strategy

2022年度の事業展開の方向性


JICAの挑戦 ━
2022年度事業の6つの柱

世界は今、国際秩序の根幹の動揺や、新型コロナウイルス感染症、気候変動などの地球規模課題といった複合的危機に直面しています。JICAは、人間の安全保障と質の高い成長をミッションとし、開発途上国の創造的復興とSDGs達成に力強く取り組みます。その際、DXや多様なパートナーとの連携を推進し、開発効果の最大化を追求します。

1 「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた事業展開

国際秩序の根幹を揺るがすような政変や紛争が発生している今日において、自由・民主主義・法の支配・海洋の自由といった普遍的価値を守ることが一層重要になっています。

JICAは、各国の歴史や文化、発展状況などを踏まえて柔軟に定義される普遍的価値に基づき、日本政府が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、インド太平洋地域のみならず、日本と世界の平和と繁栄に貢献します。その際、開発途上国の主体性を重んじ、JICA事業に関わるすべての関係者の信頼を醸成しながら、日本の強みを生かした開発協力を推進します。

2 新型コロナウイルス感染拡大への対応と人間の安全保障の実現に向けた事業展開

新型コロナウイルス感染症の社会への影響が長期化するなか、医療体制が脆弱な開発途上国への支援や、将来の新たな感染症への対策が、世界共通の課題となっています。JICAは「JICA世界保健医療イニシアティブ」を推進し、すべての人々が、いつでも必要な保健医療サービスを経済的困難なく受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の達成を目指します。また、特に負の影響を受けやすい脆弱層に対し、水・衛生、食・栄養などの改善に資する協力を強化します。

これらの取り組みを通じて、開発途上国のより強靭な経済の構築に貢献し、誰もが尊厳をもって生きられる社会の実現を目指します。

3 気候変動・地球環境への取り組みの強化

国際公共財としての地球環境が一段と悪化しており、開発途上国はその影響に対して特に脆弱です。人々の暮らしと国の発展が脅かされているなか、開発途上国は、開発と気候変動対策とを同時に進めるという難しい立場に置かれています。

JICAは、開発途上国のパートナーとして、人間の安全保障の確保と質の高い成長を目指しつつ、各国の気候変動対策に協力していきます。例えば、開発途上国の立場に寄り添いながら、各国の実情に合わせたエネルギー転換・公共交通整備といった緩和策への協力や、インフラ・防災・水資源・農業分野などでの適応策への協力を拡充します。その際、近年のESG投資への関心の高まりを背景とした民間資金の動員や、新しい技術の活用を積極的に促進します。

4 日本国内の多文化共生・地域経済活性化に資する取り組みの強化

日本政府が外国人材の受入れ・共生社会の構築を推進するなか、JICAは、日本国内の多文化共生や地域経済活性化のための取り組みを強化します。

その取り組みの一つとして、外国人材の適正な受入れに向けて、来日前・来日中・帰国後を通じた外国人材受入環境の整備促進や、多文化共生社会の構築を支援します。その際、JICAの人材育成事業の経験や、JICA海外協力隊経験者といった人的資源など、JICAが長年かけて培った国内外のネットワークを最大限活用します。加えて、日本の民間企業との連携・共創を通じて、開発途上国の健全な発展と、豊かで持続的な日本社会の実現に貢献します。

5 ジェンダー平等の推進・多様性の尊重

ジェンダー平等は、人権と人間の安全保障の概念に結びついた普遍的な価値であり、日本と開発途上国を含む各国が連携を強化して取り組むべき課題です。

JICAは、人間の安全保障の実現に向けて、あらゆる分野・課題の協力において、ジェンダーの視点を含む多様性の尊重を重視した質の高い開発協力事業を展開します。また、国際公約や日本政府の行動計画などへの貢献を通じて、ジェンダー平等を含む多様性尊重に向けた、JICAの取り組みを広く世界に発信します。

6 新しい時代のニーズに応える事業の構築・実践

新型コロナウイルス感染症パンデミック後の開発途上国において、支援のニーズは変化を続けています。

JICAは、情報の活用やデジタル技術の導入によって、あらゆる事業でDXの実現可能性を追求し、「デジタルで最先端を行くJICA」を目指します。また、国内外の人材との連携を強化し、開発途上国の課題解決に有益な科学技術を事業に導入・活用します。さらに、資金動員を含む多様なパートナーとの連携の拡大や、「JICAグローバル・アジェンダ」の推進、海外投融資や民間投資の促進を通じて、事業の効率化やインパクトの最大化を図ります。

国際協力機構 年次報告書 2022