(回答)イ.基本的な方針に関するもの

Q1:なぜ「円借款における環境配慮のためのガイドライン」と「国際金融等業務における環境配慮のためのガイドライン」とを統合することになったのですか?
A1:統合前は、それぞれの機関がもっていたガイドラインに基づき、それぞれの融資プロジェクトについての環境配慮を行ってきましたが、1999年3月に国際協力銀行法案が可決された際に、環境配慮に関して「統一ガイドライン等を策定」すべきである旨の附帯決議が出されました。この附帯決議に基づき、当行としては2つの環境ガイドラインを統合するべく準備を行い、2002年4月に制定に至りました。

Q2:国際的な場で、国際協力銀行が環境ガイドラインに基づく取り組みを情報発信しないのですか?
A2:当行としましても、皆様のご意見を踏まえ作成された当行の新環境ガイドラインの考え方を広めて行くため、OECDやUNEP等国際的会議や借入国との協議の場等を通じて当行の新環境ガイドラインを説明、情報発信を行う所存です。OECDにおいては我が国を代表して参加している財務省・経済産業省に対して他国ECAの環境ガイドラインを当行水準に引き上げられるよう対応していただくこともお願いしたいと考えております。
また、借入国側への説明についても、積極的に取り組みたいと考えております。

Q3:国際協力銀行のガイドラインと他国のガイドラインが異なる場合には、他国のガイドラインを国際協力銀行のガイドラインに合わせるように他国に働きかけないのですか?
A3:OECDコモンアプローチ改訂作業において、当行も我が国政府を通じて提案を行う他、当行の新環境ガイドラインを説明するなどして他国に働きかけを行い、相応の成果があったものと認識しております。将来の改訂における議論においても引き続き貢献していきたいと考えております。

Q5:国際協力銀行は、我が国の輸出入もしくは海外における経済活動の促進のために融資を行う機関でもあるのだから、我が国企業の国際競争力維持に十分配慮するべきではないのですか?
A5:環境の維持と両立した持続的な事業の達成は重要な課題であり、我が国企業の海外活動の金融面からの支援と環境への配慮を両立させることは、当行の新環境ガイドライン策定にあたり当行が最も重視した点の一つです。OECDのコモンアプローチでも、公的輸出信用政策と環境保護政策との一貫性が謳われており、我が国企業の対外経済活動の促進を政策目的の一つとする政策金融機関として適切な環境社会配慮を確保するとの前提の下、商業上の秘密等への配慮等我が国企業の競争力には十分配慮した内容になっていると考えております。

Q6:新環境ガイドラインを導入したことによって、プロジェクトの審査に要する時間が増えて、現在のような迅速な対応ができなくなるのではないですか?
A6:当行による環境社会配慮確認においてもセクターやプロジェクトの性格・内容に応じて十分に確認することが必要ですが、一方でプロジェクトの進展を当行の審査手続の遅れにより妨げることは避けなければなりません。特に民間企業の行う事業を支援する場合には留意が必要です。
当行は十分な環境社会配慮確認を確保しつつ迅速化を図るため次のような工夫を考えております。
1)スクリーニングを行うことにより環境への影響が重大である可能性のあるプロジェクトを特定化し、こうしたプロジェクトに対してはより詳細な環境社会配慮確認を行う
2)借入人等への質問事項をまとめたスクリーニングフォーム、及びセクター毎に確認すべき項目を列挙したチェックリストの活用
3)協調融資を行う他金融機関、輸出信用機関等との情報共有、意見交換
4)プロジェクトの性格・内容に応じて特定分野の外部専門家の活用

Q7:輸出信用の部分については日本貿易保険のガイドラインと共通のものにしないのですか?
A7:当行は輸出金融、投資金融、輸入金融、事業開発等金融(アンタイドローン)、円借款、ブリッジローン、保証と多様な金融メニューをもって途上国等で行なわれるプロジェクトを支援しています。金融種類は異なっても政府機関として当行がプロジェクトに求める環境社会配慮は基本的には変えるべきではないと考えております。
一方で、日本貿易保険の環境ガイドラインと当行の新環境ガイドラインとではその内容は大きく異なるものにはなっておりません。
また、OECDコモンアプローチの中で輸出信用機関間の情報共有も奨励されていることより、
1)借入人等への質問事項をまとめたスクリーニングフォーム、及びセクター毎に確認すべき項目を列挙したチェックリストの共通化
2)情報共有
3)現地調査ミッションを可能な限り同時に派遣
4)環境レビュー結果に関する意見交換
等を行うことにより、輸出金融ご利用の皆様に国際協力銀行と日本貿易保険で環境社会配慮確認が重複しないよう工夫することを検討していきたいと考えております。

Q8: WCD(世界ダム委員会)は詳細な提言を策定しておりますが、WCDフォーラムのメンバーであった国際協力銀行は関連の提言を本ガイドラインに反映しているのですか?
A8: WCDで提言されている基本的な考え方については共有できるものがあると考えており、当行の新環境ガイドラインの中にも取り入れております。例えば、新環境ガイドラインの中で、代替案の検討、社会的合意、遵守の確保等については、事業者に求める環境社会配慮の内容として第2部1及び2、当行の遵守に関しては第1部7に記述しています。
ただし、WCDの提言で言及されている具体的事項の中には、先進国においても実施が一般的でなく、特に開発途上国では技術的、資金的に対応が困難なものも含まれており、WCD議長も「WCDの提言は、ガイダンスを提供するものであり、規制的なフレームワークではない」と説明しております。当行としても有用な参考資料として活用していきたいと考えています。

Q9:円借款の場合に、環境問題よりも外交関係を優先して融資表明が行われることがないよう、国際協力銀行の環境審査が確実にクリアされてから政府によるプレッジがなされているのですか?
A9:当行は円借款プロジェクトについて環境面のみならず他の要素も含めて審査を行い、当行の判断について、その結果と根拠を政府に報告し、その上で政府が最終判断をしてプレッジを行っております。従って、当行自らの専門知識に基づくプロジェクトのフィージビリティ確認の結果を受けずに政府によるプレッジがなされることはありません。

Q10:モニタリングを行う目的についてどのように考えているのですか?
A10:当行としましては、モニタリングは、プロジェクト実施主体者が環境社会配慮を確実に実施しているか確認するために行うものと考えております。
また、モニタリングの目的の一つが、当初予見されていなかった影響の早期発見であると考えており、これまでも、何らかの問題が指摘または確認された場合には、速やかに借入人等に伝達し、適切な対応を促してきました。
新環境ガイドラインにおいても、第2部1.で、「予測が困難であった事態の発生の有無・・・・を把握し、その結果に基づき適切な対策をとることが望ましい」旨明記しています。その上で、モニタリングの結果問題が確認された場合には、「借入人を通じプロジェクト実施主体者による適切な対応を促す」(第1部4.(4))こととし、予見されていなかった影響等にも対応することとしています。

Q11:それぞれのプロジェクトで確認すべき項目を具体的に示すことは困難であると推測されますが、確認漏れを回避するために、どのような対策をとっているのですか?
A11:特にカテゴリAについて、情報公開やパブリックコンサルテーション等の手続きを確認することは確認漏れを防止するために重要であると認識しており、新環境ガイドライン第1部3(3)において、「カテゴリAのプロジェクトに関しては、・・・・当該プロジェクトに関わるステークホルダーの関与や情報公開等の状況についても確認を行う」、「必要に応じ環境に専門性を有する者によるプロジェクト予定サイトへの実査等により環境社会配慮の確認を行うことがある」旨明記しております。
またスクリーニングフォームや環境チェックリストも活用し、当行としても出来る限り漏れが生じないよう、確認を行う考えです。

Q12:円借款プロジェクトにおいて、より効果的なモニタリングを実施するため、中間段階での評価等の際住民から直接意見をくみ上げるようなことは行われるのでしょうか?
A12:モニタリングを住民が参加して行うことは問題の早期発見、サステイナブルな事業効果の発現という観点から、望ましいことであると当行でも認識しています。新環境ガイドラインの第1部4.(4)においては、「プロジェクト実施主体者が環境社会配慮を確実に実施しているかを確認するために、本行は・・・・モニタリング結果の確認を行う」と記述しており、これにより可能な限りポジティブな影響が発現されるよう、当行として今後も留意していきます。またステークホルダー及び第三者等からの情報提供も歓迎しております。円借款における中間段階での評価のあり方また、そこへの住民参加については、その手法も含め今後の課題と認識しており、ご指摘も踏まえ更に検討する所存です。

Q13: 国際協力銀行は、新環境ガイドラインにおける情報公開に関する規定についてどのような考え方に基づいて作成したのですか?
A13:当行としては、情報公開の原則と商業上の秘密保持の原則との両立をはかっていきたいと考えております。プロジェクトが環境面に配慮されたうえで持続的に実施、運営されて行くこと、プロジェクト実施主体者や当行がアカウンタビリティを確保してゆくこと等において、情報公開が非常に重要であると認識しております。一方で、民間ビジネスにおいて、例えば工業プラント事業においては特殊な生産プロセスは重要な企業情報であるところ、商業上等の秘密にも配慮すべき点があり、これらを認識したうえで、積極的に情報公開を行っていきたいと考えております。

Q14:新環境ガイドラインにおける情報公開の規定は、OECDのコモンアプローチを踏まえたものになっているのですか?
A14: OECDコモンアプローチにおいても、カテゴリAのプロジェクトに関するEIA等の情報の事前公開に努めることや、「カテゴリA及びBのプロジェクトに関する情報を、情報公開に関する国内法の範囲内で少なくとも毎年公表する」ことが規定されております。当行としましては、環境の維持と両立した持続的な事業の達成と、我が国企業の対外経済活動の促進を政策目的の一つとする政策金融機関としてのアカウンタビリティの確保において、情報公開の重要性を認識しておりますところ、当該規定を踏まえた上で、商業上の秘密等への配慮等我が国企業の競争力には十分配慮しつつ、積極的に情報公開を行っていく所存です。

Q15:新環境ガイドラインに基づく情報公開と『独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律』(以下「情報公開法」という。)に基づく情報公開との関係はどうなっているのでしょうか?
A15:情報公開法に基づく情報公開は、当行の保有する文書について、皆様からの開示請求に基づき、法律に従って、開示すべきか否かを判断するものです。
これに対し、新環境ガイドラインに基づく情報公開は、当行が自主的・積極的に、スクリーニング情報や環境レビューに関する重要な情報等を提供していくことにより、当行自身の業務の透明性を高めるだけでなく、関係機関、ステークホルダー等第三者からの情報提供をも促すものであり、当行にとっては新たな試みです。これにより情報公開法の趣旨をより積極的に実現、充実させることができると考えております。

Q16:商業上の秘密を理由として情報公開が行われない部分があるのは、不適切ではないのですか?
A16:商業上等の秘密については、民間企業が当行の借入人になるという国際金融等業務の特性に鑑み、配慮することが不可欠です。情報公開にあたっては、情報公開の原則と商業上の秘密を両立させることが重要であると考えております。例えば工業プラント事業においては特殊な生産プロセスは重要な企業情報であるところ、商業上等の秘密にも配慮すべき点があり、これらを認識したうえで、積極的に情報公開を行っていきたいと考えております。

Q17:新環境ガイドラインについて、具体的にはいつどのような見直しが行われる予定なのですか?
A17:当行の新環境ガイドラインは、環境面に対する国際的な関心の高まり、国際金融等業務および海外経済協力業務におけるこれまでの経験も踏まえて策定されたものです。この新環境ガイドラインについても同様に見直しが行なわれるべきものと考えており、遅くとも5年以内に包括的見直しを行う予定です。
しかし国際的な議論の進展や、当行の経験等により必要と判断されれば、5年以内であっても見直しは行う考えです。例えばOECD輸出信用部会の環境コモンアプローチの見直しにより新環境ガイドラインを修正する必要が生じれば、必要な箇所につき見直しを行うと考えております。

Q18:新環境ガイドラインでは、「融資を行おうとするプロジェクトについて意思決定に先立ちスクリーニング及び環境レビューを行う」とありますが、一度スクリーニングや環境レビュー等を行ったプロジェクトについて再度追加的に融資を行う場合には、改めてスクリーニング及び環境レビュー等を行う必要があるのですか?
A18:過去に一度スクリーニングや環境レビュー等を行ったプロジェクトについて再度追加的に融資を行う場合には、そのプロジェクトの環境に与える影響が過去にスクリーニングや環境レビュー等を行った際のものと大きく異なっていない場合には、改めてスクリーニングや環境レビュー等をする必要はないと考えております。

Q19:新環境ガイドラインでは、「融資を行おうとするプロジェクトについて意思決定に先立ちスクリーニング及び環境レビューを行う」とありますが、年次輪切りのプロジェクトで最初の時点でプロジェクト全体についてスクリーニングや環境レビュー等を行ったプロジェクトについて、その後年次資金を融資する場合には、毎年スクリーニング及び環境レビュー等を行う必要があるのですか?
A19:年次輪切りのプロジェクトで最初の時点でプロジェクト全体についてスクリーニングや環境レビュー等を行ったプロジェクトについては、プロジェクトの環境に与える影響が最初にスクリーニングや環境レビュー等を行った際のものと大きく異なっていない場合には、改めてスクリーニングや環境レビュー等をする必要はないと考えております。