アフリカから記者が来日:都市づくりや農業、教育を取材

2019年7月29日

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)開催を目前に控えた7月、アフリカ大陸の10ヵ国から10名の記者が来日し、都市づくり、農業、教育をはじめ、日本の文化や歴史などを取材しました。JICAは毎年、開発途上国の記者を日本に招き、日本やJICA事業への理解を深め、母国での情報発信をしてもらう機会を設けています。

【画像】

アフリカから来日した記者のみなさん

きれいで透明性がある横浜市の都市づくりを学ぶ

来月8月28日からTICAD7が開催される横浜を訪問した記者たちは、まず、みなとみらいの開発や都市づくりについて横浜市の担当者からレクチャーを受けました。都市でのごみ処理や人口の管理、津波といった自然災害への対処法などについて、熱心に話を聞きました。

エチオピアの新聞社「ザ・レポーター」のアスラト・セヨウン・チャフェケさんが、TICADを開催することは横浜市にとってどのような価値があるのかと尋ねると、横浜市の担当者は「アフリカと連携することで、中小企業を中心にビジネスチャンスが広がります」とTICAD7への期待を示しました。また、「横浜の都市開発の歴史がアフリカの皆さんにとって役立つと嬉しい」と述べます。

チュニジアの「チュニスアフリカ通信社」の記者アマル・ベン・ハジバさん

次に、記者たちは横浜港を巡るクルーズ船、マリーンシャトルに乗り、海上からみなとみらいの街並みを観察しました。

「横浜は街並みが美しいですね。色を含めて、景観がよく計画され、整備されていることに感心しました」と言うのはチュニジアの「チュニスアフリカ通信社」の記者アマル・ベン・ハジバさん。「いまは使われていないようですが、共同溝でゴミを一気に収集する方法にも驚きました。ゴミ問題に関して、チュニジアではドイツの協力で収集方法を改善し、環境保全に努めていますが、一般の人の意識が追いついていないのが問題です。首都チュニスも観光スポットは美しいのですが、やはり景観を保つ努力が十分ではありません。ぜひJICAから技術協力を得たいと思います」と語ります。

セネガルの新聞社「ル・ソレイユ」の社会部記者アラサーン・アリユアー・ムバユさん

セネガルの新聞社「ル・ソレイユ」の社会部記者アラサーン・アリユアー・ムバユさんは、横浜の透明性の高い行政サービスに感銘を受けたと言います。

「横浜市が輸出入の品目や数量といった港湾関係のデータを細かく把握されていることが印象的でした。言い換えると、透明性が確保されている。そのことが素晴らしいですね」

セネガルにもダカールという大きな港町があることから、都市計画や開発において、ぜひ日本からもアドバイスが得られればと述べました。

最先端テクノロジーを使った「スマート農業」に触れる

記者たちは、ロボットやICTといった最先端テクノロジーを使ったスマート農業について取材をするため、茨城県つくばみらい市にある農業機械専業メーカー・井関農機株式会社の「夢ある農業総合研究所」も訪問しました。

茨城県つくばみらい市にある農業機械専業メーカー・井関農機株式会社の「夢ある農業総合研究所」を見学する記者たち

アフリカの農作物や農法が日本と異なるため、日本の最先端技術を駆使した農法をそのまま取り入れることに、慎重な声もあれば前向きな意見もあり、記者たちはさまざまな見方で取材をしていました。

ガーナの新聞社「デイリー・グラフィック」の記者ドリーン・アンドーさんは「ガーナのカカオ農場ではオートメーション化が進んでいるので、今回の訪問は勉強になりました。有人監視型ロボットトラクターなどは、カカオの大規模農園でも大いに役立つと思います」と言います。

“特活”が大きなインパクトを与えた「日本式教育」

また、東京都八王子市にある浅川小学校を訪問し、掃除や給食当番、運動会といった活動を通して役割分担や協調性などを身に付ける日本式教育について学びました。そこで多くの記者にインパクトを与えたのが、クラスのルールを決める学級会やクラブ活動といった「特別活動」です。

【画像】

(左)学級会の様子を見学
(右)子どもたちと一緒に給食を頂きました

南アフリカの新聞社「ザ・スター」の記者チュルマンコ・マハンバさんは「特別活動がとても興味深かったですね。掃除や給食も含めて、これらを子どもたちが自ら実践することで自主性や協調性を身につける。そのことが見て取れました。日本独自の教育方法だと思いますが、これは素晴らしい」と述べました。

今回の取材を通じ、都市づくりから農業、教育まで、幅広い分野で日本の取り組みを目の当たりにしたアフリカの記者たち。帰国後それぞれのメディアを通して日本の技術や経験を母国の人々に伝えていきます。彼らの発信を通じて、アフリカ諸国の発展や課題解決に生かされることが期待されます。