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partnership

民間企業との連携


民間ビジネスを通じた
経済社会開発と企業の海外展開支援

JICAは、長年のODAの実施で得た開発途上国政府とのネットワークや信頼関係、開発途上国における事業のノウハウを最大限に生かしつつ、民間企業と積極的に連携し効率的かつ効果的に開発効果の発現を推進するため、さまざまな支援メニューを提供しています。

海外投融資

民間企業による途上国の経済社会開発を支援

JICAの有償資金協力のうち、海外投融資はインフラ整備、貧困削減、気候変動対策などの分野で開発効果の高い事業を行う日本企業を含む全世界の民間企業などに対して、「融資」や「出資」の形態で支援を行うスキームです。

民間金融機関や国際金融機関などとの連携や、JICAの他の事業との統合的運用により、開発効果の一層の発現や事業リスクの軽減などを目指しています。特に、国際機関との連携については米国国際開発金融公社、フランス開発庁、アフリカ開発銀行、欧州投資銀行と業務協力覚書を締結するなど、協調融資の促進に向けた連携を進めています。

2021年度はブラジル「保健医療セクター支援事業」、アフリカ地域向け「COVID-19対応支援事業」など、コロナ禍の影響を踏まえた保健医療体制の強化事業や、ベトナム「クアンチ省陸上風力発電事業」、インド「DX新興企業成⾧支援投資事業」など、脱炭素やDX、スタートアップ支援といった先進的かつ重要なアジェンダへの対応を含め、計13案件を承諾しました。

協力準備調査(海外投融資)

海外投融資候補案件の形成を支援

本制度は、日本の民間活力を活用した開発途上国での事業の発掘・形成のためのスキームです。民間企業からの提案に基づき調査を委託することで、海外投融資の活用を前提とした事業計画の策定を支援します。2021年度は2件の提案を採択しています。

開発途上国での事業では、ソフト・ハード両面での投資環境の不備、採算性確保の難しさ、適切な官民の役割・リスク分担の認識不足(開発途上国政府の支援不足)など課題が多く見受けられます。JICAは民間企業の個別事業を支援するだけでなく、開発途上国で政策・制度の構築や実施能力の強化に協力するなど、事業化に向けた包括的な取り組みをさらに推進していきます。

中小企業・SDGsビジネス支援事業

途上国のSDGs達成に貢献するビジネスの形成・展開の検討を支援

日本が持つ技術・製品・ノウハウなどを自国の課題解決に活用したい開発途上国と、開発途上国市場への進出を望む日本の民間企業の双方がWin-Winの関係となることを目指す「中小企業・SDGsビジネス支援事業」は、民間企業による提案型事業です。「中小企業支援型」と「SDGsビジネス支援型」の2つの区分を設け、ビジネスの段階に応じて、目的別に3つの支援メニュー(基礎調査、案件化調査、普及・実証・ビジネス化事業)を提供してきました。

支援メニューと事業化への流れ
2022年度に支援メニューを再編

近年、開発途上国において開発における民間資金の動員や、ビジネスの強みを生かした開発課題解決への期待はさらに大きくなっています。また、ビジネス界でもSDGs・ESGを経営に取り込む動きや、インパクト投資の流れが加速化しており、ビジネスと開発課題解決に向けた取り組みの親和性はますます高まっています。

これらを背景に、これまで以上に本事業を民間企業に活用してもらい、ビジネスを通じた開発課題解決の成功例を拡大していくため、2022年度に本事業の支援メニューを「ニーズ確認調査」、「ビジネス化実証事業」、「普及・実証・ビジネス化事業」に再編する試行的な制度改編を行います。

民間製品・技術の活用可能性調査も実施

JICAは、民間連携事業を開始した2010年度から2021年度公示分まで、延べ1,389件(2021年度は56件)の提案を採択しました。

例えば、中和機工株式会社(東京都)は、JICA事業を通じて、モロッコの病院へ黒煙が発生しない医療用焼却炉を導入しました。さらに、バングラデシュ、マダガスカルなどへのビジネス展開によって、コロナ禍で増加する医療用廃棄物の適正な処理に貢献しています。

2021年度公示では新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、対象国へ渡航せずに現地人材などを活用して遠隔で調査を行う「遠隔実施型」の募集を行い、11件の提案を採択しました。また、地域活性化のために、地方銀行などの地域金融機関の人材が調査に参画する提案を優遇する「地域金融機関連携案件」を募集し、22件を採択しました。

これら従来の民間企業が提案する事業に加えて、JICAは日本の民間企業の製品・技術の活用可能性を探るため、「途上国ニーズと民間技術マッチングに係る情報収集・確認調査」を実施しています。この調査では、開発途上国で重要性が高まっている低炭素社会の実現、行政・金融・通信サービスのデジタル化など4分野で、現地の課題解決に資する民間企業のイノベーティブな製品・技術・サービスを募集し、計30件を採択しました。

モロッコ:中和機工株式会社はJICAの支援メニューを活用し、アフリカへの事業の拡大を目指している。写真は、モロッコの病院が導入した医療廃棄物用焼却炉の操作研修の様子[写真:株式会社アースアンドヒューマン] ヘッダー写真
ベトナム:アジア開発銀行、豪州輸出金融公社と協調して、海外投融資により資金協力を行っている、クアンチ省陸上風力発電事業。出資者は、日本の再生可能エネルギー発電事業者である株式会社レノバと地場の電気事業者であるPC1 Group Joint Stock Company。2021年10月に完工、発電を開始した[写真:株式会社レノバ]

国際協力機構 年次報告書 2022