地域版コミュニティ主体の漁業管理(CBFM)実施ガイドライン策定のための地域セミナー開催

2023年2月17日

長島 聡(豊かな前浜専門家(副総括/水産普及1))

JICAは、2007年から南太平洋のバヌアツにおいて「豊かな前浜プロジェクト」と称されるコミュニティ主体の漁業管理プロジェクトを実施しており、コミュニティの漁業管理の対する動機づけを引き出すアプローチを開発しました。現在のフェーズ3(2017~)では本プロジェクトのアプローチをバヌアツ国内及び周辺のメラネシア諸国へ普及する活動に取り組んでいたことを、2019年11月の記事でも記載しました。

このアプローチの普及を目的として、2020年4月初旬には南太平洋の国々(サモア、トンガ、フィジー、ソロモン諸島、パプアニューギニア)の沿岸漁業管理に関わる職員をバヌアツに招待し、地域版CBFM実施ガイドライン策定のための地域セミナー開催をするべく準備をすすめておりました。しかし、2020年初旬から世界的に流行したコロナ禍の影響で、開催まであと2週間まで迫った2020年3月に、バヌアツに滞在していた日本人専門家およびボランティアは日本に緊急帰国を余儀なくされ、この地域セミナーの開催を急遽中断せざるを得なくなったのです。あれから約2年のプロジェクトの中断と再度の準備期間を経て、2023年2月1日から2月4日に、ついに約3年越しで本地域セミナーの開催が実現しました。

今回のセミナー開催に際して、バヌアツに本部があるメラネシア諸国を統括する政府間組織メラネシアン・スピアヘッド・グループ(MSG)と、南太平洋諸国を統括する地域協力機構の太平洋共同体(SPC)と連携する話が進み、これらの機関と共催という形となりました。また、MSGの予算支援により、パプアニューギニアから3人の参加者が追加されました。セミナー初日は、MSGの事務総長による開会のスピーチ、SPCによるCBFMのスケールアップ戦略についてのプレゼンテーション、各参加国のCBFMへの取り組みに関するプレゼンテーションなどが行われました。この模様については、バヌアツの新聞であるバヌアツデイリーポストにも掲載されました。バヌアツデイリーポストの記事のリンクは以下の通りです。

2日目は、フィールドトリップでパイロットサイトの一つであるエマエ島に訪問を予定していましたが、訪問前日に同島近隣にある海底火山(東エピ海底火山)噴火があったことで、中止せざるを得ませんでした。前週に5日間もエマエ島を訪問して準備していた身としては大変残念ですし、それ以上にこのフィールドトリップの受け入れを快く引き受けてくれ、準備を進めてくれていたエマエ島のコミュニティには大変申し訳ない気持ちで一杯です。代替案としてエファテ島のマンガリリウ村を訪問してもらい、プロジェクトが建設を支援したコミュニティハッチェリーや過去のプロジェクトの活動を見てもらいました。トンガ水産局の代表者は2007年にトンガからバヌアツに移植した大ジャコから生まれた第二世代の幼貝を感慨深く眺め、域内協力の重要性を実感しているようでした。
3日目と4日目には、バヌアツ版CBFM実施ガイドラインとツール集を紹介したうえで、参加国で行われている先進的な取り組みや事例について活発な議論が行われました。閉会の挨拶には、休日にもかかわらずMSGの副事務総長が来てスピーチをしてくださいました。最後はバヌアツの伝統的な飲み物であるカバで締め、4日間の充実したプログラムが無事に終了しました。
今回の地域セミナーでの話し合いの内容をもとに地域版のCBFMガイドラインの策定に向けて活動を継続しますが、今回の地域セミナーがきっかけとなり、地域内での連携が活発になってくれればと願っています。

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カウンターパートによるバヌアツのCBFMの現状に関するプレゼンテーション

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エファテ島マンガリリウのコミュニティハッチェリーにてフェーズ1でトンガからバヌアツに移植した大ジャコの第二世代と記念写真を撮るトンガからの参加者

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参加国とのCBFM実施ガイドラインに関する議論