JICA開発大学院連携:第二回連絡協議会を開催

2019年10月30日

-本格始動1年の取り組みとさらなる拡充に向けて大学関係者とJICAが議論

国際協力機構(JICA)は、10月30日、「JICA開発大学院連携 第二回連絡協議会」を開催しました。会合には、全国から59大学110名にご参加いただきました。

1.北岡伸一JICA理事長メッセージ

北岡理事長より、以下の点に触れた上で、日本の開発経験について何をどう伝えるのか、プログラムのさらなる質の向上について、参加者による活発な討議を呼びかけました。

  • JICA開発大学院連携(JICA-DSP)は明治維新150年記念事業として2018年度に発足。日本の明治維新前後からのユニークな発展、戦後の復興は、海外の要人も高い関心を寄せている。
  • 賛同大学も増加し、81大学となった。今年度中に約700名の留学生を受け入れる予定であり、将来的に1,000人に近づけるよう努力していきたい。
  • 広く日本の経験を学ぶ機会を提供するため、放送大学と共同で番組(「日本の近代化を知る7章」)を制作、BS放送での放映を開始した。今後、JICA-DSP関係の留学生のオンライン受講を開始するとともに、海外での活用や番組数の拡充を目指したい。

2.セッション1:「日本の開発経験-何を、どう伝えるのか-」

続いて、JICA-DSP本格始動1年を振り返り、日本の開発経験とは何で、どう伝えることに意義があるのかについて議論を深めるため、東京大学公共政策大学院(高原明生院長)、早稲田大学アジア太平洋研究科(黒田一雄教授)から具体的取り組みをご紹介いただきました。あわせて、JICAからもJICA東北における取組みを報告しました。

(1)東京大学公共政策大学院 高原明生院長
JICA-DSPを契機に日本の開発経験を概括的に教えるオムニバス形式の授業科目を実施。オムニバス授業は多くのテーマについて専門性の高い講義となる反面、授業のテーマの統一性が薄れる面がある。また、明治から第二次大戦後までが話の中心となる日本の近代化経験とODA政策をうまく結び付けるためにどう授業をデザインするか、基礎知識のない留学生と基礎知識のある日本人が混在する場合の講義のレベル感の設定などを今後の課題として試行錯誤を重ねていく。
(2)早稲田大学アジア太平洋研究科 黒田一雄教授
日本の教育開発経験を伝える際に重要なのは、どう伝えるかの態度と考え方。「日本の経験・知見を活用しつつ、相手国の開発政策や教育制度を十分踏まえた上で、現場レベルでの対話と協働を一層深化させ、開発途上国の自立発展に向けた、主体的、協働的な取組を重視した協力を行う」との姿勢が重要。教育経験を単純に時系列で伝えるのではなく途上国の開発ニーズから出発することが重要。また、日本(人)の主観ではなく国際的・客観的な評価を紹介しながら、アジア各国の教育経験を相対化して伝えることでより関心を得られる。
(3)JICA東北 次長 三村悟
150年の福島の開発経験を追体験することで自国の開発について考える機会として、JICA東北において地域理解プログラムを実施。JICA関係の留学生個人にとって距離がある国家レベルのテーマではなく、時代の転換期に地域やコミュニティが各種課題に対してどのように対応したのか、また、今も積み重ねられている開発の取組みについて理解する機会となった他、当該地域が伝えたい経験と研修員が学びたい知見をJICAとして仲介することが出来た。

これらの発表に対し、ご出席いただいたJICA開発大学院連携アドバイザーの長谷川眞理子総合研究大学院大学学長、渡辺博史国際通貨研究所理事長も交えて、出席者の間で、オムニバス授業を実施する際や、知識意欲の高い留学生との議論をする際の工夫や深め方、講師陣による学生評価の方法について活発な意見が交換され、今後も、どの様に開発経験を伝えていくとよいのか、様々な工夫を含めて大学とJICAで検討することが確認されました。

3.セッション2:「大学・JICA間の連携体制をどう構築するか」

大学とJICAの関係については、専門家として多くの大学の先生が途上国に派遣され現地で指導にあたるなど、JICA-DSPの開始以前から留学生受入に限定しない様々な連携実績があります。これを踏まえ、JICAと土木学会との連携(道路アセットマネジメント技術の展開)、大学間ネットワークであるJISNAS(農学知的支援ネットワーク)との連携の事例を発表していただき、大学や学会とJICA間の連携体制をどう構築するかについて議論を行いました。

【発表者】

1)(公社)土木学会 技術推進機構 信田佳延上席研究員、JICA社会基盤・平和構築部 参事役 金縄知樹

2)九州大学 緒方一夫副学長、JICA農村開発部 部長 牧野耕司

発表においては、当該課題の解決において、国内の社会課題との関係や、JICAの他の事業との連携や共同研究への展開など、複数大学やJICAとの連携の全体像が提示された中で、留学生事業の戦略的活用事例が共有されました。

これに対し、これらの取り組みが将来国内で活躍する日本人の人材育成にも繋がることへのJICA-DSPへの期待、関係者間でのコミュニケーションの一層の改善への要望などが示されました。その上で、共通の目的の中で連携して取り組む、双方向に有益な形を目指していく方向性が示されました。

4.総括

最後に、これまでの大学とJICAの長い連携の実績も活かしつつ、他のJICA事業とも有機的な連携を図り、そして、日本の開発経験を大学とJICAの双方で活用・共有しながらJICA-DSPを推進し拡充していくことをご参加いただいた大学と確認しました。

関連リンク

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東京大学公共政策大学院 高原明生院長

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早稲田大学アジア太平洋研究科 黒田一雄教授

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(公社)土木学会 技術推進機構 信田佳延上席研究員

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九州大学 緒方一夫副学長

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参加者と議論する北岡理事長

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多くの関係者に市ヶ谷の国際会議場、TV会議接続した全国のJICAセンターでご参加いただいた