ジャマイカ「JICAチェア第2回セミナー」を実施

2023年2月21日

2023年2月21日(火)、西インド諸島大学MONAキャンパス(University of the West Indies、以下略称UWI)との共催によりJICAチェアの第2回講義が実施されました。主な参加者は、UWIの教員・学生(政治学科及び他学科)・交換留学生等約100名。詫摩佳代教授(東京都立大学大学院法学政治研究科法学部政治学コース)を講師に迎え、「Transformation of Global Health Governance and Japan's Role in It」のテーマで講演、その後参加者との間で活発な質疑応答が行われました。

セミナー概要

(1)Heather Ricketts社会科学部長、Suzette Haughton行政学科長からの開会挨拶

これまでの同大学側との協議、及びJICAチェアとしてUWIとの前回のオンライン講義の実施成果を踏まえて、JICAチェア事業の充実を含めた同大学との連携協力の強化に向けた強い関心・意向が述べられた。また、同部長からは、本テーマが時機を得たものであり、SDGsのゴール16及び17にリンクする旨コメントあり。

(2)詫摩佳代教授による講義

Transformation of Global Health Governance and Japan's role in itと題して、グローバル保健ガバナンスの歴史的な特徴と変容、そこにおける日本の役割について主に話した。

本講義は三部構成で、第一部ではグローバル保健ガバナンスの歴史的な特徴(社会医学的アプローチと生物医学的アプローチという二つのアプローチの競合、政治との関わり、非国家アクターの役割)と、日本の国際保健に対する歴史的な関与、第二部では新型コロナ禍でのグローバルヘルスガバナンスの構造的変容(地政学的な影響を受けて重層化している様相)、そして第三部では、ガバナンスの重層化を受けて、地域単位や有志国間での協力が増えている現状を説明し、日本の役割や、地域内保健協力の可能性、ジャマイカと日本の協力の可能性について説明した。

その後の質疑応答では、新型コロナパンデミックが日本の政治にどのようなインパクトをもたらされたのか、日本の国民皆保険のような制度を根付かせる上での各国の政治のインパクト等について質問がなされ、議論が行われた。

(3)主な質疑応答

1)質問:社会医学的アプローチと生物医学的アプローチについてもう少し説明してほしい。
回答:生物医学的アプローチは新薬開発など技術向上・革新、社会医学的アプローチは保健に関する社会環境の改善が主眼。両アプローチのパワーバランスはその時々の状況によって異なることはこれまでの歴史で証明されているが、どちらのアプローチも重要である。
2)質問:上記アプローチがジャマイカで成功するにはどうすればよいか。
回答:社会医学的アプローチに比べると生物医学的アプローチの方が結果に繋がりやすい。社会医学的アプローチはインフラ投資など高コストなので時間がかかるが長期的な視点で考えると保健環境改善にとって重要である。
3)質問:コロナ禍は社会・文化・政治等に大きな影響を与えたが日本での実例をお聞きしたい。
回答:例えば手洗い習慣が励行・定着した。また、緊急時対応の指揮命令系統の補強のため国立感染症研究所と国立国際医療研究センター統合などにも取り組んでいる。
日本はこれまで非感染症薬剤製造中心のためコロナワクチン製造では後れを取っておりワクチン価格保証制度など対応を推進する政策を打ち出すなどしている。
4)質問:皆保険制度がジャマイカで促進・定着するにはどうすればよいと思うか。
回答:国によって状況が違うので簡単には答えられないが、日本は池田勇人首相時代に皆保険制度を強力に推進して挙党一致体制で取り組んだため定着することができた。池田首相でなければ違った状況になっていたかもしれない。

(4)ジョンソン講師からの閉会挨拶

詫摩教授による講義に対する謝辞と、今回の講義を契機として日本を含むアジア地域と中南米との今後の協力関係が更に深まることに触れつつ閉会の挨拶が締めくくられた。

セミナーの様子

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Suzette Haughton行政学科長からの開会挨拶

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Heather Ricketts社会科学部長からの歓迎の言葉

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河崎 充良JICAジャマイカ支所長より、JICAチェア取り組みへの謝辞

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東京都立大学(法学部法学科政治学コース)詫摩佳代教授による講義の様子

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集合写真

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JICAチェアの講義開催の案内