2019年8月22日
国際協力機構(JICA)は、8月22日、五常・アンド・カンパニー株式会社(以下「五常」)との間で、10億円の投資契約に調印しました。本件は、開発途上地域においてマイクロファイナンス事業を行う五常の事業拡大を支援することにより、低所得者層の金融アクセスの改善、生活水準の向上、女性のエンパワーメントの促進に寄与するものです。
世界には金融機関に口座を有さない成人が約17億人存在(注1)し、金融アクセスの改善は、特に開発途上地域における大きな課題となっています。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットにおいても、「マイクロファイナンスを含む金融サービスの確保」(ゴール1)及び「金融サービスへのアクセスの改善」(ゴール8)が掲げられています。また、金融機関に口座を有さない成人の半数以上が女性であり、ジェンダー格差は開発途上地域で大きくなっています。
五常は、民間版の世界銀行として世界中に金融アクセスを届けることをミッションとして、2014年7月に設立され、これまでにインド、カンボジア、スリランカ、ミャンマーでマイクロファイナンス事業を展開しています。従業員と顧客の満足度への配慮を徹底した金融サービスを提供することで、低所得者層顧客の経済的自立と生活水準の向上に取り組むものです。現時点で顧客数は40万人を超え、大きな社会インパクトをもたらしています。JICAは本件出資を通じて、五常の更なる事業拡大を支援します。
五常の顧客のうち、女性の比率は95%程度です。開発途上地域の女性向けに金融サービスを提供することで、女性の収入向上や女性起業家の売上拡大など、経済的エンパワーメントの向上が期待されます。JICAは2018年6月のG7シャルルポワ・サミット(カナダ)にて発表された「G7 2Xチャレンジ:女性のためのファイナンス」イニシアティブ(注2)に参加しており、五常への出資は本取組にも資するものです。
JICAの出資により国内外の機関投資家による社会的インパクト投資(注3)に対する理解の促進がなされ、さらなる民間投資の呼び水となる効果が期待されます。
JICAはこれまで、「貧困層向けマイクロファイナンス事業」(2012年、注4)、「日本ASEAN女性エンパワーメントファンド」(2016年、注5)への出資などを通して、開発途上地域における金融アクセス改善・女性エンパワーメント促進を支援してきました。今後も本分野において民間企業の先駆的な取り組みへ幅広い支援を継続していきます。
(注1) 出典:Global Findex 2017
(注2) G7の開発金融機関がジェンダー平等に貢献するビジネス、企業、基金に投資するため、2020年までに30億米ドルの資金動員を目指す目的で立ち上げられたイニシアティブ。JICAの他にFinDev(加)、CDC(英)、OPIC(米)、Proparco(仏)、CDP(伊)、JBIC(日)が参加。
(注3) 社会的インパクト投資とは、金銭的リターンと並行して社会や環境へのインパクトを同時に生み出すことを意図する投資。
(注4) パキスタン初のマイクロファイナンス機関を支援するもの。NGOアガ・カーングループやIFCとの共同出資。資金提供と同時に職員能力強化及び金融商品開発のための調査・技術支援を実施。
(注5) マイクロファイナンスファンドの運営者として草分け的存在であるBlue Orchard Finance S.Aがファンドマネージャーを務めるファンドへの出資。当ファンドを通じてアジア地域のマイクロファイナンスを支援。