償資金協力「太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画」に関し、首都アブジャ近郊のウスマダム浄水場にて太陽光発電設備の設置状況を視察しました。日本の太陽光発電技術が、浄水場の運転に必要な電力料金を大幅に削減するとともに、ナイジェリア政府の進める再生可能エネルギーの推進に貢献していることを確認しました。