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自律的なキャリア形成を促す「組織内公募」

マネジメントへの志向と、
専門性へのこだわり。
相反するように思える
キャリアビジョンを
両立する、組織への想い。

島田亜弥

Aya SHIMADA

社会基盤部 運輸交通グループ 第二チーム
Master of Arts Program in Sustainable
International Development修了
/2008年入構

「組織内公募」とは?

現在JICAにおいて進められている人事制度改革は、「自律的なキャリア形成」「組織運営を支える人材強化」「多様な働き方と人材」「マインドセットの変革」を4つの柱としているが、このうち「自律的なキャリア形成」を促していくために導入された施策が、課長・次長ポストの一部公募化を含む、公募ポストの大幅拡大。「自律的なキャリア形成」が目指すのは、“開発協力のインパクトの源泉としての、職員の力の向上”である。

自身のキャリアビジョンを描き、チャンスを引き寄せる

今回のテーマでもある「自律的なキャリア形成」について、最近、特に若い方と話していると少し考えるところがあります。例えば、自分は運輸交通の専門性を極めたいから、ひたすら運輸交通の仕事をやりたい、総務の仕事をやるのは自身のキャリアパスにおいて意義が見いだせない、というようなことを言われる方が中にはいます。しかし、JICAが手掛ける国際協力は、そんな一面的な仕事ではないと考えています。我々の仕事は、途上国の人々の人生を変えるような仕事なのだから、我々自身も、人生を賭けて取り組まなければならない。そして、JICAが取り組む課題は本当に多種多様で、だからこそそこから生まれる仕事にも、ものすごくバリエーションがあります。ローテーションの中で、偶然に出会った仕事に一生懸命、無我夢中で取り組むからこそ見えてくるものはとても多いと思いますし、仮に運輸交通の専門性を追求したいとしても、その専門性が途上国の現場で本当に力を発揮するためには、単なる“専門知識・専門能力”だけでは足りないと思います。本当に途上国の人々に求められ、彼らの人生を変え得るような協力を実現するためには、人間力を含めた多岐にわたるな能力が必要で、それは、狭い視野で捉えた“やりたいこと”だけをやっていて獲得できるものではないということを、私はJICAで15年以上仕事をする中で実感しています。そして、本当に価値ある事業を実現するために、自分にはどんな力が必要なのかを真摯に考えながら、時には組織に働きかけ、自ら機会を呼び寄せる。それが、「自律的なキャリア形成」なのではないかと私は考えます。

 2022年11月に「組織内公募」に応募し、現職である社会基盤部運輸交通グループ第二チーム長に就任しました。今回は課長職が公募され、これは、現在JICAにおいて進められている人事制度改革の柱の一つ、「自律的なキャリア形成」に基づいて拡充された仕組みです。私は、大学院生だった頃にJICAの事業についていろいろ調べ、日本の国際協力の原点にあるのが戦後復興の経験であることを知りました。日本も、戦後復興から高度成長の過程では、世界銀行から資金を借り入れて高速道路や新幹線を造り、それが、急速な経済発展の原動力になりました。このようにインフラ開発は、国を発展させ、人々の豊かさを築いていくうえでとても大きなインパクトを持つ……。そう考えた私は、入構前からインフラ開発に携わりたいという希望を持っており、幸いにして入構2部署目に、当時の経済基盤開発部(現社会基盤部)に配属となりました。以来、インフラ/運輸交通セクターに関する専門性は、私のキャリアにおける一つの軸になっています。しかし、入構以来のキャリアパスを辿ると、内閣官房への出向や、自ら希望しての総務部での勤務等、必ずしも専門性の向上のみにこだわって、経験を重ねてきたわけではありません。こうしたキャリアパスを志向してきたのは、これまで出会って来たさまざまな上司の皆さんから学んだもの、そして、入構10年目で経験した、人事課長や運輸交通セクターを専門とする先輩職員によるキャリアコンサルテーションを通じて気づかされたものも大きく影響しているように思います。

 上司の方々から学んだもの、それは、一つひとつの仕事を、それが自分で希望したものであるかどうかにはかかわらず精一杯やる、ということを積み重ねることで、彼・彼女の仕事力や判断力が形成されているということ。自分のキャリアを形成していくうえでは、ただ“やりたいこと”をやっていればいいのではなく、時々の“やるべきこと”に全力で、集中して取り組むことが大切なのだということでした。またキャリアコンサルテーションの際、私はマネジメントにも興味があるいう話をしたのですが、その時先輩職員が語ってくれたのは、JICAという組織は開発協力をやっているわけだから、事業を回していくうえで職員がどんなスキル・能力を持っていなければならないか、それがしっかりとわかっていなければ、組織のマネジメントはできない……そして、組織のマネジメントを考えるうえでも、分野、地域といった専門性の軸を持っていないと、ものごとを捉えるうえでの視点がブレてしまうのではないか、ということでした。以来私は、ものごとを俯瞰的に捉える視点、マネジメント能力を高めていきたいという思いを一方で持ちながら、インフラ/運輸交通に関する専門性とフランス語能力/アフリカ地域への知見を自分の中の二つの軸として、キャリアを築いていく努力を続けてきたように思います。

皆が幸せに働ける組織を創っていくために

JICAにおけるこれまでのキャリアにおいて、私は自ら組織に働きかけて、ポスト/機会を掴みに行ったことが何度かあるのですが、先ず一つ目は、2014年に経験したフランスでの1年間の語学研修と、2015年から2年3ヶ月駐在したコンゴ民主共和国事務所での勤務経験です。私は、1回目の海外赴任は、どうしてもアフリカの、しかも小さい規模の事務所に行きたいと考えていたのですが、そのためには先ず、フランス語の勉強をしておけば、かなりの確率でアフリカの小規模事務所に行かせてもらえるのではないかと考えたのです。フランス語研修に手を挙げたのはつまり、海外赴任先の希望を受け入れてもらうために先手を打ったということです(笑)。当時のコンゴ民主共和国事務所は、所長と職員2人、あとは有期雇用の日本人スタッフ3人とナショナルスタッフ6人という、最小規模の事務所でしたから、まさに希望通りの配属でした。なぜ小さい事務所に行きたかったのか?これはやはり、私のマネジメントへの志向がベースにあったのだと思います。私が考えていたのは、事務所が手掛けている事業の全体が見渡せるような規模感の中で、事業だけでなく、バックオフィス、アドミニストレーション的な、事務所の運営業務にも携わりたいということ。仮に大きな事務所に行ってしまうと、本部と同じように、各チームが担う範囲でしか仕事が見えないのではないか、と考えたわけです。コンゴ民主共和国事務所では、まさに私が想定していたような仕事を経験することができましたし、運輸交通分野の担当としても、首都キンシャサの道路を整備する事業において、開通式典に1000人を超える住民の方たちが詰めかけ、“ビバ・ジャポン!”と歓喜の声を挙げて喜んでくれている感動的な光景を目にすることもできました。

 また、2019年には内閣官房に出向し、21年からは総務部での勤務を経験しましたが、この二つも自ら希望してのものでした。内閣官房は言うまでもなく、国の中枢で内閣を支える組織ですが、こうやって国家の政策は決められ実施されていくのだということが良く見える、本当に得がたい経験だったと思います。加えて、内閣官房はさまざまな省庁や政府系機関等の出向者で構成されていますが、彼らと机を並べて働く中で、省庁や政府系機関の方たちが、JICAに対して非常にポジティブで高い期待を持っていることを肌で実感できたことも、この出向の大きな収穫でした。その後総務部に帰任するわけですが、これも私にとっては、内閣官房出向の際に考えていたことの延長のようなところがあり、自分が10年以上働いてきたJICAという組織が、どのような意思決定に基づいて動いているのかを見てみたい、という思いに根差したものでした。総務部では配属2年目以降、班長としてチームマネジメントを担い、組織としての職員定員の要求・管理、組織改編や業績評価等の業務を担当しましたが、こうした経験を重ねるうちに、できれば次回の海外駐在前に、本部でより高い視点に立ったマネジメント業務、つまり課長職としての経験を積んでおきたいと考えるようになったことが、今回「組織内公募」に応募する直接的な動機だったように思います。これまでのキャリアの中でも、自分の能力をストレッチするようなチャレンジを何度か行ってきましたが、今回も、敢えて高い目標を自身に課すことで、次の可能性を拓いていきたいと考えたのです。

 現在は、自分のキャリアの軸の一つであるインフラ/運輸交通を担当する社会基盤部運輸交通グループにおいて課長として働いていますが、これはやはり、期待していた以上の経験をさせていただいているという実感があります。案件担当者とは異なる管理職の役割の一つとして重要なのは、個々の案件を総括・俯瞰し、部として、またJICAとして、我々は何を成し遂げようとしているのか、その価値・意義をしっかりと考えて、組織内外にアピールしていくことではないかと思います。まだまだ力が足りないところが多くありますが、先輩の管理職から学びながらマネジメント能力を高め、例えば次回の海外赴任の際には、より大きな単位での組織経営に携わってみたいという思いがますます強まっています。

 こうした私のマネジメントへの志向、これは結局のところ、JICAに属する皆が楽しく、やりがいを持って仕事ができる組織を創りたい、そういうJICAであり続けるために自分の力を注いでいきたいという想いが、根幹にあるように思います。私が入構した頃の理事長は故・緒方貞子さんでしたが、彼女が言われていたことをよく思い出します……「私たちの仕事は人を幸せにすることなのだから、自分たちが幸せでなければだめなのよ」と。職員皆がもっともっと幸せに働けるJICAを築いていくために、自分の能力を役立てていくことができれば、これほど幸福なことはありません。そして、そのためにも自分に足りない力は何か、それを身に着けるためには何をすべきかを常に見極め、自らを高めながら、今後もキャリアパスを築いていきたいと考えています。

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