多くの出会いから刺激を受け、
教育開発の魅力に引き込まれる
現在は人間開発部に所属し、教育開発に関する専門性を軸にさまざまな取り組みを行っていますが、JICA入構前から教育について興味を持っていたのかというと、必ずしもそうではありません。私の場合、入構後に配属された一部署目、社会開発協力部(現在の人間開発部)での仕事が面白くて面白くてしょうがなかった。その時に出会った、大学の先生を始めとするさまざまな専門家、相手国政府のカウンターパート、そして、JICAの先輩方に導かれて、気が付けば教育の魅力にぐいぐいと引き込まれていきました。この一部署目の頃に携わった仕事のうち、特に印象深く記憶しているのは、カンボジアの理数科教育改善を目指すプロジェクトの形成のための調査でしょうか。この時は、日本のいくつかの大学の先生と一緒に現地に出張し、カンボジア教育省の担当者とも打合せを重ねましたが、それぞれの分野を究めている先生方の話を聞くのがとにかく楽しく、それをカンボジアの教育課題の解決にどのようにつなげていけるかを考えるのは、本当にやりがいのある作業でした。また、カウンターパートである教育省の担当者は非常に経験豊富で、国の将来を担うリーダーたりうる人材を育んでいくことに、強い熱意を持っておられました。あまり多くを語らない方でしたが、ポル・ポト(※注)時代の惨禍を生き延びて、自国の再建に向けて並々ならぬ情熱を持っておられました。彼を通じて、開発における教育の重要性、その意義といったものを教えられたように思います。
加えて、当時の先輩方が、皆さん教育開発に対する非常に強い思いを持っていて、自己研鑽にも熱心に取り組んでいたことにも大きな影響を受けました。その後、2001年からハーバード教育大学院に留学し、2002年からは世界銀行で東南アジアの教育・研究事業に取り組むことになりますが、これは、JICAの先輩方から刺激を受けながら、“自分はまだ教育について何も知らない、もっと勉強して途上国の開発に役立つ知識を得たい”という思いが高まっていったことが大きかったと思います。