共有する価値観のさらなる深化を目指して
中南米・カリブ地域は、人口約6.5億人※1、GDP4.7兆ドル超※2(ASEANの約1.9倍※3)を有し、アマゾン地域に象徴される豊富な自然や世界的な農業生産拠点として重要な地域です。自由、民主主義といった普遍的価値を共有し、世界最大の日系社会が存在する同地域は、日本と共に課題に取り組むパートナーです。
地域全体の所得水準は比較的高い一方、域内33カ国間や各国内の格差は大きく、2019年に発生したベネズエラ避難民や、中米北部の不法移民問題といった課題も抱えています。新型コロナウイルスやウクライナ情勢など、負の社会経済インパクトによりこうした課題がさらに深刻化し、政治にも影響が及んでおり、各国の抱える問題は複雑化しています。
この地域でのJICAの協力の重点は、経済発展のためのインフラ整備、防災・気候変動対策、都市環境の改善や格差是正です。加えて、「JICA世界保健医療イニシアティブ」に基づくコロナ対策と、コロナ禍後のBuildBack Better(より良い復興)を目指した協力にも努めています。
2021年度は、社会経済の回復のための財政支援円借款や海外投融資、コロナ対策関連の技術協力や無償資金協力、日系団体を通じた日系人と周辺住民への支援などを行いました。
また、コロナ禍後も見据えた事業を展開。コロナ禍の影響分析を各国で実施し、新たな課題の特定とDX分野の実証プロジェクトによる解決策を試行しました。さらに、米州開発銀行(IDB)と連携し、革新的アイデアを持つ日本のスタートアップ企業を発掘、同地域での展開を支援する仕組み(TSUBASA)を立ち上げました。
加えて、世界銀行や中米統合機構(SICA)、カリブ共同体(CARICOM)といった域内の開発パートナーと共に、防災・流通・環境・ジェンダーなど地域の共通課題への取り組みを強化しています。水素をはじめとした再生可能エネルギー分野における調査、JICAチェアや留学生事業を活用した、各国の将来を担うリーダー人材の育成も行いました。
※1、2 World Bank Group, DataBank Microdata Data Catalog (2020)国際協力機構 年次報告書 2022