2003年2月 バングラデシュ訪問(2/3ページ)

バングラデシュは、妊産婦の死亡率がとても高く、日本の50倍以上と言われています。JICAではこの死亡率を低下しようと、出産に関する正しい知識を広め、産婦人科に携わる人たちを育成するために、このプロジェクトを始めました。現在、2000年9月に日本政府の協力で完成した首都ダッカにある「母子保健研修所」を拠点に活動しています。

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待合室で診断を待つお母さんと子供達

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産後間もないお母さんと赤ちゃん

この研修所は、研修の場だけでなく産科の病院としての役割もあり、これまで日本から派遣された産婦人科医や助産師などの専門家が、安全なお産や新生児のケアのノウハウを病院スタッフに指導したり、地域で活動する保健婦に対して研修を行っています。プロジェクトが始まる前は、緊急出産の体制が整っておらず、日中の正常分娩しかできませんでしたが、現在では麻酔科医も増え、夜間の帝王切開による出産や緊急時の対応もできるようになりました。また、異常出産による新生児のケアもなされるようになり、「母子に優しい病院」として現在も多くの住民に活用されています。

研修所内をまわった伊達さんは「この国では10万件の出産のうち600人の妊産婦と67人の赤ちゃんが命を落とすと聞きました。JICAの協力で多くの命が助かり、育っていくのは大きな意味があると目で見て感じました」と話していました。

ちょっとしたエピソード1 〜出産への立会い〜

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生まれたての赤ちゃんと一緒に

研修所を視察しているとき、偶然にも出産を控えた女性がいました。母親の了解のもと、伊達さんも出産に立ち会うことに。「初めての経験。まさかここで立ち会うことになるとは」と話す伊達さん。女性は無事に3000グラムの元気な男の子を出産することができました。「結婚はしていますが、出産は未経験なので未知の世界でした。でも、女性の立場として子どもがおかれている状況には特別の思いがあります」と話していました。

「リプロダクティブヘルス地域展開プロジェクト」

首都ダッカから車で約3時間、ナルシンディ県パンチドナ地区にある診療所のプロジェクトを視察しました。バングラデシュでは、女性の地位が低く、早婚や教育不足が原因で、「早すぎる出産」や「繰り返される出産」が多いため、妊産婦死亡率が依然として高い状態にあります。日本のNGOである「家族計画国際協力財団(ジョイセフ)」は、現地のNGOの「バングラデシュ家族計画協会 (FPAB )」と共同で、長年女性を取り巻く環境を改善し、自立を支援するための活動を行ってきました。

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裁縫の仕方を学ぶ女性達

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文字の書き方を学ぶ女性達

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性教育を学ぶ女の子達

JICAはこのジョイセフの活動を支援。現在では、パンチドナ地区のほかにドゥリア地区の5万人を対象に、女性たちの生活や保健相談にのる保健ボランティアの育成や、女性グループの組織化、そして識字教育や職業訓練など総合的な支援を行っています。また、JICAから派遣されている青年海外協力隊も活動中。村落での母子保健、健康教育や栄養改善を広める活動をする地域健康普及員のトレーニングプログラムを見直したり、知識や技術の向上のために協力しています。また、実際に村落を巡回して直接農村女性に保健衛生の大切さを伝えることによって、母子保健の知識の普及をするために頑張っています。

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村にいる子供達

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母子健康に携る隊員と一緒に

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プロジェクト事務所の前で

伊達さんは、「診療所の建物は決してきれいとは言えないけれど、このような地方の診療所の存在意義は今後大きくなってくるでしょう。JICAだけではできないところは、NGOが協力し、またNGOができないところはJICAが協力をするといった援助が形になっていくことはとてもよいことだと思います」と草の根レベルでの協力の重要性について話していました。

ちょっとしたエピソード2 〜蚊撃退ラケット〜

【写真】ラケット

バングラデシュは川が多いためか、とても蚊が多い国です。蚊が群になって襲ってくることもあります。そのため現地で使われているのが写真のように使われている「蚊撃退ラケット」。ガットの部分に電気が流れ、ブンと振り、襲ってくる蚊を撃退します。同じく蚊に悩まされていた伊達さんもこの「ラケット」を手に取りました。当初はさすが蚊も見る目があるのか、しばし姿を見せなくなりましたが、油断したその一瞬、バチッと見事なスマッシュに火花!

周りにいた人々からは拍手喝采がわき起こりました。