水質汚濁に関する環境チェックポイント

1. 概要

物質により程度の差はあるが、すべての物質は一定濃度以上になれば、水質汚濁の原因になり得るといえる。しかし、通常の場合は自然の環境水に流入した汚染 物質は希釈、拡散あるいは沈殿し、有機物は微生物によって炭酸ガス、水等に分解・無機化される。こうした自然の自浄作用の限度を越えて物質が流入した場 合、あるいは自然では無害化できない有害物質(重金属など)が流入した場合に、水質の汚濁問題が生じることとなる。

2. 基準達成

(1) 工場等の事業所から公共水域に排出される廃水、冷却水、従業員の生活廃水が、借入国(地域)の排出基準、環境基準に適合しているか。

(2) 上記の項目にかかわる当該国の基準は国際的に妥当な内容と判断されるか。また、借入国において、現在規制が確立されていない項目については当該国以外(日本における経験も含めて)での実状も踏まえた上で検討しているか。

3. 事前検討

(1) 排水の放流先である公共水域の下流部の利水状況について充分な検討が行われているか。

  • イ. 飲料水,農業用水等の生活用水としての利用はないか。
  • ロ. 下流部に珊瑚礁、マングローブ等の貴重な水生生物が生息していないか。
  • ハ. 景勝地で着色・発泡した排水により問題が起きる恐れはないか。
  • ニ. 地下水への汚濁物質の浸透による井戸等への被害の恐れはないか。

(2) 排水の放流先である公共水域が排水の汚濁物質の希釈・拡散に充分な流量、流速をもっているか。また、閉鎖水域(湖沼、内湾)である場合は汚濁物質の沈殿・滞留により問題が起きる可能性はないか。

(3)土地造成、アクセス道路の建設による陸水系への影響はないか。

(4)工業用水の取水による河川、湖沼の流量低下、水位低下による悪影響はないか。

(5)上記の問題の検討、環境基準達成の検討に関連して、既に充分なモニタリング体制が敷かれデータの収集がなされているか。

4. 個別対策

(1) 個々の水質項目について、下記の分類に注意して排出される量、濃度(最高、最低、平均、変動要因)について検討しているか。

  • イ. 汚濁物質そのものには毒性はないが、濃度によっては問題となるもの。
  • ロ. 汚濁物質そのものに毒性があるもの(重金属など)。

(2)事業所内(当該敷地内)で使用されている薬液、あるいは廃液等のうち危険物・有害物の管理について適切な管理・モニタリングの方法が制定されているか。

(3)排水処理施設の運転管理について適切なマニュアルが検討されているか。また、適切な専門技術者を管理者として配置して、運転状況の記録を保管するようにしているか。

(4)排水処理施設から発生する残滓についての処理・管理は充分検討されているか。

(5)施設の運転不良、故障、事故による危険物、有害物の公共水域への流出に関する対策の検討はなされているか。

5. 留意点

(1)プロジェクトに関し地域住民およびNGO(国内、国外)の理解は得られているか。

(2)当該国において、過去および現在水質汚濁に関し、どのような問題が発生しているか。