アジア諸国の包摂的かつ持続可能な成長達成のための財政管理:JICAとIMFが国際会議を開催

2020年2月14日

参加者

国際協力機構(JICA)と国際通貨基金(IMF)は、2月13日、JICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)にて、「発展するアジア:包摂的かつ持続可能な成長達成のための健全な財政管理」と題した国際会議を開催しました。

1.会議の概要
3年ぶり5回目となる今回の国際会議では、アジア12ヶ国の財務省及び中央銀行から閣僚・局長級の参加者22名を招き、投資と債務管理を組み合わせた上で、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための取り組みや課題について議論しました。
基調講演を行った財務省の武内財務官は、包摂的かつ持続可能な成長達成には、質の高いインフラ投資、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注1)に加えて、債務の持続性及び透明性の管理が重要であると指摘しました。

2. SDGs達成:コストと持続可能なアプローチ
IMFは、教育、保健、インフラ分野でSDGsを達成するため、現在と比較して2030年までに低所得国はGDPの15.4%、新興国はGDPの4.1%に相当する規模で歳出を増やす必要があるという分析を報告しました。そして、そのためには、歳入の増加や歳出効率の改善に取り組み、民間資金や国際開発金融機関の資金を有効に活用するべきであると提言しました。
JICAからは、SDGsの達成の中でも特にUHCの達成のための課題と取り組みを紹介するため、昨年開催された国連UHCハイレベル会合やG20財務・保健大臣合同会議を振り返りつつ、包括的な経済成長の基盤としてUHCに投資するべきであること、そのための財務省と保健省の連携の重要性を報告しました。

3.持続可能な成長と財政及び債務の持続性
会議前半では成長著しい南アジア地域を題材に、IMFから、持続可能な成長に向け、公的債務及び歳入管理、民間参入を誘発する関税減免、規制緩和の重要性について報告がありました。JICAからは、世銀・ADB等との共同研究成果に基づき、同地域の発展において国内・域内の連結性に資する交通インフラ開発の重要性を指摘するとともに、政治的なコミットメントと併せて広域での経済的効果を正負両面から検証し、優先順位付けを行う重要性を提起しました。

会議後半では公共財政管理改革の取組みについて議論され、JICAから、途上国における公共投資ニーズは依然として高く、「質の高いインフラ投資」の観点からも公共投資管理(PIM)(注2)に更なる注目が集まっている点を報告しました。そして、JICAが、2000年代初頭から実施している技術協力の事例として、ラオスやマラウイにおけるPIM支援を紹介しました。IMFからは、公共財政改革におけるアジアでの現状について説明があり、過去の取組事例の紹介と共に各方面での課題が共有されました。

マクロ経済政策を支援しているIMFと、ミクロレベルまでを含めた実体経済の成長・発展を支援しているJICAが、アジア諸国とともに、このような議論の機会を持つことは、非常に有意義でした。今次会合では特に、SDGs達成やインフラ投資のために資金ニーズが増大する現代において、債務管理を含む公共財政管理についてIMFとJICAがそれぞれの取組みを紹介し、参加者の理解を深めることが出来ました。JICAは、IMFなどの他機関と連携しつつ、このような実証的研究に基づく対話を含め、アジア諸国が持続可能な成長を実現していくための支援を続けていきます。

(注1) ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:Universal Health Coverage):全ての人が適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払可能な費用で受けられること。
(注2) パブリック・インベストメント・マネジメント(PIM:Public Investment Management):経済・社会インフラなど公共インフラのための政府による支出を管理すること。