(回答)ハ.その他

Q72:国際協力銀行の新環境ガイドラインは、どのようなプロセスを通じて作成されたのですか?
A72:2000年10月から2001年9月にかけて16回にわたって行われた「国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会」、2001年11月から12月にかけて7回にわたって行われた「フォローアップ委員会」等からのご意見や2001年12月から2002年3月にかけて6回にわたって行われた「パブリック・コンサルテーション・フォーラム」の場で、学識経験者、NGO、産業界、国会議員、関連省庁の方々から多くの有益なご意見を頂きつつ、作成致しました。また、約2ヶ月間にわたるパブリックコメントの募集を通じてお寄せ頂いた、国民の皆様の貴重なご意見をもとに作成致しました。

Q73:国際協力銀行が求める環境にかかる情報は実際に入手できるのですか?
A73:借入人等はプロジェクトが環境に与える影響について、適切に情報収集・調査を行い、対応をとっているケースが殆どですので、当行が求める情報は入手できると考えております。また。これ迄、入手が困難であった場合でも、円借款においてはSAFを活用して環境の補足調査を行って参りました。新環境ガイドライン下においても、円借款対象プロジェクトの環境アセスメント報告書の作成につきSAFを活用して支援する等、当行として環境社会配慮確認に必要な情報が入手できるようにしていきたいと考えております。

Q74:非自発的住民移転に関する国際機関のガイドラインは国際協力銀行の環境配慮においてどのように活用されるのですか?
A74:当行の新環境ガイドラインに基づき環境社会配慮確認を行うに際し、非自発的住民移転についての国際的基準やグッドプラクティスとして、世界銀行が策定した運用政策(Operational Policy4.12)、 アジア開発銀行やDACの環境に関するガイドライン等を参照する考えです。環境社会配慮確認においてはこれらに示された考えを、プロジェクト内容、周囲の状況等に照らし、必要な部分を参照することとしております。
当行の新環境ガイドラインに明記していない事項でも、例えば法的に土地の権利を有しない移転対象住民への補償については世銀OP4.12の考え方を、また住民移転計画に含まれるべき内容については世銀OP4.12のAnnex Aを参照する考えです。

Q75:モニタリングにおいて、問題が指摘された場合に解決をはかるため円借款ではSAPI、SAPS等のスキームを拡充しないのですか?
A75:当行としましては、現在行っているSAPI、SAPS等のツールを活用した支援を強化し、プロジェクト実施主体者による問題解決努力を支援していきたいと考えています。

Q76:モニタリングを適切に実施することは重要であると思いますが、環境モニタリング体制を強化するために、国際協力銀行としてはどのような対応をとっているのですか?
A76:当行としましては、計画された対策が着実に実施されているか、その計画内容が十分なものであったか、想定されていなかった外部変化により環境への悪影響が生じないか等をフォローするためにもモニタリングは重要であると考えており、これまでも体制強化に努めてきております。
例えば円借款においては、借款資金により雇用されるコンサルタントの業務内容に、必要と判断される場合には、プロジェクト実施主体者による環境モニタリングの支援、体制強化等を含めています。またSAF等によりモニタリング体制の強化を支援しており、例えば環境モニタリングを実施する方法、体制、資金及び対策につき提言を行っている例もあります。
また、国際金融等業務においても、プロジェクトによっては、プロジェクト実施主体者が行う環境モニタリングを第三者である環境コンサルタントが評価するなどの対応をとってきております。
このような方針を明確にするため、新環境ガイドライン前書きでは、「本行は、開発途上国における環境社会配慮への取組支援についても積極的に取り組む方針である」旨記述しています。今後も、プロジェクト実施主体者が行う環境モニタリング体制の強化に係る費用を融資対象とする等の具体的な支援を検討してまいる所存です。

Q77:限られた人的資源をより環境影響の大きいプロジェクトに注力させるため、個々のプロジェクトの実態に合わせて、プロジェクトが適切に運営されていると判断される場合にも、モニタリングをいつまでも継続することは非効率的ではないのですか?
A77:モニタリングの実施期間については、プロジェクト毎の性格、想定される環境影響の重大さ、不確実性等を考慮し個別に設定することが適当と考えています。
なお、セクターやプロジェクトの特性・実態を踏まえ、プロジェクトが適切に運営されていることが確認された場合においては、当行によるモニタリングは一定期間後に簡素化または終了することとしており、効率的に業務を遂行できるよう配慮しております。

Q78: 国際協力銀行では、プロジェクトに関する環境情報を集めるため、どのような主体から情報収集を行うのですか?
A78:当行としては、借入人等からの情報提供により、プロジェクト実施主体者等が地域住民等のステークホルダーと協議を行った結果等を確認します。
また、新環境ガイドラインには、ステークホルダーからの情報提供を歓迎する旨、規定しております。当行が環境社会配慮確認を行うにあたって、借入人からの情報に加え、借入人以外からの情報も非常に重要であると認識しており、これまでも、現地調査などを通じて、借入人以外からも情報を入手することを心がけてまいりましたが、今後ともかかる情報収集を継続していく所存です。

Q79:プロジェクトの事前評価報告書を国際金融等業務のプロジェクトについては公開しないのですか?
A79:国際金融等業務においては、当行による環境レビュー結果を取り纏めたものを融資契約締結後公開することとしています。なお、「事業事前評価表」は海外経済協力業務についてのみ用いられているものです。

Q80:今後10年間に計画されている全てのプロジェクトのリストを公開してくれませんか?
A80:当行では、10年先のプロジェクトについては具体的融資の相談を受けておりません。
当行としては、スクリーニングが終了したプロジェクトについてできるだけ早いタイミングでスクリーニング情報を公開することとしています。

Q81:影響を受ける地域住民はウェブサイトにはアクセスできない場合が殆どであり、このような人々はどのようにプロジェクトの情報を入手できるのですか?
A81:当行が想定している情報公開の仕組みはウェブサイトを通じたものばかりではありません。新環境ガイドライン第2部1. では、現地において「ステークホルダーとの十分な協議」が行われていることを対象プロジェクトに求められる環境社会配慮の原則としており、住民に対して十分な情報公開がなされるよう求めています。

Q82:円借款におけるプロジェクト終了時の評価報告書を公開することを義務づけないのですか?
A82:円借款においてはプロジェクト終了後に行われる評価の報告書(事後評価報告書)は現在も全て公開しております。同報告書の中で、環境や社会へのインパクトについても記述しています。

Q83: 国際協力銀行の新環境ガイドラインを国内外の関係者に周知させるために、どのような活動を行っているのですか?
A83:当行ではこれまで、ホームページで新環境ガイドラインを和文、英文にて公表し、パブリックコメントにかけると共に、計6回のパブリックコンサルテーションフォーラムを開催して説明を行っております。また、円借款等の借入国である各国政府等へは現地事務所等を通じて説明を行っております。
また、新環境ガイドラインについては、当行のホームページに掲載し、広報誌でも取上げるなど積極的な広報に努めています。
ガイドラインの策定後も当行内の体制整備に一層努めると共に、借入国、借入人等に知って頂くよう努力して参る所存です。

Q84:環境アセスメント報告書等が適時に提出されないためにプロジェクトの進捗に影響をきたすことを避けるため、環境アセスメント報告書作成支援をSAFスキームまたは本体プロジェクトへの融資スコープに入れる等の形で実施しないのですか?
A84: SAFスキームの中のSAPROFや調査・設計等に対する円借款であるエンジニアリング・サービス借款の活用により、環境アセスメント報告書の作成を支援することができると考えています。また、エンジニアリング・サービス借款そのものは環境に影響を与えるものではないため、新環境ガイドラインにおいても従来通り環境アセスメント報告書の提出が義務ではないカテゴリBまたはCになると思われます。
上記のツール以外にも、当行として必要な支援を行うことが可能になるよう、新たなツールについても検討していきたいと考えております。

Q85:国際協力銀行の新環境ガイドラインにおいて、EIAの公開が要求されていますが、国によっては、EIAの公開を法律的に認めていない国もあるのではないですか?
A85:すべての国について調査したわけではありませんが、EIAを公開することを法的に定めていない国はあっても、EIAの公開を禁止している国は見うけられません。情報公開に後ろ向きの国もありうるので、そのような国に対しては、我が国政府を通じ、公開を進めている国の例や国際機関の対応振りを紹介しつつ、かかる途上国政府の理解を得られるように努めて行くものと考えております。

Q86:相手国の制度を無視して相手国に対して、環境アセスメント報告書の公開を要求することは内政干渉にもなりかねないのではないですか?
A86:環境アセスメント報告書の公開は環境と両立した持続的な事業を達成するという観点からも当行として重要であり、その方向で各国政府に説明、理解を求める所存です。
しかしながら、法律上は公開を禁止していないものの、現段階では運用上公開していない国もあります。これは単に環境影響評価制度の問題というよりは、「情報公開」に対する考え方の相違に原因があると考えられます。従って、当行の新環境ガイドラインでは環境アセスメント報告書の公開の必要性を重要視し、これを求める観点から「要求される」とし、その方向で各国政府と協議して参る所存です。
当行としては、相手国に環境アセスメント報告書の公開の重要さを理解して頂き、周知するための機会を引続き持つとともに、例えば円借款においては当行の調査費等も活用し、当該国における環境アセスメント報告書の作成段階でステークホルダーとのコンサルテーションの実施等に係る支援を引続き行っていく予定です。

Q87:先進的なガイドラインができたと言われていますが、そのような環境ガイドラインを作成し、民間企業に実施を促した場合、民間企業は対応できるのですか?
A87:民間企業においてもこれまで適切な環境配慮を行ってきた実績をもつ企業が多数あり、当行の新環境ガイドラインについても対応可能であると考えております。

Q88:新環境ガイドラインの英訳は作成するのですか?
A88:当行の借入人には、海外の企業・政府・政府機関等もありますので、便宜のために英訳も作成しております。但し、日本語と英語とで解釈に疑義が生じた場合は、日本語版に基づき解釈を行うことを考えております。

Q89:FAQとはどういうものですか?
A89:FAQは、当行の新環境ガイドラインに関して、利用者の皆様の多くの方が質問・疑問に思われる点を解消するために作成された、「よくある質問」です。ガイドライン本文のような文章では読みにくいといった方には、こちらを読んで頂く方がよいのではないかと考えております。

Q90:新ガイドラインが適用されるのは2003年10月からとのことですが、スクリーニングフォームの提出時期が異なると、同じプロジェクトに対して国際協力銀行と日本貿易保険とで適用されるガイドライン及びスクリーニングフォームは異なることになるのですか?
A90:形式上は、ご質問のようなこともありうるのですが、事業者にとっての利便性の観点からは、当行と日本貿易保険とで出来る限り同一のスクリーニングフォームを適用することが効率的であると考えております。スクリーニングフォームは当行と日本貿易保険とで統一しておりますので、スクリーニングフォームの提出に必要な情報については同時期に入手でき、提出のタイミングも大きくずれないようにできるのではないかと考えております。

Q91:国際協力銀行と日本貿易保険とでは、支援金額が異なることもありえますが、その場合には、同じプロジェクトでも別のカテゴリになることもありうるのですか?
A91:形式上はありえますが、当行と日本貿易保険とでできる限り協調しつつ、カテゴリを検討していくことが借入人の方の利便性の観点からも適当ではないかと考えております。