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海外大学院への留学/夫婦での在外事務所勤務/
コーチング兼業

さまざまな機会に出会う
たびに、新たな可能性の
扉を開く。

森川結子

Yuko MORIKAWA

人事部 人事課
教養学部卒/2006年入構

本当の意味での社会人としての基礎が形成された留学体験

大学時代にフランスに留学し、フランス語がある程度できるようになっていたということもあって、JICA入構の頃は、北アフリカ等の仏語圏で、円借款事業に従事しながら金融分野の専門性を獲得して仕事をしていきたい、という希望を持っていました。念願叶って、5年目にはモロッコ駐在となり、上下水道の敷設や地中海沿岸の道路開発、地方部における中学校の建設といった事業に携わりました。また、モロッコ経済財政省の事務次官といった、政府のハイレベルな方々とも直接やり取りする機会に恵まれ、この駐在は、JICA職員として、開発協力に携わる者として、とても鍛えられる経験だったと思います。ある意味でこのあたりまでの私は、“円借款・金融”という専門性を軸に、至極まっとうなキャリアを歩んでいたと思います(笑)。

自分にとって大きな転機となったのはやはり、2013年に経験した、ハーバード大学ケネディ行政大学院への留学です。留学の目的自体は、開発に関する専門性・知見をさらに高めるために公共政策学を学ぶということでしたが、大学院での勉強と同等以上に自分にとって大きな意味を持ったのは、ここでの出会い、さまざまな人との関係を通じて、“自分とはどういう人間なのか”を問い直す機会になったということです。モロッコ時代までの私はある意味で、“JICAの森川”として、“組織の中で働く一人”としてどう振る舞うべきかをインストールしてきたのだと思いますが、留学先ではJICAという看板を一旦脇に置いて、“個人としての森川”として立つことが求められる。また、留学中に知り合った友人が、現代の経営、組織論、リーダーシップ論に絶大な影響を与えている、ピーター・センゲ元MIT講師が設立したNPOで働いており、彼を通じて、組織開発・リーダーシップ開発といったテーマに目が開かれたことも、とても大きな経験でした。この留学体験は私にとって、本当の意味での社会人としての基礎が形成された、得がたい機会だったと考えています。

真摯に仕事に取り組むからこそ、さまざまな機会が与えられる

この時に兆した興味・関心をきっかけにして、“コーチング”というメソッドに真剣に取り組むようになるのですが、このコーチングに直接的に出会ったのは2016年からのペルー勤務時代です。この少し前に職場結婚したのですが、先に夫のペルー赴任が決まり、私の方で人事部にペルー赴任を要望……ありがたいことに受け入れてもらって、晴れて夫婦での駐在が叶い、慌ててスペイン語を勉強し始めました(笑)。当時のペルー事務所は難しい案件を抱えていて、私はその対応要員として配置されたという背景もあったのですが、その影響もあって事務所内の人間関係があまりうまくいっていないと感じていました。それを何とか改善できないかと思い立ったのが、チームへのコーチングの導入だったのです。コーチングを一言で説明すると、メンバーの話にお互いが真摯に耳を傾け、問いを投げかけながら、個人/チームとして大事にしたい価値観を認識していくことで、チーム全体のコミュニケーションを活性化し、活力・創造性を高めていく手法、ということになるでしょうか。この時に依頼したペルー人のプロコーチが本当に素晴らしい方で、彼の影響もあって私自身もコーチングを学ぶことを決意しました。以来、一時帰国のたびに自己研鑽としてセミナーに通い、夫の米国留学に伴って取得した1年弱の“配偶者同伴休職”の時期には、コーチングの本場米国で、非常にハイレベルなトレーニングを受けることができました。こうした努力の甲斐あって、2020年にはコーチングのプロ資格を取得し、現在は人事部に勤務しながら、コーチングとリーダーシップ・トレーニングを組み合わせたプログラムを提供するベンチャー企業と業務委託契約を交わして、コーチングを副業として行っている他、JICA内でコーチング的関わりを広げるための有志の勉強会などを実施してきました。

入構当初から考えると、JICAには本当にさまざまな機会、チャンスを与えてもらって、そのたびに、自分自身の新しい可能性の扉を開くことができたように思います。しかし今思えば、時々に目の前の仕事に全力で取り組み、関心を広げて学んできたからこそ、JICAという組織がそれに応えてくれたのだろう、とも思います。現在は、昇級・昇格、出向といった人事施策に取り組みながら、2022年4月のローンチを目指して進めている人事制度改革を、働く人と組織にとって意義のある形で実現することが、自分自身にとっての最重要なミッションと考えています。留学時代に“組織開発”というテーマに出会って以来、私自身が向き合い続けているのは、「働く場でいかに、人がありのままの全体性をもってそこにいることができるのか」ということ。開発協力においても、“仕事のうえでの自分”としてだけで相手国やそこにいる人々に向き合っているのでは、本当のニーズや願う未来を引き出すことはできないのではないでしょうか。開発協力、JICAの仕事とは、そこに携わる人間が、自らの価値観に根ざして取り組むもので、だからこそ常に自身の人間性の“development”を求められる……私は今、そのように考えています。

キャリアのハイライト

2008

北アフリカ・仏語圏での有償資金協力、という軸でキャリアをスタートしましたが、最初の異動で、全く予想しておらずバックグラウンドもない金融リスク管理の部門へ配属されました。一からファイナンスの勉強をするなかで、全く新しい分野に触れることの面白さ、新しい世界が広がる喜びを感じ、勝手に自分の枠を決めていたことに気が付きました。それ以降、年齢に関係なく、好奇心の赴くままに動くこと、自分が変わることに前向きになったと思います。

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2010

初の海外駐在は、念願叶ってのモロッコでした。経済財政省の事務次官などハイレベルなカウンターパートと直接やり取りすることが多く、自身で考え、相手のニーズを踏まえた資料を準備したり、会議での立ち回りを経験から身に着けて、徐々に相手との信頼関係を醸成していくプロセスは、フロントに身を置ける事務所ならではの経験ばかりで、日々悩みながらも、JICAで働くやりがいを感じる日々でした。

2013

海外長期研修制度に応募し、ハーバード大学ケネディ行政大学院に留学しました。モロッコである程度の自信をつけていた自分にとって、JICAの看板を抜きにした一個人としての私に何があるのか、に向き合う貴重な時間となりました。大学院の授業は非常にサポーティブな教授陣のおかげで、教授や同級生とやり取りをしながらインタラクティブに学ぶことの醍醐味を感じ、様々なバックグラウンドを持つ同級生とのやり取りで世界がぐんと広がりました。また、大学院のあるボストンでの出会いをきっかけに、組織開発に興味を持ち、今に続くテーマになっています。

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2018

夫の留学に伴い“配偶者同伴休職”を取得して、再度アメリカ東海岸で暮らすことになりました。社会人になって初めて、「やるべきこと」がない状態。当初はそれ自体に戸惑い、仕事をしたいと思った時期もありましたが、コーチングの学びを続けながら、3食自炊して、適度に運動するストレスフリーの時間を過ごす中で、身体も心も徐々にエネルギーに満たされていく感覚を覚えるようになりました。復職後は、また忙しい生活に戻りましたが、心身が健やかな状態を経験したことで、持続的に働くことへ意識が向くようになりました。

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