教えて!外務省 知っておきたい国際協力5)

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外務省ODA広報キャラクターODAマン©DLE

2019年8月にアフリカ開発会議、通称TICADが横浜で開催される。
日本が立ち上げたこの会議は、アフリカの発展にどのような貢献をしてきたのだろうか?

今月のテーマ アフリカ開発会議(TICAD:ティカッド)

Q1 どんな会議なの?

A1 アフリカ開発について、各国の首脳級が集まる国際会議です。

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2018年、東京で開催されたTICAD閣僚会合。

冷戦終結を迎えた1990年代初め、アフリカに対する国際社会の関心は薄れていました。そんな中、アフリカの発展を世界全体で考えようと日本が主導して1993年に始まったのがアフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development:TICAD)です。以後TICAD V(2013年)までは5年ごとに、TICAD VI(2016年)からは3年ごとに開催されています。

会議に参加するのは、日本とアフリカ54か国の首脳や閣僚だけではありません。国連や世界銀行、国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)が共催者となり、アフリカの開発に協力しているEU、フランス、トルコ、アメリカ、韓国などの国や地域、民間企業、NGOなど、多様な立場の人たちが参加しています。TICAD VIには1万1,000人以上が集まりました。

会議で大切にしているのは、アフリカのオーナーシップを尊重し、各国の自助努力に対して支援していくこと。そのために、TICADで採択された公約の実施状況をフォローアップするために閣僚会合を毎年行い、TICADの実効性をより高めています。

これまでのTICAD

開催年 開催都市 おもな内容
TICAD 1993年 東京 冷戦終結後、国際社会のアフリカに対する関心を呼び戻すきっかけを創出。
TICAD II 1998年 東京 優先政策・行動を明記。オーナーシップとパートナーシップの重要性を強調。
TICAD III 2003年 東京 アジア諸国を含むパートナーシップ拡大に合意。人間の安全保障の概念が注目される。
TICAD IV 2008年 横浜 フォローアップメカニズムを構築。
TICAD V 2013年 横浜 「質の高い成長」と、官民連携による貿易・投資の促進を提唱。
TICAD VI 2016年 ナイロビ
(ケニア)
初のアフリカ開催。質の高いインフラ投資と人材育成など、アフリカの未来への投資を発表。

(注)TICADは、2回目から6回目まではローマ数字、7回目からはアラビア数字で回数を表記しています。

Q2 日本はどんな貢献をしているの?

A2 経済、保健、社会の安定化の三つの分野で優先的に協力しています。

TICADのテーマはアフリカの開発段階に応じて、人間の安全保障から質の高い成長、人材育成などと変遷してきました。TICAD V以後、石油価格の下落で打撃を受けるアフリカ経済の脆弱性、第1次産業に頼る産業構造の弱さ、エボラウイルス病の流行が課題となりました。

そこで、アフリカで初めて開催されたTICAD VIでは、産業構造を多角化して経済構造を改革すること、エボラウイルス病などに対応できる強靭な保健システムを構築すること、そしてテロなどのない安定した社会をつくることの三つの課題を優先することが議論されました。

その結果は、「ナイロビ宣言」と「ナイロビ実施計画」として採択されました。共同議長を務めた日本の安倍晋三総理は、2016年から2018年の3年間で、三つの優先分野に対して、約1,000万人の人材育成と官民総額300億ドル規模の「アフリカの未来への投資」を行うことを発表し、実施しています。

またTICAD VIと同時に開催された展示会には、77の日本の企業や団体が出展。エネルギーや人材育成、疾病対策などの分野で73件の覚書(MOU)がアフリカ側と締結され、民間との連携も進んでいます。

Q3 今年開催されるTICAD7で想定される議題は?

A3 多様性を増す経済分野でのニーズにどう応えていくかです。

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アフリカが求めていることを知るチャンスだ!©DLE

2019年、6年ぶりの日本開催となるTICAD7が、横浜で8月28日から30日まで行われます。TICAD VIから3年、アフリカの潜在力は世界でますます注目されています。ナイジェリアの人口が2億人を超えたように、アフリカ全体の人口増加は続き、中間層も育ってきています。今後は付加価値の高い製品への需要の高まりが予想され、"最後のフロンティア"として、欧米だけでなく中国や韓国、インドなどアジア諸国もアフリカへの進出を始めています。

そこでTICAD7では、前回の延長線上に、さらに経済分野での多様でより緊密な協力が主要テーマになると思われます。たとえば少し前までは自転車による移動がメインだった国でモータリゼーションが進めば、新車のニーズが増えますし、道路インフラの整備も急がれます。都市化の進行で、ごみや上下水道、住宅の対策も必要になります。農業分野では、より生産性を上げ、付加価値のある"売れる"作物へのニーズが生まれています。

こうした状況に対して、アフリカでは従来型のODAも必要とされていますが、民間企業、とくに意思決定が比較的速い中小企業への期待がより高まっています。TICAD7は日本企業がアフリカの首脳や閣僚と直接話ができる貴重な場になりますし、アフリカがビジネス展開の場としての魅力をアピールする格好の場にもなるので、ぜひ多くの企業に参加してほしいと考えています。

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2018年に開催されたTICAD閣僚会合サイドイベントでは、多くの日本企業や団体がブースを出した。アフリカとのビジネスでのつながりが期待される。

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ナイロビ中心部の朝の渋滞(写真提供:JICA)。

在外公館レポート from Côte d'Ivoire(コートジボワール)

西アフリカ「成長の環(わ)」の要衝、アビジャン

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日本・コートジボワール友好交差点完成予想図(写真提供:オリエンタルコンサルタンツグローバル)。

コートジボワールの経済的首都アビジャンは、幹線道路・鉄道・港湾・空港などの交通網の起点であり、内陸国のブルキナファソや、沿岸国のガーナやトーゴへと続く国際回廊を形成する重要な拠点です。

1999年から長年続いた政治的危機と内戦が2011年に終結し、近年は目覚ましい復興と経済成長が続いています。それとともに車両の台数も増え、特に朝夕のピーク時は深刻な交通渋滞が各所に発生し、交通容量の増強が課題となっています。

そこで現在日本が実施しているのが、市内の商業地に位置する日本・コートジボワール友好交差点の立体交差化の工事です。この交差点は、東に空港、西に港、南に工業地帯、北に官公庁、さらにその先には内陸国まで延びる幹線道路につながりアビジャンの交通の要衝となっています。

2017年から本格的に工事を開始し、北から東、西から東へ向かう2つの高架道路を建設していて、2018年12月には、さらに東から西方向の高架道路の建設も決まりました。これらの工事により渋滞を緩和し、西アフリカ地域のハブとしてのアビジャンの経済都市機能を高め、コートジボワールの経済活動を促進します。

そのほかにも日本は、アビジャンの別の主要幹線道路の立体交差化やアビジャン港穀物バースの建設など、広域開発のマスタープランに基づくインフラ整備や産業振興などを通じて、コートジボワールのみならず周辺地域の持続的な経済成長に貢献していきます。

(在コートジボワール日本国大使館)

答えてくれた人

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荒木 要さん

外務省 アフリカ部 アフリカ第一課 課長 荒木 要(あらき・かなめ)さん

1993年、外務省入省。在ブラジル日本国大使館参事官や国際協力局政策課企画官、横浜市国際局国際政策担当部長などを経て、2017年5月より現職。2019年8月のTICAD7に向け、アフリカとの関係強化に取り組む。