2022年2月25日
2022年2月25日~27日、MUSTプロジェクト(科学技術のための算数・数学理解プロジェクト)では、エチオピア教育省とJICAの主催で、9年生から12年生の高校数学教科書改訂に携わる執筆者を対象に、3日間のワークショップを開催しました。アワサ大学、バハルダール大学、ジンマ大学、アディスアベバ大学から14人の教科書執筆者が参加しました。
エチオピア教育省では、全教科の教科書改訂を2023年3月までに行う計画です。今回のワークショップは、9年生から12年生の高校数学教科書執筆者による教科書改訂稿(ドラフト)のさらなる改善をサポートし、2023年3月までの改訂稿最終化までのスケジュールをMUSTプロジェクトから提案し共有することを目的に開催しました。
現在改訂中の高校数学教科書には大きく2つの問題点があります。まず、各ユニットが、生徒が授業で学んだことをすぐに演習することができない構造になっています。習ったことをすぐに演習できないために、生徒が新しい概念や解法を学んでもそれを理解し習得することが難しくなっています。この問題を克服するために、MUSTでは、1つ1つの授業コマを「A(Activity:活動)-D(Definition:定義)-E(Example:例題)-E(Exercise:練習問題)」で構成することを提案しています。次に、教科書中の「例題」や「練習問題」で扱っている問題が生徒にとって難しすぎることから、これらをもっと基本的で簡単な問題にすることを提案しています。MUSTでは、教科書改訂稿(ドラフト)の各ユニットをこのように構成しなおすことを"Unitization"と呼び、ワークショップで教科書執筆者はこの"Unitization"に取り組みました。
ワークショップの冒頭では、MUSTプロジェクト専門家がこれらの問題点を指摘したうえで、「なぜ適切に構成された教科書が生徒の学びの質を上げるか」について説明しました。その構成に沿って先生が教えることにより、生徒が自分たちで学びに取り組む時間が増え、先生が適切なフィードバックを行うことができると説明しました。
MUSTプロジェクト専門家は、教科書改訂稿(ドラフト)をさらに改善するために次の5つのステップが必要であると説明しました。1)間違いを修正する、2)レイアウト、数学的表現、用語、グラフや図表を改善する、3)「1トピックにつき1~2ページ」の原則に基づき、1コマの構成をA-D-E-Eに"Unitization"する、4)例題や練習問題の問題を生徒の学習発達レベルに合わせたものとする、5)教科書の内容をより充実させる。MUSTプロジェクト専門家はさらに、9年生から12年生の数学教科書改訂稿(ドラフト)のいくつかのユニットについて、この"Unitization"を行った例を示し、執筆者の作業を助けました。
ステップ1)と2)については、すでにMUSTプロジェクトによる2021年10月のワークショップで取り扱いました。したがって今回のワークショップでは、ステップ3)、4)、5)に取り組むことを目指しました。教科書執筆者はとても真摯に取り組み、MUSTチームから提示された"Unitization"の例を参照しつつ、MUSTチームからのコメントを取り込みながら、教科書改訂稿(ドラフト)をさらに改訂していきました。
ワークショップ終了後は、今回扱わなかった残りのユニットについて、教科書執筆者が自ら"Unitization"に取り組むことが望まれています。2022年4月には、教育省が、それら教科書改訂稿(ドラフト)の内容の確認を行い、その後印刷にかけ、エチオピア全国の98のパイロット校へ配布されることになっています。新学期を迎える2022年9月から、パイロット校で教科書改訂版による授業の試行が始まります。パイロット校で改訂版教科書がどのように使われているかをモニタリングした結果に基づき、2023年3月に教科書ドラフトの最終改訂を行うことが計画されています。